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幼者(ゆうしゃ)太田聖はハナクソである。

作者: 小西行長

 俺は太田聖おおたしょう22歳。気軽にショウって呼んでくれ。


 三年制の専門学校をカンニングなどを駆使して卒業できたのはいいけど、卒業時に全国平均ほぼ100%の受験者が合格する国家試験に落ち、2年目はカンニングがばれ試験官を殴って気持ちよく落ちて、そのままプロの求職者をしている。


 俺は七の段の掛け算もできないし、漢字も碌に書けないし読めない。だからかもしれないが学校の先生からは来年の国家試験を受けても問題を碌に読み解けないから受かるのは難しいと言いやがった。ちと俺の能力を甘く見過ぎてねぇか? アルファベットはAからHまでは完ぺきなんだからよ。

 そんなうるせぇ奴は髪の毛掴んで引き摺りまわしたい気分になるぜ。


 今日も一張羅のスーツを着ての面接だったが、キレイ好きの俺は汚れたスーツを公園の池の水でいつも丸洗いしてる。

 当然いつもしわだらけで独特のアロマを醸し出しているが、そのしわとアロマが人とは違うこだわりになる。もちろん、その縮んでしわだらけで特徴のあるアロマのスーツで面接を受けると、なぜか面接官に白い目で見られちまう。

 俺のこだわったオシャレっつーものを理解できねぇのかよ。


 面接中なのに相手が話さないから昔からのクセでつい鼻をほじって、その流れでハナクソを食べると、試験官は呆れた様な表情をしていた。

 ハナクソって体液に近い塩分濃度が脳を刺激するから美食家しか食べねぇんだよ。知らねぇのかよ。


 結局、殆んど面接らしい質問もないまま、履歴書を返され面接が終わった。

 腹が立ったから、その会社のドアにハナクソを擦り付けてきたけど、美味しいハナクソが少しもったいなかったな。


 それにしても、俺に任せれば何でもできるのに、どうしてどこの会社も俺を雇わないんだ? 世の中には無能しかいないんじゃねぇの? 裏技能に、売り上げをくすねて世の中の金回りを良くすることができるのはここだけの秘密だぜ。

 

 あぁ面接が終わると今日の活動は終わるから、何しようかな?

 そういえば、昨日面接した会社はどうなんだろう? 面接時に給与の前借を言ってみると、大笑いされたからウケはいいと思うんだがな。


 なんかイラつくから、彼女んちに行ってみっかな。でも、時々へんなおっさんが手帳を見宣がら「禁止命令が出ているから近づかないように」ってほざくから正直うざいんだよね。

へんなおっさんに合うのも面倒だから、彼女の部屋の窓が見えるビルの屋上にでも忍び込むか。


 俺は彼女の着替え姿を想像しながら屋上へ続く階段を上っていると、いつもはない黒い球体が見の前に突然現れたことに気付いた。まじびびる。


 キュイ~~ン


 黒い球体から発せられる甲高い音が階段中に響き始める。


「あん?」


 何だこのうるせぇ音はなんて考えていると俺のからだは黒い球体に一気に引き込まれた。

 

 突然、周囲は真っ暗闇となり、俺は墜落しているような感覚にとらわれる。

 くっ、突然の出来事で一週間ぶりに失禁しちゃったよ。後で公園のトイレでパンツ洗わねぇとな。そのままにしていると白くシミになって臭うから、彼女の部屋に入ったことがすぐばれるんだよね。


 ただ、階段を上がるだけで、こんなに墜落している感覚にとらわれるのは変だよな?

「やべ〜。タダで幻覚を感じるなんてなんか儲けた気分だぜ」


 俺は墜落しながら一人呟く。

 

 そんな独り言を呟いていると、いつの間にか足元に光を感じることに気がついた。そして、俺は一瞬の浮遊感を感じて床に放り投げられた。


「痛ぇな、ここは何処だ?」


 痛む尻を押さえながら周りを見渡すと、全身鎧プレートアーマーを着込んだ奴が5人と映画で聖職者が着るような黒いローブ、といっても金糸などで細かな刺繍が入っていかにも高価そうなローブを着ているじいさんがいた。


 はん、今日はハロウィンじゃねぇのはさすがに知ってるぜ。

ハロウィンってやつは薄着の女の子が増えて、急に抱きついても冗談で済む最高にホットな日だからな。


 じゃあ、ここはどこだ?


