第四話 契約
僕らはヴィントス街の中でも特に人の多いイーラリ広場に来ていた。広場と言ってはいるが、実際は小さな商店街の集合した地域だ。
ディアが全く周りを見ずに通りを歩いて行ったので、僕は街の細かい様子をうかがい知ることはできなかった。
彼がひたすら黙って先に進んでいく状態がきつくなって、ディアに声をかけた。
「…ねぇ」
「…何だ?」
「…君は今どこに向かっているんだ? 契約をしたんなら僕には知る権利があるんじゃないかな」
「…じきに分かる」
「でも―――」
「何か、勘違いをしているみたいだな。俺とお前の間にある契約は決して双方に利点が生じるようなものではなく、一方的なものだ。それが分からないなら契約を破棄してもらう」
契約を破棄したら死ぬことは分かっていたので、僕はそれ以上は何も言えなかった。
しばらく歩いていくと急にディアが立ち止まったので、彼にぶつかってしまった。
「…どうしたの?」
「…上を見ろ」
言われるがままに上を見ると、目の前には周囲の人や物を全て吞み込むような巨大な城郭が存在していた。
「これは…」
「…ヴィントス城だ」
続けてディアは言った。
「ここから、この都市を支配する。ここから終わりを始めるんだ」
極火を知らせる鐘が鳴った。その鐘の音の中には微かに、しかしながら確かに終焉の音が交じっているような気がした。
これで第一章完結です!
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