第十一幕 情景と葬送行進曲
「・・・・はぁ。そういうことですか。」
私がなぜこうなってしまったのかを話すと、ノアは深いため息をつきながらそういった。
「ねぇねぇ、とりあえず話したからさ、体のサイズ、もとに戻してくれない?」
「はぁ・・・・。」
ノアは近くにあったケーキをフォークで少し切って、私の口に押し付けてきた。
「食べてください。」
パクリ、とケーキを食べると、
「お、おおおお!」
元の大きさに戻った!
「・・ねぇ、もうちょっとそれ・・・
「あげませんよ。」
ちぇっ、憧れの高身長になれるかと思ったのに。
「これ、魔道具?」
「そうですよ。不思議の国のアリスシリーズのものです。」
へー。あ、魔道具っていうのは魔力が込められた道具のことね。例えば瞬間移動シールとかあるでしょ?そういうのには、能力が瞬間移動系の人の魔力が込められているから、瞬間移動できるの。『花園』はよくある魔法の世界と違って、一人一つしか魔法が使えないからね・・・。だから、魔道具なんてものが開発されたんだと思うよ。ま、わりかしなんでもできる能力もあるけどね。例えば、ノアの能力とか。
「とにかく、いいですか?今日見たものは全て見なかったことにするんですよ?」
「なんで?」
「当然でしょう?人には本当に公にされたくないことがあるのです。それは、あの方々だって同じです。例え、身体も心も純粋な人でなくとも。それにあの方たちは貴女が自分の秘密を知ったとわかれば、容赦なく貴女を殺しにかかりますよ。あの方たちの人を殺めることへの罪悪感など無に等しいのですから。」
やっぱりあいつら人外とかって以前にヤバい気がする。人として問題があると思う。いや、人じゃないんだけど。
「二人が私を殺しにかかったとき、ノアは守ってくれないの?」
なんだか急に彼女風に尋ねてみたくなったので、ぶりっこポーズをしながら尋ねてみる。
「それは・・・勿論守りますが・・・。あの方々を相手に戦うのは・・・。」
へー。
「ノアが最強じゃないの?」
「買いかぶりすぎですよ。一対一ですら勝負は五分五分ぐらいではないでしょうか?二人となれば、絶対に私が負けます。」
「二人ってそんな凄いの?」
「それは当然凄いですよ。能力を発動させれば、一時間もあれば学園中のものを皆殺しにできますよ。まぁ、多少手こずる相手はいるでしょうが。」
「誰?手こずる相手って。」
「まず、三大貴族。フィアーノさんが皆殺しようとした場合、ミスルトゥさんと私。ミスルトゥさんが皆殺ししようとした場合はフィアーノさんと私ですね。そして、クロユリさん、シラユリさん。」
クロユリ、シラユリ・・・王子と姫か。って、シラユリはヒロインじゃん!あ、ノアとヒロインくっつけること、さっぱりすっぱり忘れてたわ。やべっ!期限は次の舞踏会までだから・・・・もう、なにやっても無駄だな。うん。時間、全然ねーもん。よし、諦めよう。人生諦めが大事だ。・・・それに、ノアが私を殺すとは考えられないしね。
「さて、これで満足ですか?そろそろ部屋に帰らないと、明日が辛くなりますよ☆」
うん・・・・。
「ねぇ。最後にいい?」
「どうぞ☆」
ノアは・・・・本当に・・・
「・・・ううん。なんでもない。ごめんね。」
また、聞けなかった。・・・でも、もういい。
「・・・可笑しな人ですね。まぁ、そんな貴女が好きですよ。ソレル。」
「・・・・私も、ノアのこと・・・好きだよ。友達として。・・・ううん、親友として。」
私がそう返すと、ノアは一瞬切なそうな顔をしたあと、すぐにいつもの何を考えているかわからない微笑みに戻った。
「それはそれは!光栄です、姫♪さ、お手を!レディをエスコートするのは紳士の務めです!」
なんだよそれ、と笑いながら手を差し出せば、ノアも笑いながら私の手をとった。
「ずっと一緒に居ましょう。ソレル。」
私は、例えノアが化け物だったとしてもノアに拒否されない限り、傍にいるよ。だから・・・・ノアが本当に、怪人なんだとしても・・・ノアが打ち明けてくれるまでずっと待ってるって、そう決めたから。
「・・・そうだね。ノア。」
ノアは本当に嬉しそうに微笑んだ。




