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7話 ドミナント・バンディット

「「覚えてろよー」」


 バタバタと山賊亭から出ていく男たち。

 捨て台詞はなんとも三下のようなセリフだ。

 まあ、あいつらにはお似合いだろう。


 ドミナント・バンディットと呼ばれたあいつらが、なぜ店を出て行ったかと言うと、男の内の一人を殴り飛ばした後、仲間がワラワラと押し寄せてきた。

 まあ、何人でかかってこようと雑魚は雑魚だったから、全員まとめて相手してやったら逃げて行ったというわけだ。

 口ほどにもないやつらだったな。


 ただ、あいつらと戦ったせいで店の中は見るも無残な状況だ。

 テーブルや椅子は壊れてボロボロだし、扉や窓なんかも壊れてしまっている。

 これは、弁償しないといけないな……。 


 店内の惨状を見渡していると、床に座り込んだままの店員さんと目が合った。

 どうやら泣き止んでいるみたいだ。

 見たところ外傷もないみたいだし、無事でよかった。


「立てますか?」


 店員さんに近づいて手を差し伸べる。

 俺の手をやや遠慮がちに握り返してくれたのでグッと力を込めて立ち上がらせてあげた。


「あの、ありがとうございました!」


 深々と頭を下げてお礼を言われた。

 まさかここまで感謝されるなんて思わなかったな。


「頭を上げてください、大したことしてないんで!」

「そんなことありません! あなたは命の恩人です!」


 俺の手を両手で包み込むように握ると、キラキラした目で見つめられる。

 周りにいた客たちも拍手したり口笛を吹いたり、なんだか称賛されているみたいだ。

 こんなに目立つつもりじゃなかったんだけど……。


「まいったな……」


 つい心の声が漏れてしまった。


俺が内心、頭を抱えていると、店の奥から一人の女性が出てきた。

 年のころで言うと、三十代といったところだろうか。

 なんというか若い見た目だが貫禄のある方だ。


「うちの娘を助けてくれてありがとう。感謝するよ」

「お母さん!」

「こら、リリア! 店では店長と呼びなさい!」

「ごめんなさい、店長……」


 奥から出てきたのは店長だったらしい。

 どうりで貫禄があるわけだ。

 そして、店員さんはリリアという名前で、店長の娘だということは今の会話から分かった。

 店長はリリアぐらいの年頃の娘がいるとは思えないな。

 かなり若く見えているということだろう。

 そんな店長は俺の目の前まで歩いてくると、これまたペコリと頭を下げてきた。


「本当にありがとう。あんたがいなければ、娘はあのならず者どもにつれていかれるところだった」

「いや、だから、本当に大したことしてないんで、頭上げてください」


 俺の言葉を聞いた後、一拍置いてから店長が頭を上げた。

 今は、店長というよりも一人の母親といった感じの顔つきをしている。

 威厳というよりも優しさが溢れたような雰囲気だ。


「あいつらは何者なんですか?」

「知らないのかい!?」

「ええ、まあ」

「あいつらはここ数年、この街の近辺で幅を利かせている連中さ。ドミナント・バンディットとかいう名前を名乗っているよ」

「ギルドってことですか?」

「ああ、残念ながらね。なんであんな連中が正式にギルドと認められたのかねぇ」


 この世界にはギルド制度というものがある。

 俺が元々所属していた、「セイクリッド・クルセイダー」もギルドの一つだが、ギルドというのは自分たちが勝手に名乗っていいものではない。

 ギルドと正式に名乗るにはギルド評議会で認定される必要があるらしい。


 ギルド評議会というのは、各国の権力者や名門ギルドのギルド長などで構成されている。

 セイクリッド・クルセイダーのギルド長も評議会の一員だった。

 それほど由緒あるギルドだったというわけだ。


 各国の権力者たちに認定されるということは、世界の中で確固たるポジションを手に入れるということを意味する。

 そして、国や地域からの依頼を完遂する義務を背負うということでもあるのだ。


「ちなみにあいつらのランクって分かります?」

「Bランクだよ。あんな連中でも実力は確かなのさ。だけど、あいつらを一人で倒すなんてあんた強いねぇ!」

「そんなことないですよ。買い被りすぎですって!」


 ドミナント・バンディットはBランクギルドか……。

 あんな奴らでもBランクなんてもらえるんだな。


 ギルド評議会が定めるギルド協定にはランク制度というものも存在する。

 これはギルドが持つ力を客観的に評価し、実力に見合ったランクを与えるというものだ。

 SSS~Eランクまでの区分が存在する。

 ただ、世界にいくつも認定されているギルドの中でSランク以上などかなり少数だ。

 なので、Bランクというとそこそこの実力があるということになる。


「あの連中がBランクギルドか……。信じたくねぇな」


 評議会から認定されているなら、ドミナント・バンディットもれっきとしたギルドだ。

 でも、あんな連中と俺の古巣が同じだと思われるのは悔しい。

 本来ギルドとは、周りの人々と親密に関わっていくものだ。

 お互いに助け合っていくもののはずだ。


 それがあいつらは、自分たちの地位を良いことにやりたい放題している。

 なぜギルド評議会が黙認しているのかは分からないが、胸糞悪いことこの上ない。


 俺もギルドに所属していたものとして、やらなきゃいけないことは一つだ。


「店長さん。あいつらの本拠地ってどこですか?」

「何するつもりだい?」

「ぶっ潰してきます」


 俺の一言に店長はもちろん店内が静かになる。

 キーンと耳鳴りがしそうなほど静まり返ってしまった。

 いったいなぜなんだ?

 当然のことを言ったまでなのに。


 しばらくの沈黙の後、


「「えー!?」」


 息をそろえたように、店内にいる全員の驚愕の声が響き渡った。

お読みいただきありがとうございました!


説明回になってしまいました。

戦いは次話以降です!

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