#ご#
その日、私は本当に疲れていて、明浩君からのメールに返信すると
すぐに眠ってしまった。
次の朝はなんてことなく来た。
うるさい目覚しい時計をとめて、ベッドから起き上がる。
あぁ全部黒くてざわざわに見える。
たちくらみはいつものこと。
最近は起き上がると必ずこける。
ったく、なんでよ。
下に行って顔を洗い、お母さんの作った朝食をほおばる。
そして登校。
そして下校。
学校にいた時間がとても短く感じる。
あっという間って感じ。
なにしろもうすぐ中間テストがある。
今はみんなが授業の内容を頭に詰め込もうと必死なのだ。
もう、頭痛いったらない。
ましょうがないんだけど。
そんなどうでもいいことをあれこれ考えていると、家庭教師の先生が来た。
それから9時頃まで勉強をして、先生とばいばい。
お風呂に入ってさっさと寝ようと思った。
寝る前にケータイの受信Boxをチェック。
「あ・・・・」
すっかり忘れてた。
昨日明浩君からもらったこのアドレス。
たぶん町田 豊って人の。
「メール、待ってるのかな。この人」
思いはじめるといやに気になった。
【初めまして、武井しおりです。明浩君から、アドレス聞きました】
それだけ打つとそのメールを送信した。
1分と経たないうちに返信が返ってきて
【初めまして。俺、町田 豊】
【あ、うん。聞いた。なんて呼んでいい?】
【なんでも。友だちは普通に呼び捨てとか、ゆーとか呼んでるけど。】
【じゃぁ豊、がいいかな。私、しおりでいいから】
【そうなん?】
【うん。あんまりちゃん付けとか、いろいろ呼び名作られるの好きじゃないの】
【ふぅん。わかった、しおりね】
豊は確認でそう書いただけなのに、なぜだかどきっとした自分に恥ずかしさを覚えた。
【うん。あの、それじゃぁ明日朝練習で早いんだ。ごめんね、せっかくメールしてくれたのに】
【あぁ、俺も明日朝練だわ。じゃ、おやすみ】
【おやすみなさい】
ケータイを充電器に戻してベッドに入った。
でも、なかなか眠れなかった。
私はその夜を今でもちゃんと覚えている。
目の前の景色が少しずつ変わってきた、最初の日だったのだから。
読んでくださった方、ありがとうございました。