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小さな魔女達の学園生活編


 私立ソルシエル学園の敷地は日本の平均的な学校のそれと大差なく、見たところ校舎もひとつしか立っていない。 だが、その校舎の中に小中高の生徒の教室など学業にひつそうなすべての設備が入っている。

 いやいや、物理的に無理だろ?と思われる読み手の方もいるであろう。 そう確かに物理法則に従えばありえない、しかしながら学園長であるトキハは魔女であり、このありえない現象というのも彼女の魔法よるものなのである。

 例えを言うなら某弾幕シューティングのセカイにいる紅魔の吸血鬼さんの館がザ・ワールドなメイドさんの能力で見た目より広いのと同じである。

 そんな学園の中等部の教室、授業と授業の間の休み時間に次に使う教科書を用意していた手を止め唐突に溜息を吐いたのは、長い銀髪の両サイドを編んだ少女である

 「……そんな適当設定でいいのかなぁ……」

 リムという名のその少女の表情は、実際すっかり呆れかえっていた。


 

 ソルシエル学園の女子の制服はセーラー服タイプであり、初等部は襟やスカートの色が緑で中等部が紺色、そして高等部が青と色分けされている。

 つまり現在この教室で授業を受けている三十人程の生徒は初等部の生徒であると分かる、そして彼らの前にある教壇に立っている黒髪に猫耳を生やした人物はクラス担任でもあるアイン先生だ。

 「…………つまり、セカイは決してひとつではなく、我々が認識出来ないだけで無数に存在します」

 そう説明するアインに対し右手を挙げながら「あーパラソル・ワールドってやつね!」と自信たっぷりに言ったのはエターナであり、「……パラレル・ワールドよ」とジト目でツッコミを入れたのは後ろの席のアリスだ。

 「アリスさんが正解ですね。 エターナさんのは……ちょっと違いますね……」

 まるでルビーのような紅い瞳の先生が苦笑し、対照的な蒼い瞳の小さな魔女の女の子は「ありり……」と照れた顔で銀髪の髪の毛を掻く仕草をした。

 「まあ、とにかくそのパラレル・ワールドにはいろんな可能性が存在します。 例えば……そうですね、私がこうして教師としてではなく、幼い魔女の少女の使い魔として生きているセカイとかね?」

 冗談めかした先生の言葉であったが、「……どうイウ例えデスカ……」と誰にも聞こえないくらい小さく呟いた生徒がいた。 多少紫っぽく見える黒髪を中華風なおだんご頭にしたその少女はメアという妖怪の女の子であった。

 「それだけではなく、私達は存在せず代わりに現実にはいない、アニメのキャラクターなどが生きているセカイだってあるかも知れませんよ?」

 「へぇ~~」

 いつも視てみるアニメの魔法少女を思い浮かべるエターナ、彼女らが自分達と同じように生きて存在しているなら、是非とも会っていろんなお話をしてみたいなと真面目に考える。

 その思考を読みとったわけでもないだろうが、続いて「ですが、現在の科学でも魔法でも、そんなセカイに行く事はおろか存在を証明する術すらないんですね」とアインが言ったのに、残念そうな顔に変わる。

 「しかし、あくまで”現在”ではですよ。 あなた達が大人になる頃にはひょっとしたら存在しているかも知れませんし、あるいはあなた達自身がそんな技術や魔法を創っちゃうかも知れませんよ?」

 冗談ではなくアインは本気でそう思ってる、確かに夢物語ではあるだろう。 しかし、現在では常識な飛行機も、ずっと昔のヒトにれば空を飛ぶなど非常識な夢物語だったはずだ。

 ヒトには夢物語を現実に変えていける力があり、そんな大人へと子供を導く手伝いをするのが教師だと思っている。

 先生のその言葉に「そーだよね、うし!」と拳を握りしめる友達に様子にアリスは、分かりやすい子ねぇ……と呆れたような感心したような気持になる。

 アリスの後ろ、列の一番後ろの席のメアは、すぐに先生へと視線を戻して首を傾げてみた。

 「……ト、いうカ、これガ小学生の授業なんでショウカ……?」

 

 放課後、部活動をする者いれば真っ直ぐに帰宅する者もいる、

 朱鷺坂由仁は帰宅する側の生徒だが部活に所属していないわけではない、彼女の所属しているのは天文部であり、今日は特に集まってするべき事もなかったからである。

 腰より少し上くらいまで伸ばした美しい黒髪を首の後ろあたりでリボンで結んでいる由仁は、モデル並みとまではいないもののスタイルも良く実際美少女の部類だ。

 「あれ? リムさん?」

 校門を出ようとしてところで見知った後姿を見つけて声を掛けると、足を止めたその高等部の少女は「由仁ちゃん?」と振り返った。

 「今日はエターナさんは一緒じゃないんですか?」

 「うん、帰りのホームルームが長引いてるみたい」

 特に約束とかをしているわけでもなくても学校への行きも帰りも自然と一緒になる事も多いが、今日はそうでもなかったのでちょっと待ってみようかなと思ったのである。

 リムも由仁に負けず劣らずのスタイル良しの美少女で、実のところ学園でトップ・クラスの美少女二人が揃っているのである。

 「……由仁さんにリムさん?」

 そんな二人に声を掛けた男子がいた、アスト・レイである。 由仁と同じ中等部の、どこか気弱そうなこの少年とって二人はご近所さんとその従妹でありクラスメイトなので見かけたからふと声を掛けたというだけだ。

