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太陽の涙  作者:
3/3

夢と現実

特にどうというものでもないので…

見てくれた方に感謝したいですね

―4月25日、この日いつもの夢を俺は見ていた。


 昔住んでいた俺たちの家、夜明け前の暗黒のその家からこの夢は始まる。目の前に一つの扉がある。俺はその扉を開ける。その扉の向こうは水の滴る音と暗黒が支配する空間。そこに一筋の光が射す。少しづつ部屋の全容が露となっていく。部屋は真っ白の壁に赤いペイントで着色されていた。ペイントは一箇所から飛び散ったように着色されている。


―あぁ、また…あの悪夢か

そう心の中で思った。

 着色の中心には真っ赤な塊があった。真っ赤なその塊はどこか懐かしい感じがした。俺の目線が塊の少し横へと移る。そこには一つの人影があった。そして自分の意思とは関係なく俺は喋る。


「お父さん、何してるの?」

 

 不意に話しかけられたからなのか、父はびくっっとして俺のほうを向く。父は俺を見るなりニヤっと笑って近づいてきた。その手には脇差のような刀が握られていた。ぽた、ぽたと赤い雫を落としながら一歩一歩…俺に近づいてくる。それなのに、俺は逃げようとも立ち向かおうともしなかった。いや、出来なかった。なぜかわからない、ずっと…じっと父が来るのを待った。


―狗一は…どんな声で鳴いてくれるのかな?


 ほんの数cmまで近寄ってきた父が耳元でそう呟いた。その刹那、左腕に違和感を感じた。左腕には脇差が刺さっていた。先端から雫が滴り落ちる。俺は痛さのあまり酷い声でわめいた。それを聞いた父がまたニヤっと笑う。そして脇差を左腕から抜く。父はまた刺そうと脇差を構える。が、それを止めた。


「おにぃちゃん…何してるのぉ?」


 扉の近くには幼い茜が立っていた。俺は茜の近くへ行こうとした。が太股を父に刺された。そして父は茜も元に行った。俺は動く右手で茜を掴もうとした。掴めないと分かっていても手を伸ばした。そして意識が薄れていく…夢から覚める。


「何してる。」


「寝顔見てただけだよぉ?」


 目を覚ますと茜の顔が真ん前にあった。茜は学校の制服に着替えていて、既にカバンすら持っている。


「今日…学校休むよね?」


「あぁ、先生に言っといて。」


「わかったぁ」


 そういって茜は部屋から出て行った。俺は体を起こして時計を見た。


「いつもより30分早い登校かよ。」


 俺は一息ついて外に出る準備をした。


 そのころ、茜は普段と同じ道を通っていた。はずだったのだが…。


「あれぇ?ここどこだろう?」


 学校とは真逆の場所に来ていた。極度の方向音痴なの…ではない。ただ、猫や犬などの動物に目がないだけだ。とは言っても一方的なもので向こうから好かれることはない。茜がぼーっと突っ立っていると一人の少年が近寄ってきた。東陽高校指定の制服を着てはいるが、その風貌は高校生というより小学生だ。


「また迷子かよ、いい加減学習しろよ。」


「ふぇ?あ〜翔君だぁ。」


 谷嶋 翔やじましょう。茜とは小学校からの幼馴染で、勉学では学年トップの実力、運動では剣道で全国2位という、いわゆる文武両道をこなしているスーパー高校生だ。

 そんな少年にも苦手なものはあったりするが、これはまた別のお話。


「まぁ、いいか。一緒に行こうぜ。」


「うん!」


 翔は少しため息混じりに茜の前を歩きだした。その後ろをとたとたとついて回るように茜は歩いた。このとき二人は知らなかった。未来を、その瞳に映る真実を。

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