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原案というか、プロトタイプ (アンティーク姫)

解説は下で。

とりあえずこっぱずかしい三年前のわたしの脳内をご覧ください。



「どうして人を殺したらいけないんですか?」

「殺されてみたら分かるよ」


1


 外は雪が降っていて、車の通る音もいつもより少ない。

 外に出る気も失せてしまうのか、ここ城野探偵事務所は非常に暇を持て余していた。

 所長はどこかにフラりと出かけ、その義理の妹の姫華さんは下の骨董屋で店番、先輩の椎名さんはおやつを買いに行ってしまった。

 今事務所にいるのは、ぼくと夏の終わりに入った前原さんの二人だけだ。

「……」

「……」

 別段苦手というわけではないが、前原さんとは会話はあまり弾まない。

 彼女のみに限った話ではないのだけど、たまに壁を感じさせる部分がある。

 特に過去については前原さんは一切話さない。出身地すら、言わない。

 一度聞いたがあっさりはぐらかされたのでそれ以降聞いていない。

 それに城野さんほどではないが、この人は無口なところがあるから仕方がないといえばそうなんだろう。

「…そういえば」

 思考に沈むぼくに前原さんはぽつりと言葉を溢す。

「姫華さんはアンティーク姫と呼ばれているそうですね」

「そうだよ」

 城野さんはゴスロリを着て骨董屋の看板娘をやっている。

 それが相まってアンティーク姫だなんて呼ばれるのも、まああまり不思議なことではないだろう。

 ゴスロリが彼女の趣味なのかは不明だが、素晴らしく似合っているため理由などはどうでもいい。

「それがどうかした?」

「いえ、深い意味はありません。ただ、他の人が彼女にそうよんでいたので」

「ふぅん」

 城野さんを指してアンティーク姫という人はいるけど、実際にそう呼ぶ人っていたんだ。

 実のところ、城野さんと外で行動することはめったにないから彼女の周囲については良く知らない。

 同じ女子だからなのか椎名さんや前原さんとは度々いっしょに出掛けるよな。椎名さんが無理矢理買い物に連れていくっていうのが大半を占めているが。

「こういっては何ですが、城野兄妹は近所づきあいマメですよね」

「そう言われれば、そうだね」

 確かに、あの兄妹はわりと近所づきあいに積極的なほうなのかもしれない。

 たまにどっかのおじいさんやおばあさんが事務所に来て野菜を置いていったりするし。

 城野さんが怪我をした子供に消毒液とガーゼで手当てしているのも見たことがある。

 ぼくが転んだら手当てしてくれるだろうか。してくれないだろうな。残念だ。

 この歳で転ぶほうが恥ずかしい気もするけど。

 とは言っても、絶賛記憶喪失中のぼくは実年齢すらよく分からない。

 おかげさまで十代なのか二十代なのか不明だ。

 椎名さん(二十六歳)から前原さん(二十ニ歳)の間ぐらいじゃないかと思っている。

 城野さんは確か二十四だとか聞いた。なんというか、割りと平均年齢が若い。

 所長は――どうなんだろう。三十路はいってそうだけど。


2


 少し話題がずれたようだ。

 それにしても所長はあの厳つい顔でなにをやっているんだろう。とても想像がしにくい。

 コンビニとかで溜まっているヤンキーもどきの学生たちを蹴散らしたりしているのだろうか。

 ふむ、なんか違うな。あの人の性格的にそんなのはしない。

「ま、いいことなんじゃないの?無駄に孤高気取ってもいいことなんか無いだろうし」

「そうですね。――あ、おかえりなさい所長さん」

 噂をすれば影がくる。所長が帰ってきた。

 所長の髪や黒いコートの肩に雪がうっすら積もっていたが、暖房の効いた事務所に入るとすぐ溶けてしまった。

「相変わらず寒いな。霜焼けが出来そうだ」

「おかえりなさい。どこに行ってきたんですか?」

「近く。ちょっと困ったもん拾ったって言うから預かってきた」

 取り出したのはCDだ。いや、DVDかな。なんとなく。

「…他人が拾ったもの、預かってきたんですか…」

 嫌な予感しかしない。

 捨て猫を拾ったほうがまだマシなんじゃないか。

明未あけみ。DVD動かすから準備してくれ」

「分かりました」

 頷いて前原さんはテレビに向かう。

 さっそく見るつもりらしい。

「中身がなんなのかは知っているんですか?」

「ああ」

 所長が続ける前に椎名さんと城野さんが入ってきた。

「うう~、寒かったよ~」

 椎名さんが言いながらマフラーを外す。その横で城野さんもコートを脱いだ。

 今日は胸元に明るい色のリボンがついている。見たこと無いな、おろしたてかな?

