禁断の……
『禁断の恋』をテーマにしてみました。
「ふん、こんな小娘が勇者だと。私を馬鹿にしているのか?」
深い闇のような着衣に、漆黒の髪。決して大声ではないのに、その低い声は部屋に響いた。
目の前にいるのは『魔王』、この世界を滅びに導く闇の化身。……私の、敵。
「……家族の…仇ッ!!」
私のいた村は、村外れにある遺跡から現れた魔族に襲われた。村は火に包まれ、生き残ったのは私だけだった。両親も、兄も、友達も、みんななくしてしまった。
「絶対に、許さないッ!」
一緒に来た仲間は、ここにはいない。私を先に進ませるために、皆は残って戦ってくれている。だから、私はたった一人でもあきらめない。
「……魔王!…覚悟!!」
聖剣が私に力を与えてくれる。突き出した剣先は、魔王の頭部を捉えた。
……カツーン…っ…
魔王の頭部が……いや、そこにあったはずの仮面が落ちて割れた。
晒される、白い肌。
見覚えのある頬の文様。……そこにあったのは、私のよく知る顔だった。
「……さすがは『光の聖剣』だな、…小娘の力でも我に一撃を与えるとは」
「…え…?」
『魔王』の仮面の下から現れたのは、少し前にこの部屋の前で分かれたはずの仲間の姿……、私の恋人でもある『魔術師』だった。
「……どういう、ことなの!?」
剣の柄を握り締めると、手の中にある聖剣が、なぜか重く感じられた。
どうも、こんにちは『魔王』です。
今、僕は『勇者』と戦ってます。それで、ちょっと困ったことになっています。
そもそもの原因は、幼い頃、僕が自分の村の近くにある古代遺跡で、闇の魔族に誘拐されてしまったことにあります。
僕は『魔王の城』に連れていかれ、強大な闇の魔力を注ぎ込まれ続け……十年後、立派な『魔王』になってしまいました。
そんな僕を倒すために『勇者』が出現したらしい、ということで。
僕は、部下の魔族に言われて(僕が魔王なのに、一番偉いわけじゃないというミステリー)、仲間になる振りをして魔王の城まで誘導してきました。
「光の勇者様」
とみんなに呼ばれるその子は、素直な『良い子』でした。
順調に旅をして、やってきましたよ。勝手知ったる我が家『魔王の城』。
で、セオリー通りに勇者と戦っている最中でございます。
誤算は、バレないようにと自分の記憶に制限をかけたら、うっかり『勇者』と恋人になったことかな。
でも、それってセオリー通りでいいんじゃない?……って思ってたんだけど。
記憶がはっきりして、気付いたことが一つ。
……『勇者』は、僕の『妹』でした。
うん。記憶って、大事だよね。(遠い目)
だって、頑張っててかわいいなあって……忘れてたから仕方ないじゃないか。好きになっちゃったんだから!!
幸い、あの子はまだ僕の正体に気付いていない。僕は今後、どうするべきだろうか。
[選択肢]
①兄だと名乗り出ない
(さらに選択→悲劇の恋人エンドor真実の愛エンド)
②兄だと名乗り出る
(さらに選択→恋人関係を解消して家族エンドor許されない恋人たちエンド)
③魔王として倒される
(自分的にバッドエンド)
うーむ、迷う。
家族エンドは物足りないなあ。 普通の
「そんな!あなたが魔王だったなんて…」
という悲劇の恋人エンドでもいいけど、できれば
「好きになった人が実の兄だったなんて!私たち結ばれない運命なの!?」
とかいう背徳感あふれるエンドも捨てがたい。
……恋人でも兄でも、どっちでもいいや。あの子の一番近くに居られるなら。
「……お前と二人でなら、私は何でもできる気がする……。『勇者』よ、私とふたりで新しい世界を見てみないか……?」
あ、『勇者』泣きそう。慰めたいなあ。聖剣は魔族には驚異だけど、僕は一応人間だし、あんまり効かないんだよね。
だいたい、光があれば必ず闇は生まれるんだから、すべての闇を消すことなどできはしない。
まあ、勇者のレベルが高ければ、僕も一応『闇属性』だから無事では済まないけど……わざと最短距離をきたからねー、僕の持つ『闇』の方が強い。残念だったね。
単純で乗せられやすくて純粋な、かわいい……僕の大切な『妹』。
君の悲しい過去も、幸せな未来も、すべて僕に繋がっているって気付いているのかなぁ。
なんでそうなる、と皆様からのツッコミが聞こえてきそうです。
『禁断の愛』要素
①恋人は実は敵
②敵の正体は兄
③恋人は実は血のつながった兄弟
の3つをくっつけてみました。