10話 突入
街から離れた小高い丘の上に大きな建造物がある。
周辺は見通しが良く、この建造物しか建っていない。
建物の大きさは街にあった建造物を遥かに凌ぐ大きさだ。
建物の一番上にバサバサと風にはためく旗がある。
「これがドミナント・バンディットの本拠地か」
「はい」
旗に描かれている紋章はドミナント・バンディットというギルドを示すものだ。
山賊亭で戦った奴らや、道中で戦った五人組の体にも同じ紋章が入れられていた。
「髑髏に斧をモチーフにしたものか……。いい趣味してるな」
「あれは私たちにとって忌まわしい印。アビスくん、どうかお願いします」
「ああ、任せとけ!」
リリアの願い。
それはこの地域に住んでいる人たち全ての願いを代弁したものだろう。
道中でドミナント・バンディットの悪行の数々は聞かされた。
山賊亭での出来事などまだまだ軽い方とのことだ。
許してはおけない。
もちろん、こいつらにも言い分はあるのかもしれない。
俺は一方向の情報しか聞いていないから、客観的に見た結論ではなく、ただの感情で動いてる。
でも、俺は正義の味方になりたいわけじゃないしな。
「じゃあ、行くか」
俺は扉に手をかけた。
ずっしりとした金属製の扉だ。
普段の出入りには邪魔になりそうだけど、こういうやつらは実用性より見た目重視だからな。
まあ、これぐらいの扉ならぶち破れるだろ。
「リル、リリア」
「なんですか、アビスさん?」
「なんでしょう?」
「ここから先は命にかかわるかもしれない。今なら引き返せるぜ?」
最後に二人に確認を取る。
願わくば帰りますと言って欲しいところだ。
この先、相手の戦力も分からないし、トラップなんかもあるかもしれない。
魔物がいるなんて噂もある。
正直言って護り切れる自信は無い。
そんな俺の願いは叶うことがなさそうだ。
リルとリリアの二人はお互い顔を見合っている。
その表情はどちらも決心したように引き締まったもの。
逃げる気なんてなさそうだな。
二人の命を守る方法はこの先に連れて行かないことだろう。
来るなと命令することだってできるだろうけど、今の二人は言ったところで着いてきそうだ。
それなら俺にできることは無理に追い返すことじゃない。
全身全霊で敵を倒し、護ってやることだ。
「構えろよ、二人とも! オラァァア!」
金属の扉を殴りつける。
ベコンと凹んだ扉は壊れ、建物内に吹き飛んでいく。
上手くぶっ壊せたみたいだ。
戦いのゴング代わりにはちょうどいいだろう。
「来やがったぞ!!」
ざわつく声が聞こえてくる。
扉の無くなった入り口をくぐると中には多くの人が集まっていた。
武器を構えた臨戦態勢で。
俺たちが来ることは知ってたみたいだ。
数は三十~四十人くらい。
上手く立ち回らないと厳しいかもしれないな。
「おらぁ!」
「死ねぇ!」
お出迎えとばかりに二人の男が飛び掛かってきた。
手にはナイフを持っている。
殺す気満々だな。
「殺気が漏れ過ぎなんだよ、三流が!」
一人の腕を捻り上げ、もう一人には蹴りをお見舞いする。
この二人が飛び掛かってくることなんて分かり切ってた。
あれだけ殺気を出してたらどう行動してくるかなんてお見通しだ。
行動が分かる相手程楽なものはいない。
「「ぎゃぁあ!」」
これでまずは二人。
あと何人か分からないけど、幸先は良い。
「二人とも、これ持っとけ」
地面に転がる雑魚からナイフを回収してリルとリリアに渡す。
「私に使えるでしょうか……」
「あくまで護身用だ、リリア。あいつらに近づかれたら迷わず使えよ」
リリアは不安そうな表情をしながらも渡したナイフを受け取り、両手でギュッと握りしめている。
「アビスさん、これどうやって使うんですか?」
リルは手に持ったナイフを興味深そうに眺めている。
流石にナイフくらいは使ったことあると思ったんだけど、まさか使ったことがないのか?
獣人っていうのは料理とかで刃物を使わないのかな。
それとも、ナイフでの戦闘術を聞いてるのか?
もしそうなら、残念ながら俺はあんまり武器を使わないから教えてやれないな。
「こっちの鋭利な方で相手を切る、刺す、それだけできれば満点だ」
「頑張ります! こうやって振ればいいんですよね!」
ブンブンとナイフを振り回すリル。
こういうところでの無邪気は可愛くない。
間違って切られないか不安になるばかりだ。
「俺のことは切るなよ……」
「任せてください!」
さて、戦闘準備もここまでにして残りの奴らを倒すとするか!