 少なくとも、あのビルの近くにはこんなコスプレ野郎が集まる店はねぇし、よく見たら、この部屋の床も壁も石造りで、光取りの窓には鉄格子が見える。

 じいさんどもの後ろには、この部屋唯一の出口があるが、大きく重厚な木の扉があり閉じられている。


 やべぇ。なんか知らねぇけど、普通じゃねぇ感じがする。


 値踏みするようにじろじろ見られているのは癪だが、彼女の部屋に行く時に合うへんなおっさんよりヤバい雰囲気がある。


 こんな事を考えているとローブを着込んだじいさんが突然話しかけてきた。


「急なことで驚いているかもしれんが、おぬしの名を教えて貰えんかの?」


 なんか生意気だなと思ったが、全身鎧プレートアーマーを着ている奴らが怖そうなのでここは普通に対応すべきだよな。


 「人に名前を聞くときは、まず自分から名のるのが普通じゃねぇの?」


 全身鎧を着ている奴らが腰に下げている剣の柄を握りしめようとしたのをロープを着たじいさんが手で制し、にこやかに答えてきた。

 さっき漏らしたから、今回は漏らさずに済んだぜ。


 「おぬしの言うとおりだな。儂はギリウス王国の宰相をしているグスタフ・アクセルソン・オクセンシュタイナーというものだよ。おぬしの立場から見ると異世界に召喚されたということになる。」


 しょうかん? 小官ってことか? もしかして公務員にしてくれんのか? でもこのコスプレは趣味悪りぃよな。でも、いい世界の小官は捨てがたいな。

 

 「ほれ、今度はおぬしが名乗る番じゃ」


 「俺は太田聖。俺に任せれば何でもできるって思ってるぜ」


 「ほほう、中々そこまでいう奴はいないぞ。そこで最初に確認したいことがある。

召喚された異世界人は総じて自分のステータスというものを見ることができる。それを教えて貰いたいんじゃ」

 

 ステータス? 心の中でステータスと唱えると頭の中に『称号:幼者ゆうしゃ、スキル:ナハクソ』と出てきた。

 やっぱ、ハナクソは最強だよな。


 「称号が出てきたと思うが教えてくれんかの?」


 『幼者ゆうしゃ』と出ているから正直に答えるか。

 「称号にゆうしゃって出ているぜ」


 「それは真か?」


 「疑われてもな。そっちで調べられねぇのか?」


 「調べられるが、そのままステータスを思い浮かべたまま、このプレートに触れてみてくれ」


 プレートに触れると文字が浮かび上がってきた。

 title:yuushya skill:hanakuso


 「「「「「おぉっ」」」」」まわりの全身鎧を着こんでいる奴からも感嘆の声が漏れる。


 「スキルがよく分からぬが、「勇者」が召喚されたのは重畳ちょうじょうである。オオタショウ殿を丁重にもてなすことにする。まず王への謁見の前に、身なりを整えさせることが先決じゃ。」


 全身鎧を着こんでいる奴からハナクソって鼻から出るあれだよな? って聞こえたが無視することにする。

 よく分からないスキルほどチートになるのを知らねぇのかよ。


 俺はじじい達の後ろにあった大きく重厚な木の扉から入ってきたメイド達に連れられ、これから自分の寝室となる大きく豪奢な部屋に連れて行かれ風呂に入ることになった。

 風呂といっても寝室に大きなバスタブが運び込まれ、香油の入ったお湯が注がれた後、薄手のガウンをまとったままバスタブに入り、海綿か何かで体を軽くこすられ、頭は優しくブラッシングされた後に、香油を注がれ櫛で梳かされた後にお湯で軽く流すされ、その後はゆっくりと休む。


 これが俺の異世界生活の始まりだった。



◇◇◇◇



 異世界に召喚されてから三ヵ月。


 俺はこの世界の常識や剣や魔法の訓練を順当にこなしていった。

 この世界の文化レベルは、8世紀頃の中世ヨーロッパ。

これは他の召喚者によるこの世界の評価らしい。そして、元の世界との違いは魔法があるらしいが100人に1人位しか使えないらしく、今のところ俺も使えない。


 スキルのハナクソは、取りあえず舐めると絶妙なしょっぱさが大脳皮質味覚領野を刺激して幸せを感じることや、ハナクソを指に付けてメイドを追いかけるとメイドたちは必死に逃げ惑うことが分かった。

