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門前払いを喰らいました

作者: こうじ
掲載日:2026/09/27

「ただいま戻りましたわ」


「えっ!? お、お嬢様?」


 カトリーナ・センチェリト公爵令嬢が微妙な表情で自宅に帰ってきてメイドのリアーナは驚きの声をあげた。


 本来ならば今頃のカトリーナは貴族学院の卒業記念パーティーに出席している筈だった。


 リアーナが馬車に乗り会場に出かけたカトリーナを見送ったのはつい数十分前だ。


 いくらなんでも帰宅するには早すぎる。


「お嬢様、かなり早いお帰りですが……、何かありましたか?」


「あったと言うかなかったと言うか……、会場に入れなかったのよ」


「入れなかった?」


「えぇ、警備兵に止められたのよ」


「えぇっ!?」


「会場に入るにはエスコートする相手、私の場合は婚約者である王太子様が必要なのよ。でも、迎えに来なかったから仕方なく1人で向かったんだけど……」 


 リアーナもカトリーナと王太子の関係性は知っている。


 2人の関係はハッキリ言うと冷え切っていた。


 王太子が一方的にカトリーナの事を嫌っていた。


 カトリーナは関係を良くしようと誕生日のプレゼントとか演劇のチケットやらを贈っていた。


 しかし、王太子からはプレゼントは贈られた事は無いしチケットだってその場で破り捨てられた。


 その場にいたリアーナは王太子をぶん殴ってやろうか、と思う程だった。


 更に最近ではとある男爵令嬢と良い仲である、という噂も出ている。


『もしかしたら卒業記念パーティーの場で婚約破棄されるのでは?』という噂もリアーナは耳にしている。


 もし傷ついたカトリーナが戻ってきたらリアーナはどうやって励まそうか、と考えてもいた。


 でも、会場に入れなかったのだからとりあえず最悪の事態は回避出来たみたいで一安心だ。


「手ぶらで帰るのもなんだから通り道にスイーツ店があったからケーキを買ってきたわ。 屋敷の者で食べましょう」


「流石です、お嬢様! すぐにお茶の準備をしますね」


 カトリーナはメイドであろうが使用人であろうが感謝の言葉を必ずかけてくれるし偶にこうした嬉しいプレゼントをくれる。


 だから、リアーナはカトリーナの味方であろうと固く決意している。


 その翌日、カトリーナの耳にその後の事が入ってきた。


 カトリーナが門前払いを喰らった後、王太子と男爵令嬢とその取り巻きが会場に来たがやはり止められ一悶着あったらしい。


『自分は王太子だぞっ!』

『存じております、しかし規則ですので……』


 とか色々と問答があったけど警備兵は頑なに王太子達を会場に入れなかった。


 暴れた王太子達は結局、別室に閉じ込められたそうで会場に来た国王や大臣達から厳しい叱責を受けた。


 自分だけだったら、とカトリーナは不安になっていたが王太子達も同じ目に遭っていた事にちょっとだけ安心したし、その警備兵の仕事に対する誠実さに感心した。


 もし警備兵が不当な目に遭ったら助けてあげよう、と密かに決意した。


 結局、卒業記念パーティーは一部の生徒が出れなかったがそのまま始まり何事も無く行われた。


 その数日後、カトリーナと王太子の婚約は正式に解消となった。


 そして王太子は身分を剥奪され幽閉されたそうだ。


 やはり、あの入口でのやり取りを見た多くの貴族が王太子に対する不信感を持ったそうだ。


 取り巻き達も各家から勘当されたそうだ。


 そして全ての元凶である男爵令嬢は人知れず何処かに消えたらしい。


 まぁ王家の婚約を駄目にしたのでそれなりの処分をされたのだろう。


 カトリーナはやっぱり真面目に生きるのが一番ね、って思った。



 


 

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