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佐藤邦明の場合 3

「今日もやられました……」

「そーかー。今日もやられたかー」


 千木良さんに電話を掛けた。


「お金は無かったので殴られただけでしたけど」

「ワォ!殴られた? よっしゃ。じゃあ、病院に保険証もって行って診断書をっもらってきて」

「……診断書?」

「そう。学校の中ではいじめって軽く言ってるけど、れっきとした傷害事件だからね。あと領収書ももらっときな」

「でも医者に行くお金が……」

「バカ。親にもらえよ。そもそも都内の中学生は診療費無料だろ? 診断書までは知らんが」

「そうなんですか? それに親には……」

「……まあ良いや。病院に行くのとボイレコに録音したものと日記はちゃんとつけておけ分かったな」


 言いっぱなしで千木良さんは電話を切ってしまった。


 ――こんなことで病院に行って怒られないのかな?





 あれから1ヶ月たったが千木良さんからはいまだにボイレコと日記をつけておけ、暴力を振るわれたら診断書もらってこいしか言われてない。


 ――あいつ口だけで実は何も出来ないんじゃないのか? 今度電話かけるときに文句をいってやるか。


「……千木良さん」

「おぉ〜その声は伊藤君だっけ?」

「違います! 佐藤です。佐藤邦明です」

「そうそう。佐藤君。何?」

「……僕の事忘れてたでしょ。大体、復讐研究所って嘘っぱちなんでしょ? 全く復讐なんてしてくれないし」

「それ! その他力本願な奴が多いんだよな。復讐の意味知ってるか? 自分自身で報復するんだぞ?」


 やっぱり千木良さんは口ばっかりだってことだよな。口が上手いやつだけがいい目に会うんだ。

 もういいや。言い返して終わりにしよう。


「千木良さん! 貴方は口だけだって分かってんだよ! あんた僕を笑って楽しんでるだけなんだろ?」

「おぉ! やれば出来るじゃん。いじめっ子には口答え出来ないのに俺にはそうやって言い返せるだよな。違いは何だ?」

「……うるさい! あんたにはもう頼まないよ!」

「しょうがねえな。明日またあの喫茶店でな」


 ――あいつ。なんなんだ。




「よしよし。大分溜まったな」


 千木良さんが日記をパラパラとめくりながらコーヒーカップを口にした。


「……で、どうするんですか?」

「もう夏休みだな〜。俺も夏休み欲しいな〜」


 このおっさん黒いスーツを着てるけど何やってる人なのかさっぱり分からない。


「……千木良さんは仕事をやってるんですか?」

「決まってるだろ? 研究所に勤めてるんだよ」

「いじめ復讐研究所ですか? 給料あるんですか」


 千木良さんはそれに答えずに他のことを聞いてきた。


「お前さんをいじめてる奴らは進路は決まってるのか?」

「え? さ、さあ。普通は公立と私立の併願じゃないでしょうか」

「さて、佐藤くんには復習方法を決めてもらおうじゃないか」

「復讐方法……?」


 千木良さんは声を潜めて僕に選択肢を迫ってきた


1.いじめをやめてもらう

2.中学校からお灸を据えてもらう

3.将来、つまり高校進学を潰す

4.いじめてる奴らの関係者を潰す


「……1はともかく、2はどうにかできるんですか? 3と4は酷いかも」

「それは佐藤君の気持ち次第だよ。私はどれでもいいさ。でも、今決めて。ズルズルと引っ張ったって決まらないし。ちなみに数字が大きくなるにつれて受けるキミ自身の受けるダメージも大きくなるよ」


 ――千木良さんはにこやかに言ってくるが、ちょっと頭がおかしいのかな?


「佐藤君。キミはもしかしたら私の事を頭のイカレタ奴だと思わなかった?」

「……い、いえ」

「まあ、正しい。復讐するときに”私は頭がイカレタ奴だよ”って演出をするのはとても有効だ」

「演出?」

「そう。チンピラの様にちょっと手を出したらどうなるかわからない奴にちょっかい出さないだろ? 人間なんてそんなもんだよ。 で、どうする?」


 ――彼奴等が慌てた顔をみたらスカッとするんだろうな。でも……


「千木良さん。決めました。1にします」

「ふ〜ん。分かった。じゃあ今度いじめっ子達に絡まれたら……」


「……そんなこと出来ません」

「じゃあ一生いじめられてろ。ここで足掻(あが)かなかったら、底辺を這いずり回るか、自殺するだけだぞ」

「……」

「ちなみに自殺も復讐の方法のひとつではある。ただ、自分の命に対するリターンは少ないし、結果が確認できないからお勧めはできんがな」


 ――自殺ってサラって言っちゃうんだこの人


「でも……」

「佐藤君。キミね。でもでも言っても現状は変わらないよ。たいしたことやるわけじゃないんだし。 ……まあ今、我慢して自分を磨いて将来見返すって道もあるけど高校も同じようにいじめられる可能性もあるよね」

「……わかりましたやります」

「よし、オッケー。じゃあ、これ渡しておくわ」


 千木良さんから名刺を1枚もらった。

 千木良さんの名前の横に書かれた肩書にびっくりして千木良さんの顔を見ると、悪い顔をしてコーヒーを飲んでいた。

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