 二人を美少女とは認識していても、それ以上を意識しないのは単に見慣れているというのもあるが、それとは別の理由もあるのがアストである。

 「あ! アスト君も今帰り?」

 「はい、そうです」

 リムに頷いてから「あれ? エターナさんはいないんですか?」と周りを見渡すアスト。

 「みたいね?」

 由仁の口調はどこか揶揄うようなものだった、アストは残念そうに「そっかぁ……」とこげ茶色の髪を掻いた。

 「仕方ないね、せっかくだし今日はこの三人で帰ろうか?」

 アストと由仁を交互に見てからリムが提案した。


 「何だ、今終わったのかよ」

 リムのクラス担任のフェリオンが階段の踊り場でアインに出くわすなり言った。

 二メートル近い長身で体格も良いこの男性教師とアインは何故か気が合い、仕事の同僚としてだけではなく個人的にも仲の良い友人になっていた。

 「ええ、ホームルームが長引きましてね」

 「ふ~ん……お、そうだ今夜久々に飲みにいかんか?」

 ふと思い付いて言ってみるフェリオン。 猫耳のある黒い頭髪のアインとは対照的に少しだけ灰色にも見える白い髪のフェリオンは、特別酒好きではないが誰かと話をしながら酒を飲み合うのは好きだった。 

 一方のアインはほとんど自分から酒を飲むことはしないが、宴会とかで飲まないというわけでもない。

 アインは少し考え、「まあ、いいですよ」と答えた。


 「早く帰って一杯やりたいデス」

 会社帰りのサラリマンめいたこのセリフは、しかし学校の廊下を歩くランドセルを背負った女の子の口から出た言葉だ。 前を歩く少女に「……メアもお酒好きねぇ……」とエターナが言えば、隣のアリスも「まったくよねぇ……」と呆れ顔をしてみせる。

 誤解を招きそうな会話なので説明せねばなるまい。

 まず、このセカイでもお酒は二十歳からなのは変わらない。 だがメアは決してルール違反はしていない、何故なら彼女は三百年は生きている付喪神の妖怪であるからだ。

 法律では二十歳以下を禁止しているのであって”小学生がダメ”ではない、また校則は学園の敷地内での飲酒を禁止しているが、敷地外までは対象ではない。

 なのでメアはいいが二十歳以下の小学生は決して彼女の真似をしてはいけない。

 ちなみにエターナは二十歳でアリスは十一歳、つまりこの三人で見た目通りの年齢なのはアリス1人だったりする。

 「エターナも、一回飲んでみればわかりマスヨ?」

 「ん~~? 少しだけあるけどさ、全然美味しくなかったよ~?」

 もう一度言うがエターナも二十歳なのでセーフである。

 「ふ~ン……まあ、無理強いはシマせんケド」

 心の中で、見た目だけじゃなくて味覚もお子様なんですねと付け加えるメアであった。

 その同時刻の校門前にメイドさんが立っているのを見かけた教頭のユリナは、「あなたも大変ね?」と声を掛けた。

 「いえいえ、これもお仕事ですから」

 穏やかな笑顔で答えるメイドさん――イクスをしばらく見つめていたが、やがて小さく息を吐く。

 「まあ、そういう事にしておきましょう……」

 アリスのクラスのホームルームはいつより遅くなっていたようだったにも関わらず、まるでそれを知っていたかのようなタイミングで校門に姿を現す……偶然という可能性もあるが、ユリナにはそうだとは思えなかった。



 下校時刻からかなり経ち、辺りもすっかり暗くなればソルシエル学園の敷地からヒトの気配は消えうせている。

 だが、今日はグラウンドに人影があった。 

 暗くてはっきりとは視えないが身長からすると十代前半から半ば程であろうか、学園外にある街灯や月明りで何とかツインテールらしい髪が青いであろう事は確認できる。

 「くっくっくっく……呑気な学園生活が展開出来るのもここまでですわ」

 無人の校舎を見上げながら哂う青いツインテールの少女、果たして彼女は何者で何が目的なのか?

 「ふふふふふ、それはいずれ分かりますわ?」

 それはエタらずに次回を書けたら分かるであろう……。

 不敵に笑っていた青いツインテ少女は、次の瞬間「だぁ~~~!?」と盛大にズッコケた……。

 「いきなりエタるとかやる気あんのか書き手おのれわぁぁあああああああああああっ!!!!」

 ……かと思いきや、今度は実際ご近所迷惑なボリュームで天に向かって怒鳴る少女である。

 「……ったく、そりゃたいして読み手もいないしテンション上がらないのも分かるが……書き始めたなら責任持てや! そりゃリアルの事情とか、どうしても書けなくなるのはあるぞ? だがやるからにはちゃんとやれ、これはプロとか素人とか関係ないからな!?」

 彼女以外人っ子一人いない夜のグラウンドで、怒りと呆れの混じった声で、そんな至極まっとうな理屈を叫ぶ少女であった……。


  



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