#さん#
その日の夜、やっぱり私は部屋でぼうっとしていた。
明日も開校記念日かなんかで休みだから、だるい身体が余計に重い。
だってきっといつもと同じ毎日だから。
そんなことを思ってるとまたケータイが震えた。
「明浩くんから・・・・」
【こんばんは〜】
【こんばんは】
私はそれだけ打ち返すとケータイを枕の下に押し込んだ。
1分と経たないうちにまたケータイが震える。
【ってか、今度会えない?】
え・・・・
【え?】
【ごめん、嫌だったらいいんだけど】
私は少し考えて
【たぶん、平気だと思う。でも来週からいろいろ忙しいから、明日の午前・・・・かな】
という内容を送った。
【わかった。じゃぁ1時くらいに迎えに行く。住所は?】
【っていうかコンビニの近く】
【いや、わかんねぇよ。俺そこらへん住んでないから】
あそっか・・・・
【じゃぁ、○○駅で待ち合わせで】
【わかった。それじゃ明日】
【うん、ばいばい】
やりとりが終わってすぐ、私は眠った。
変な夢を見て夜中に起きてしまったけど、きつく目を閉じたら眠っていた。
次の日の朝は空が眩しい晴天だった。
そして私は例の駅で明浩くんを待っている。
もう10分遅れてる。
「あの人、時間にルーズなのかな」
独り言を言っていると、後ろから「しおりちゃん?」と声をかけられた。
振り向くと明浩くんらしき人。
「あの、明浩くん・・・・だったりして?」
「うん。始めまして〜」
「どうも」
会話が終わってしまった。
少し間があって、先に話し出したのは明浩くんのほうから。
「えっと、どうする?」
私は計画性のない人が好きじゃないから、少し声のトーンを落として
「どこでも。明浩くん、行きたいところは?」
私たち、別に付き合っているわけじゃないのにこんな言葉、まるでまだ付き合いたての
頃のカップルの会話にそっくりじゃない。
「あぁ、俺あと少ししたらテニス行かなきゃなんないからさ。1時間くらいしか遊べないわ」
遊ぶ、ねぇ。
「うん、大丈夫。とりあえず、あっちらへん行こう?にぎやかみたいだし」
「うん」
それから私たちはどこの店に入るわけでもなく、ただふらふらと商店街を歩いた。
つまんないな・・・・ひそかに心の中でつぶやいた。
そのうち長い1時間が経った。
「そんじゃぁ、今日は会えてよかった」
「あ、うん。ありがと」
「じゃぁ行くわ。またね」
「うん、気をつけて」
そして私たちは別々のホームへ降りていった。
私は歩きながらほっとしていた。「またね」か。たぶんもう直接会うことはないだろうな。
空をみると、まだ高いところにある太陽が、私の髪に黄色いカーテンを絡めていた。
読んでくださった方、ありがとうございました。