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花の中将  作者: 六条
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有明の月

まさしう寝てか醒めてかといふ心にて、有明の月ぞ残れる。

世をはばかりたまふにや、男君、とく出でたまひけり。

女君は、日の高う差し出づるまで、臥したまひけるとかや。

後朝の、ありつるべきなれど、いかにとかや。聞き侍らず。


「今宵さだめよ」などなむものしたまひぬにや、その暮れ方、たちかへり訪ひたまふ。

女君も本意なくはあらぬ心ざしにて、気近うものなど申したまひて、明けぬ。


はや三日夜にもなりぬ。

雨のそほ降りたるも、障るほどにもあらざりけり。

かの君の、少納言に似ず、人をおろかに持てなしたまふななるは、いかにせむと思しつつ、父君、これかれしつらはせたまふ。

まして、下種ならぬ母君の、御女をいとほしがること、かぎりなし。

女君うち笑みて、かかるもなのめならぬ契りにやあらむとて、待ちゐたまひぬ。



―――――



本当に「寝てか醒めてか」という夢のような趣で、夜が明けて有明の月が残っていた。

世間体を気にしてだろうか、男君は早々と女君の邸を後にした。

女君は、日が高くのぼるまで、横になっていたとかいうことだ。

後朝の文などもあったはずだが、どうしたことだろう。聞いていないのだ。


「今宵さだめよ(今夜二人の関係をはっきりさせよう)」などと男君は言ったのだろうか、その日の暮れ方に、また女君の邸を訪問した。

女君も満更ではない気持ちで、打ち解けた様子で契りを交わして、夜が明けた。


早くも三日夜(婚礼の日)になった。

雨がしょぼしょぼと降っているものの、出掛けるのに不都合なほどではなかった。

あの男君は、少納言のようでもなく、関係した女をおろそかに扱っているらしいというのは、どうしたものだろうかとお思いになりながら、常陸の君の父君は、あれこれと準備をおさせになる。

ましてや、決して低い身分ではない母君が我が娘を哀れだと思うことは、はなはだしいものだ。

女君は微笑んで、これも並々でない前世からの約束事なのでしょうとお思いになって、男君を待っていらっしゃった。

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