第八話 面会
「失礼致しますっ!」
僕はできる限り大きな声で言った。…そして強く出そうとしすぎて声が裏返ってしまった。あぁ、やっちまった…。
「うむ、良くぞ参った! 長旅ご苦労であった」
「いえ、我々はただここまで来ただけですので」
「まぁ今日は疲れているであろうから、この城の中の客間に泊まれ。詳しい交渉は明日でも出来よう」
「お心遣い痛み入ります。では、お言葉に甘えて」
…これで、僕らはようやく潜入に成功したんだな。
「なぁ、なんであの場で殺さなかったんだ?」
食事が終わり、客間にディアと僕しかいないことを今一度確認してから、僕は質問した。
「…お前、馬鹿なのか?」
「…え?」
「あのまま都主を殺していたとしたら、どう考えても疑われるのは俺達だろ」
あぁ、そうか。全然気づかなかった。
「…はぁ。お前は全体的に知能が高いが、時々抜けているな…。まぁ元よりお前は火の魔力が弱かったから、思考力が低いのは仕方ないんだがな」
…え? 人の魔力ってそれぞれ差があるの?
「…僕って火の魔力が弱いの?」
「あぁ、お前は火の魔力が弱い。逆に、空間認識を担当する風の魔力はやたら強い」
…なるほど、僕は思考には向かないが、空間認識能力は高いということか。
「…で、どうするの?」
「…あぁ。夜に計画を実行する。都主の部屋の場所と行き方は覚えているだろ」
「あぁ、それに関しては心配ないよ」
空間認識については自信がある。…って言ってもまだ記憶はほとんどないんだけど。
「そしたら、極火の刻に奴を殺す。案内はよろしく頼んだぞ」
「分かった。…それまで少し眠るよ」
「あぁ」
…今日は、長い一日だった…。