#に#
寒くて、それでいて少し暖かな5月。
玄関のインターフォンが鳴る。
「あ、いらっしゃい。荷物、あっちね」
いとこたち家族が我が家に到着した。
おじさんとおばさん、まだ3年生の大樹くん、それから私と同い年の和樹。
ここは男ばかりの家族だ。おばさんは毎回大変そう。
「和樹、ちょっと手伝ったら?」
私がこの言葉を言おうものなら私の背より20cm以上高いとこをから軽くこぶしが飛んでくる。
「痛い」
「まぁね」
あいつはそれだけ言うと、お兄ちゃんのほうに歩いて行った。
そしてふたりでテニスのことを熱心に話している。
ったく、テニスばか。
「あ、ねぇ今日みんな泊まり?」
私が誰にともなく言うと最初に和樹が、
「俺、お前の兄貴の部屋。」
「僕ママと寝る」
と大樹。
「じゃぁいつもどうり和室貸してもらえますか?」
と幸子おばさん。
お母さんがひとまとめに「みんないつものところに落ち着けばいいじゃない?」
と言ったから、みんなそれぞれの部屋に散っていった。
「つまんない」
私はぽつりとつぶやいて2階にある自分の部屋に向かった。
この部屋はなんだか落ち着く。少し前までお父さんの部屋で、とんでもなく煙草臭かったけれど・・・・
ハウスクリーニングの人たちって、すごい。
ベッドに寝転がって天井の壁の一点を見ていた。
穴あいちゃいそう。
そんなことを考えていたら部屋のドアが開いた。
私は寝そべったまま「誰?」とつぶやくように言った。
「俺」
「なんだ、和樹。 何?」
「お前彼氏は?」
「いない。」
「俺はいつでもいんだよ」
「聞いてないけど・・・・」
「まぁすねんなって。ひとりアドレス教えてやるから」
「・・・・別に、いらない」
手に握っていたケータイが震える。
「・・・・いらないって言ったじゃん」
「俺じゃねーよ」
あいつはそれだけ言うと部屋から出てった。
何、あいつ・・・・
ケータイの受信Boxを見ると知らないアドレスからメールが届いていた。
【こんにちはぁ〜 俺和樹の友だちの明浩。
よろしくね。】
しょうがないか。
【あ、うん。始めまして。よろしくね】
この人のアドレスを知ったのも、偶然なんだ って思う。
読んでくださった方、ありがとうございました。