 やっぱハナクソは最強だな。


また、俺はギリウス王国の王都マグナ・グラエキアにある王宮にいて、暇さえあれば指に大盛りのハナクソを付けてメイドを追い掛け回すという修行をして身体を鍛えている。俺ってすげぇだろ。

今では才能を認められたのか、来月から王都にある6年制のギリウス王国学園に途中編入し、その後魔法の能力があればギリウス王国魔法学院に、剣術に秀でるようならギリウス王国騎士学院に進学する流れになっている。


 やっぱり『ゆうしゃ』でも学歴は大事だよな。


 そして、俺は『ゆうしゃ』として、学園の2年生に編入した。


 登校日初日、俺より少し背の高いクラス担任になるおっさん教師に連れられて、自分の編入するクラスに向かう。

 俺の身長が165センチだから、このおっさんは175センチ位。少しばかり俺より身長が高いからって『ゆうしゃ』を舐めんなよ。


 クラスに入ると、クラスメイトの連中が俺に注目する。


 まずはパンチの効いた挨拶だよな。

 「俺がゆうしゃの太田聖だ。ハナクソこそが最強だってことをお前らに教えてやる」

 そう啖呵を切って、ほじったハナクソを教壇の前に座っている女子に擦り付けるとその女の子は泣いてしまった。

 そんなに感激して嬉し泣きするなら毎日でも擦り付けてあげようではないか。他の奴も尊敬の念で俺を見つめている様なので、掴みとしては最高だな。

 

 担任の顔が少し引き攣って見えるのは、早速俺がクラスの人心を掌握したことに感動しているからだろう。俺は優しく「クラスメイトの自己紹介をさせろや」と促す。


 担任は全身をプルプルさせながら、全員起立と促す。


 プルプルするなんて、お前チワワか? と思ったが弱い者いじめは「ゆうしゃ」のすることじゃないから、ここは見守ってやるよ。ありがたく思えよ。


 クラス全員が立ち上がって気付いたのは、クラスメイト全員、栄養失調じゃないかということ。

 身長が俺の胸元位しかねぇし。大体120センチ前後じゃねぇの?

 内政チートをして栄養状態を改善したら、俺って神になるんじゃねぇの?

 まぁ最初は算数チートだよな。異世界なんて掛け算で来たら余裕らしいから、俺が教えてやんよ。まぁ掛け算は六の段までしか分かねぇけど。


 そして、ホームルームの後は、待ちに待った俺様の算数チートの時間。


 教科担任から前回の授業内容の簡単な要約があり、今日はその応用問題ということらしい。

 「さて今日は前回の応用問題をするぞ。制限時間は10分だ。10分経ったら答えあわせをして解説をするからしっかり考えろよ。では問題だ」


 問題。ある四ケタの数字ABCDに九を掛けるとDCBAになった。このABCDに当てはまる数字は何か? ABCDにはそれぞれ違う数字が入ることに留意すること。


 「よく考えれば分かる問題だから諦めずに考えろよ。早くできた奴は先生の所に持って来い。さあ始め」


 全く分からん。六の段までしかできねぇのに九の段なんか分かるはずねぇし。どうせ、こいつらも分からねぇだろ。


 ハナクソをいつものようにほじって舐めていたら、後ろのバカそうな奴が立ち上がって教卓の方に歩いてきた。しょんべんでも我慢できなくなったのかい?


 「おっ、早速できたか。どれ見せてみろ。答えは……、正解だ。がんばったな。時間まであと8分あるから教科書を読んで静かに待っているように」


 こいつが正解できただと? そんなことを考えていると次から次へと生徒が立ち上がり教卓の方に移動する。

 そして、問題を始めて5分経つ頃には俺を除く全員がこの問題に正解していた。


 「全員正解したようだから解説に移るぞ」


 「先生。待ってください。ハナクソゆうしゃがまだ問題を解いている途中です」


 なんたる屈辱。あまりの屈辱に身を震わしていたら、久し振りの失禁をしてしまった。

 

 ばれたくないことほど何故か周りは直ぐに気づくんだよな。特に俺は編入したてでクラスの女の子を感激のあまり嬉し泣きさせているから、その一挙手一動が注目されているだろうし。周りの生徒が目ざとく見つけるのは仕方がないだろう。

