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歴史に娶られ  作者: 剛申
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第三十九話 うらやましい





“おい、たまには顔を出せ。レギュラーになれなくて落ち込んでるんじゃなかろうな?“


夜、早々に布団を敷いて寝転び、久しぶりに颯太へメールを送ってみる。まだ二十時だ。さすがに起きているだろう。


ユウちゃんの事を誰かに話したいのだが、佳乃さんや母には言いにくい。かといって美希さんでは私たちと距離が近すぎる。

こういう時は何の繋がりもない、幼馴染とやらが最も話を聞いてもらうのに適役だ。

むしろ、こういう時のためにコイツが居ると言っても良かろう。

私にも気持ちの整理が必要だ。誰かに吐き出したい時だってある。


5分待つ。既読は付かず。

仕方がない。風呂に入ろう。上がってきたら返信も返って来ているだろう。


ちゃぽんと湯船に浸かって、現状を眺める。


神社で働き出してから、初めて同年代の友達が出来たと思っていたのに、あっという間に離れてしまう。中学生三年間では、クラスメイトとは離れたくても離れられない間柄だったというのに。仲良くしたいと思っても、出来なくなることもあるのだな。


自室に戻ってスマホを見る。

颯太からの連絡はなし。なんだよ、どうでもいい時には連絡して来て、連絡を欲しい時にはよこさないなんて、このやろう!


はあっとため息を吐きながら布団に潜る。

まあ、高校生というものは、私にはわからない悩みやイベントで忙しいのだろうな。仕方がない、今日は寝るか。


早朝、起きてスマホ確認。颯太から返信あり。


“時間が空いたら行く”


はっきりしない奴め、もう来るな。

心の中で憎まれ口を叩いてみるが、同時に少し安心もする。なんだこれは。


”たまには私の悩みでも聞け。悪いようにはしないぞ”


颯太が来るか来ないかは別にして、ユウちゃんの話はなんとか聞いてもらいたい。

それに、神社に来るなら、茶の一杯でも淹れてやろうではないか。

グウジさんたちが帰ったあとなら、佳乃さんも怒りはしないだろう。

私は何て気が利く女なのだ。

やれやれと思いながら、巫女服に着替える


いつも通りの日常を過ごし、夕方に巫女服を脱ぎに自室へ戻る。

置きっぱなしのスマホを確認。颯太から返信がある。


“俺も悩み聞いて欲しいんだよな。今晩電話していい?”


どうやらこいつも悩みがあるらしい。

丁度いい、今夜は長電話といこう。


“いいよ”


返信はしたし、後は待つだけ。

夕食の支度をしに台所へ向かう。


「紗凪ちゃん、お風呂、先に入る? 今日は温泉の入浴剤を入れようかと思うのだけど」


佳乃さんが食器を洗いながら一声。時刻は十九時。

まだスマホは鳴っていないようだが、いつ颯太からの電話があるか分からない。


「あ、あとで入りますから、お先にどうぞ!」


あらそう?と佳乃さん。

今は入浴剤よりも電話を優先しなければならない。約束をしているしな。


結局二十時ぐらいになって着信が来る。

随分と待たせてくれるものだ。


「おい、待ったぞ、遅いじゃないか」


「あー、わりぃ。居残り練習してたんだよ」


ひょうひょうとした颯太の声。

このやろうめ。


「練習に勤しむことは褒めるべきではあろうが、それならそうと先に言っておけ」


「ごめんって。なあ、じつはさ、聞いてほしいことがあんだよ」


じつはも、なにも、悩みがあると言っていたはずだが。

まあいい、先にコイツの悩みから言わせてやろう。


「なんだ、言ってみろ。この山蛇の御前様が直々に聞いてやるぞ」


まあ、ここは自分の懐の大きさを見せておかなければな。

堂々たる態度を示しておくべきだろう。


「あー、いやー、あのさ」


「なにをもったいぶっている。さっさと言え」


んーと歯切れの悪い颯太。面倒な奴だ。男らしくしろ。


「じつはさ、先輩から告られたんだよ」


「え!!」


大声を出し過ぎたと、慌てて口を押さえてトーンダウンさせる。


「そ、それで、どうするんだ?」


思わず聞き返す。


「どうしたらいいかなって、紗凪に相談しようかと」


「え、どうしたらって言われても」


何て返せばいいんだ?

想像もしていなかった悩み事に頭がパニックだ。


「そういうのって、ホントにあるんだ。都市伝説かと思ってた」


「なんだよそれ、同じ部活だし、どうしようかなって」


淡々と話す颯太。私の頭の中はぐるぐる。


「紗凪は、どう思う?」


なんだ、どう思う、とは?

どう返そう。うーん、と頭をひねる。


「うーんと、うらやましい、かな?」


「なんだよ、うらやましいって」


そうとしか思いつかなかったので、口に出してしまった。

しかし、それが私の本心だ。


「高校生っぽいなって」


「あー、紗凪は山蛇の御前様だしな。もう山蛇様の奥さんなんだし、はは……」


なんだか申し訳なさそうな颯太。


「どうしようかな」


「つ、付き合ってみたらいいじゃん」


「え?」


私は相変わらず頭がぐちゃぐちゃ。

しかし、何かを言わなければと口走ってしまう。


「いいのかよ?」


そう言われてもわからん。いいのか、悪いのかとか知らん。


「い、いいんじゃない?」


「ふーん」


なんだ?

何がふーんなんだ?

私は何かを間違ったか?

というか、私はそう言っても良かったのか?

もう、わからん。


「あー、それだ、紗凪も悩みがあるんじゃなかったっけ?」


ああ、そうだった、私も悩みを聞いて欲しかったんだ。

しかし、今コイツに悩みを聞いてもらうのも、なんだか違うような気がする。


「あー、えーっと、忘れちゃった。また、思い出したら電話する」


「えー、なにそれ」


「あ、あー、お風呂入らないといけないんだった。じゃあまたね」


「ちょ、ちょっと待って」


きょどきょどとしながら、通話を終わらせようとする。

颯太が何か言っているのが聞こえたが、さっと終了ボタンを押す。


ふー、ふー。変な汗が額に浮かぶ。

何なのか分からないが、心拍数が上がっているのは確かだ。


「はあ、お風呂、入ろ」


てくてく歩いてお風呂場へ、シャワーもそこそこに、さっさと湯舟につかる。

入浴剤で濁ったお風呂は、佳乃さんが入ってから随分と経ったので、もうお湯ではない。


「あー、冷めちゃってるなー、温泉」


温かいお湯を求めて、腕を伸ばし、追い炊きのボタンを押す。



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