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歴史に娶られ  作者: 剛申
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第四話 夜が明けて





ピピピピ、ピピピピ


さっき寝たばかりな気がするが、もう朝か。

しかし、まだ暗い。今日は曇りか。


「おはよう、紗凪ちゃん」


「んー」


「そろそろ起きましょうか」


「も、もーちょっと……」


がばっと布団をめくって起き上がる。

襖の向こうに佳乃さん。

ふふっと笑う。


「お、起きます!」


佳乃さんは、うんうんと頷いて部屋に入ってくる。


「さあ、着替えましょうか」


白と赤の巫女服をかごから取り出して見せる。

はい、と言っても何をしたら良いのか分からないので棒立ちである。


「じゃあ、帯を解いて、浴衣を脱いでね」


昨日会ったばかりの人に下着を見られる!

若干の恥じらいを感じながらも、

やや、ゆっくりとした動作で勿体ぶって帯を解く。


「はい、じゃあこれを羽織ってね」


何事もなかったかのように佳乃さんは、巫女服のレクチャーを進める。

私も何事もなかったかのように振る舞う。


「ここを結んで」


なぜ私はこの服を着ているのだろう。

ぼんやりと考えている間に着終わっていた。


「はい出来上がり。じゃあ、行きましょうか」


どうやら出来たらしい。

佳乃さんは、私が寝ていた布団を手際良くたたみ、襖のところで手まねきする。

言われるままについて行く。


建物の裏手に回って、木の扉を佳乃さんが開ける。

鍵もしていないなんて不用心だなと思っていると、

立て掛けられている竹ほうきを渡される。


「じゃあ、紗凪ちゃんは、本殿前の境内をお願いね」


お願いねと言うことは一人でやれと言うことだろうか。突然緊張してくる。


「あ、あの、どうしたら」


「え?」


(ほうき)を持ち上げてもじもじとしてみる。


「ああ、その箒でね、落ちてる花びらとかを、端っこに寄せておくの。境内から、周りの林の方にね」


「な、なるほど」


「もうすぐ宮司さんが来るから、早めやっておかないとね」


グウジさん?

誰かの名前かなと考えていたら、佳乃さんが箒を片手に歩き出す。

よくわからずについて行くが、階段の手前で止められる。


「私は下をやってくるから、紗凪ちゃんは境内をお願いね」


はい、と言う間もなく、にこやかに階段を降りて行く佳乃さん。

まだ暗い神社の敷地に取り残される。


私はいったい、ここで何をしているのだろう。

10秒ほど立ちすくむ。

しかし考えても仕方がない。

掃き掃除を任されたのだから、やるしかない。

ここには私しか居ない。

何よりこの巫女服は寒い。

さっさと終わらせて建物に入りたい。


石畳の上からやろう。

しゃっしゃと桜の花びらを箒で動かす。

竹ほうきは使い慣れない。

この広い石畳の上に散らばるピンク色。

全部どかすにはそれなりに時間がかかるだろう。


日の光が眩しくて痛い。

さっきまで真っ暗だったのに、気がついたらオレンジ色。

せっせと箒で掃いているが、終わる気配はない。

花びらを林の方に掃いておけと佳乃さんは言う。

しかし、石畳みから林までは結構な距離がある。

この境内は広いのだ。

そして、今は石畳の一部しか終わってない。


霧とまでは言えないが、白くモヤがかる境内。

ふわふわして綺麗だな。

そういうことを考えて気を紛らわす。


コツコツと階段から足音がする。

佳乃さんかなと見たら、年配の知らないおじさんの顔が見えて少し驚く。

服装から、どうやら神主さんっぽい。


「おはようございます、今代(こんだい)。朝から精が出ますね」


階段を上ってきたと思ったら、こちらに向かって話かける。

誰に話しかけているのかなと周りをきょろきょろ。

しかし誰もいない。


「今日からは何卒お願い致しますね」


やはりこちらを向いている。

私はおじさんの方を向いて、自分の顔を指差してみる。


「あの、私ですか?」


おじさんは困ったような顔。


「え、ええ。ああ、失礼しました。私、ここ(やま)(へび)大社(たいしゃ)の宮司です」


ああ、グウジさん。この人が、佳乃さんがもうすぐ来ると言っていた人。

そういえば昨日見た人の中に居たかもしれない。


「おはようございます。佳乃さんから聞いてます」


「それは良かった」


おじさんはニコニコ。

私もほっと一息。


「あの、グウジさんは、この神社でお仕事をしている人なんですか?」


「え? あの、まあ、はい」


おじさんはまた困り顔。

何かおかしなことを言ってしまっただろうか。


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