第九幕 情景
「いつも通りの席に座ってくださいね!」
ヤバい、足音が近くなってくる!というか、もう隠れなくてもいい気がしてきた。・・・いや、でも夜中にわざわざこんなところにまで来てなにかする、ってことは相当見られたくないことをするんじゃないか?例えば、裸踊りとか。・・・流石にそれはないか。まぁ、とにかく、見られたくないことをするとして、それで私がいる、ってバレたら不味いんじゃないか?ノアはともかく二人はヤバい!殺される!!・・・そうだ、よし。人形になりきろう!等身大の!!
「おや・・・?」
ノアの不思議そうな声が聞こえてきた。ゲッ!バレた?
「ん・・・?」
「どうしましたか?」
「このマリオネットはなんだね?」
ミスルトゥの声が上から聞こえてきたと思ったら、なにかにお腹をつかまれ持ち上げられた。
「ひぃっ・・・・!」
ミスルトゥが・・・・!!巨人に!!!
「ん・・・?今・・喋ったような・・・・?」
・・・・いや、違うな。たぶん、逆だ。私が小さくなったんだ。ノアを見てもフィアーノを見てもミスルトゥや周りのものと同じサイズだし。まぁ、逆に人形になりきるとしたら好都合かもしれない。
「気のせいじゃないですか?」
「いや、でも今たしかに・・・。」
「見せてください。」
近い近い!!さっきのミスルトゥも近かったけど、フィアーノさん!あんたも近いよ!!そんな麗しい顔近づけられても困っちゃうよ!!二人とも超・美形なんだからさ!!というか、ミスルトゥはうさ耳をつけててフィアーノはねずみの耳をつけてるのね。どっちも半ば原型留めてないけど。・・・・やっぱり、ミスルトゥが三月うさぎでフィアーノが眠りねずみだったのね。
「このお人形、寝衣を着てますよ。」
「本当だ。これはノアールローズが選んだのかね?それにしてはセンスが随分とないように見えるが。」
センスがなくて悪かったな!
「そもそもこのお人形、あまり可愛くないですね。」
可愛くなくて悪かったな!!
「・・・・ちょっと見せて頂けますか?」
「構わないが・・・。これは君が用意したものではないのかね?」
「・・・ええ。」
そりゃそうだ。
「とにかく、見せてください。」
「そんなピリピリしなくてもちゃんと見せるから安心するのだよ。」
私はミスルトゥの手からノアの手へと渡された。
ノアは私をじっくりと見つめて息をのみ、
「・・・ソレル。」
と、呟いた。本当に小さな声だったが確かにそうつぶやいた。
「なにか言ったかね?」
「いえ☆」
よっしゃああああああああ!!!流石ノア!!気づいてくれ、た・・・・え?なにしてんの?
「なにをしているのかね?」
「いえ☆」
私はノアに運ばれていた。
「喋る人形など、滅多にないのだよ!それを、
「それをあなたが言うんですね。」
「うるさい!とにかく、それを独り占めしようなどと、
ぎゃあああ!!この人に人形はまずかったか!!でも、人形以外に、
「独り占め?ええ、そうですね。ですが、それは当然です。なぜなら、これはもともと私のものなのですから。」
ノアの声は驚くほど冷たく響いた。
「・・・そう、だったのかね。だったらもとから、しっかりと仕舞っておけばいいものを。」
「いずれそうするつもりですよ。」
私は棚におかれ、上からノアのシルクハットを被せられた。つまり、ノアのシルクハットの白以外なにも見えなくなった。
・・・・ふー。よかった・・・。助かったぜ、ノア!あやうく私はミスルトゥの実験材料に・・・。
「さて、仕切り直しです☆」
「ああ。」
「はい。」
なにやるんだろ・・・?ちょぉーっと、いや、結構気になるな。
・・・よし、覗こう。
「どっこらせ。」
よし、シルクハットの中から抜け出せた。・・・・シルクハットの後ろに回ろう。
「さて、貴方達にかけた私の能力を解きますよ!」
三時のお茶会への参加条件は『ミスルトゥ・ヤドリギ』であるか『フィアーノ・ルレザン』であるか『ノアールローズ・ロードン』であるかです。が、もう一つあって、不思議の国のアリスの狂ったお茶会メンバーの恰好をしなくてはいけません。それをノアは「本人であるか見分けるため。」と言っていますが、単にノアが面白がってやっているだけの節があります。
ミスルトゥ=三月うさぎ
フィアーノ=眠りねずみ
ノアールローズ=帽子屋
の恰好をしています。