 「先生。今度はハナクソゆうしゃが漏らしましたぁ」

 この一声で俺の周りの連中は少しでも遠くに離れようと退避する。


 「おい、オオタショウ。漏らしているのは小か? 大か?」


 「小です……」



 こんな具合に俺の登校初日は過ぎていき登校二日目を迎えることになる。



 二年生全体で四クラス、一クラス30人だから、二年生全体で120人。


 この学年には、この国の主だった地位の子弟が集まっているらしく、特に俺のクラスにはクラス紹介で初めて会った、この国の第一王女セシリア―ナ・オルティナ・ギリウスや公爵家の筆頭でもあるフリデリスク公爵家の長男のレイニシオ・エスプランドル・フリデリクスとその近習のセーヌとアッシュがいやがる。


 いや……


 これって、一発逆転狙えねえか?


 公爵家のレイニシオっていうガキを絞めれば、まだ日の目を見れるんじゃねぇの?

 そうと分かれば、さっそく因縁つける理由を考えないねぇと。

 この学校はホルナーダ・パルティーダといって午前と午後に授業が別れ、午前と午後の授業は二時間ほど空いているから、この時間帯が因縁つけてぶちのめすには恰好の時間になるよな。

 まぁ恨みはねェけど俺のための捨て駒になってくれよ。



 昼休みの学食



 レイニシオとその近習が学食に向かったよ。くぅ~。わざわざ観衆の面前で俺の引き立て役になってくれるのかよ。舎弟にしてやってもいいぜ。

 さあ、因縁つけに行くか。


 おっ。レイニシオと一緒のセシリア―ナ第一王女がいるぜ。俺の強さを見せつけるにはちょうどいいシュチュエーションじゃねぇかよ。まいったなこりゃ。

 「おい、お前うちのクラスのレイニシオだな? ちょい面かせや」


 「アッシュこいつ誰か分かるか?」


 「こいつはハナクソお漏らし勇者だよ」


 「アッシュ、セシリア―ナ様がいる前であまり汚い奴の話をしないの」


 「セーヌは相変わらず優等生だよな」


 「わたしはアッシュと違って後のことも考えているのよ」


 「二人ともそこまで。セシリー。ゴミが迷い込んだようなので掃除をしてきてもいいかな?」


 「レイニシオ様。わたくしとしてはゴミにも資源になるものがあると思っていますわ。でも環境に悪影響を与えるゴミは早く片付けた方がいいと思います。」


 俺を無視して会話を楽しんでんじゃねぇぞ。

 「おめぇら、ごちゃごちゃうるせぇぞ。ここでぶちのめされてぇのか?」


 「煩いゴミだな。アッシュ、セーヌ」


 「Hexenschussヘクセンシュス:魔女の一撃」アッシュの手が煌めき、急に俺の腰に激痛が……これじゃあ立ってられねぇぞ。


 「Hemorroidesエモロイデス

 今度は肛門に切れるような激痛がはしりやがる。もしかしてこれが魔法ってやつか? 肛門があまりにも痛くて、びくんって背中を反ったら腰痛がさらに悪化して声もでねぇ。


 最後に止めのようにレイニシオが「裏急後重りきゅうこうじゅう」と近習と同じように周りに聞こえない程度の小声で呟く。

 あっ……、呟きと同時に激しい腹痛の後に、急激に我慢できない便意が……



 この後、学力がついていけなくなり自主卒業まで俺はハナクソゲーリーと呼ばれ続けた。


 レイニシオには一生付きまとっても、この恨み晴らしてやると誓ったのもこの時だよな。

この出来事が俺とレイニシオの長年にわたる因縁の対決の始まりになろうとは思わんかったが。


アニメでも小説でも「ショウ」って名前は多いですよね。

そんな「ショウ」って名前がここにも、あそこにも「おった」ということで主人公の名前は太田聖になっています。

しかも、多くの「ショウ」さんは強くてハーレム体質なので、それとは真逆にしています。


ガキみたいな思考の幼者ゆうしゃでハナクソ好き。


こんな話の感想をお待ちしています。


そういえば、今日電車に乗っていて、鼻くそほじって食べていた中学生ぐらいの女の子がいましたが、鼻くそほじるのは止めた方がいいと思うのは私だけでしょうか?


2017/12/8 一部追加と誤字修正

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