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花の中将  作者: 六条
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里のうちかたらひ

かの瑠璃の君などの、心高きはつくづく思いあなづるなめりと、いとあいなき心ちにや。

さりとて、例のごと、たやすうおもむかせたまひつる方はつゆ思しやらず、里にて女房あまたして過ごしたまふこと多かり。

さるにもあらず、なべて召人とふべきにあらむ。

ある人、

「いつぞや、常陸の君にものしたまへるとは、まことにや侍る」

と尋ね申さば、ことざま、「げに、さもや」とうち笑ひて、

「かの父君、いかなる際にとや思さむ、少納言の君をこそと思しおきたまひたるなめりかし。女君も、なほ」

と申すを、中将、

「あな。げにはいかばかりの際にや」

と宣へば、

「母君は常陸の守させたまふ親王が姫君とかや。さる由にてやあらむ」

「さかし。げに、父君の思しおごるもことわりの気配とぞ見えけめ」

いまだ思し捨つらぬげの御様にては、人々のものうらやみ、いかにとぞ。



ーーーーー



あの瑠璃の君といい、気位の高い女君たちはつくづく自分を侮るようだと、たいそう面白くない気持ちなのだろうか。

かと言って、簡単に思い通りにしてしまった人たちのことは少しも思わず、自邸で女房を何人も侍らせてお過ごしになることが、どうやら多いようだ。

言う必要もないけれど、この女房たちというのは皆、「召人(お手つき女房)」と呼ぶべき人たちらしい。

一人の女房が、

「最近、常陸の君をお口説きなさったというのは、本当でございますか」

と尋ね申し上げると、他の人が「まあ、まさか」と笑って、

「常陸の君の父君は、自分たちをどのような身分だとお思いなのやら、少納言の君を婿にと心に決めていらっしゃるとかいうことですよ。常陸の君自身もそのようにお思いのようです」

と申し上げたのを、中将が、

「それはまあ。本当のところはどれぐらいの身分なのだろうか」

「母君は常陸の守をお務めでいらっしゃる親王の姫君だとか。上司と部下のよしみで結婚なさったのでしょう」

「なるほど。確かに、父君が思い上がるのも無理はない雰囲気のように見えたことだ」

まだ常陸の君のことをお忘れでないような中将の様子なので、女房たちの嫉妬というのは、どれほどだったことかと思われる。

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