小さな少女の小さな世界【400文字小説】
その少女にとって、人間の世界というのは大きなものだった。
その少女にとって、人間から隠れて暮らす小人の世界も大きな世界だった。
人間から見て、人間の世界というものは少し窮屈だった。
人間から見て、隠れて暮らす小人の世界はとても小さなものだった。
その少女は人間の世界に憧れていた。どこまでも続くその世界に憧れていた。
人間は人間の世界の中に憧れを持っていた。人間の世界の中で憧れを持っていた。
少女とは違い、多くの小人は自分たちは自分たちの世界でしか生きられないと思っていた。
しかし、少女は憧れを捨てれなかった。
いつか人間の世界で旅をしたい。
そんな少女の願いは人間よりも大きな青空へとむけられる。
この空の向こうには何があるのだろうか?
人間がとっくの昔に解いた謎も少女にとっては、無知の世界であり、興味の対象であった。
「いつか、私の願いが叶いますように」
少女はそんな願いをのせて、青空に向けて小さな声でささやいた。