 スタンバイしたテレビ画面を見て椎名さんは不思議そうな顔をする。

「なんか見るの~?」

 所長はにやりと笑う。

「ちょうどいい、姫華、桃子。そこに座れ。みんなで鑑賞会だ」

「なんのー?」

 先ほどのぼくの疑問をもう一度彼女は言った。

 ちなみに城野さんは表情を一切変えないまま無言で着席した。

 所長はあっけからんとして言った。

「スナッフムービーだよ」


3


 スナッフムービー。

 スナッフフィルム、スナッフビデオなども言われるが、後半の呼び方が違うだけで意味に大差はない。

 簡単に言ってしまえば、殺害動画だ。

 やらせなどではなく、《本当に殺害している》というもののみがスナッフという名前をつけられる。

 ――と、偉そうに語ったがたった今インターネットから拾ってきた情報だったりする。

「都市伝説だと思っていました」

 前原さんはDVDを機器に入れつつそう言った。

 スナッフムービーという言葉は知っていたようだ。

「わたしも~。出回っていてもごくごく一部じゃないかな~?」

「疑問も文句も見たあとで聞くから。今はどんなもんだか見ようぜ」

 やけに楽しそうな口振りの所長。

 殺人犯に追い回された夏ごろのぼくに対してももそうだったような。まったく、他人事だと思って。

 まああの事件で城野さんのかっこいいところが見れたし、ちょっと距離も縮んだし、悪いことだらけじゃなかったけど。

 所長はリモコンのボタンを押した。

 DVDが回る音がして、それから。

 天井から吊り下げられた全裸の女性が映し出された。


4


 撮っている人間だろうか、なにやら前置きみたいなことをズラズラと述べている。

 その間、女性はぴくりともしない。

「桃子」

 ぽいっと所長は椎名さんにリモコンを放る。

「この中で一番耐性ないのお前だからな。いやになったらすぐ止めろ」

「うん。だったら最初から見んなって話なんだけどね~」

 そこはスルーされた。



☆解説☆


2013.1.13のもの。

『人殺したちのコンクルージョン』でいう十五話目あたりで考えられたものらしいです。

中途半端な短編(…と、いうよりプロトタイプとして)アンティーク姫が上がっているのでそちらもあるでよと宣伝しつつ、現在との相違点を。


・番号とポエム

当時影響受けていたのは西尾維新。あとはわかるな?


・名前が違う

姫華(姫香)、桃子(百子)、明未(咲夜)

姫華は漢字が野暮ったくてボツ、桃子はかなり悩んではいましたが百子に変更、明未は明日香+未来(人コンで出る青年、美波のボツ名)だったが現在の設定に合わせ変更


・呼び方が違う

実は本編投稿直前までそれぞれの呼び方を迷っていた

明未は所長さん呼び。仲が良いのだろうか


・女子率が違う

桃子は生粋の女性だった

それから二年かけて赤柴(わたし)が女装青年に目覚めたのが運の尽き


・年齢が違う

姫香、ヨヅル以外はみんな年齢公表のために知らないということもない

たぶん年齢も伏線にしたかったんだろうけど忘れた


・ヨヅルが馴れ馴れしい

明未が一番後輩として来たからかもしれない


・所長に髪が生えてる

大 爆 笑



以上。

だいぶこねくり回したんだなぁというのがあります。

実はもう一人、所長の友人としてキーパーソンがいた筈ですがあえなくボツ

…最初期は姫香はマリア、所長はユダみたいなあだ名を付けられ互いに『鬼』にいた設定でしたが何処行ったのかな

それどころかヨヅルは主人公ですらなかった……年月の流れはスゴイ

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