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歴史に娶られ  作者: 剛申
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第三話 初夜





母と父が大きなカラーボックスを抱えてくる。


「はい、着替えとか、一通りまとめてあるから」


部屋の端にドシンと置く。


「わかった。ありがとう」


「他に必要な物があったら、いつでも取りに帰ってらっしゃい」


父がカラーボックスの一つ開けて、スマホの充電器やら、何やらを見せる。


「困ったことがあったら電話してきなさい」


少し険しい顔。

うん、と頷く。


「いつでもお父さんは、お前の味方だから」


そうは言うけど、なんか睨まれているみたい。


「はいはい。長居したら悪いし、帰りましょう。紗凪、御前様に失礼のないようにね、あんた寝坊ばかりだし」


父の背中を物みたいに押して出ていく。

シャッと締まる襖。


無造作に置いて行かれたカラーボックスたち。

それと、綺麗に畳まれた布団。

あ、今日からここで寝ることになるんだな。

そう思うと、なんだか寂しくも感じてくる。


せっせと部屋の角に合わせて置きなおし、

充電器やらを取り出す。

机も無いので、カラーボックスの上に置いてみる。


ぽっぽっぽっと襖が叩かれる。


「紗凪ちゃん、ちょっといいかしら」


佳乃さんだ。


「はい、今開けます」


寝間着というのだろうか、薄い浴衣を着ている佳乃さん。


「色々覚えることがあって大変だと思うけど、明日からよろしくね」


はいと頷く。何のことかは分かってない。


「朝は五時半に起きて、境内の掃き掃除だから、夜更かしはしないでね」


早! と思ったが表情に出ないように引っ込める。


「ああそれと、良かったらこれ使ってね」


紫の薄い浴衣と帯。

私の寝間着だろうか。


「ありがとうございます」


「呉服屋さんで新調してもらったものだから、サイズは大丈夫だと思うわ」


「着てみますね」


「それと、朝起きたらこれに着替えてね」


かごに入れられた、白と赤の服。巫女服だろうか。


「あの、これ、着方がわかりません」


「そうか、じゃあ明日の朝、ここで着替えてから出ましょうか」


こくこくと二回頷く。


「お風呂は、そこの廊下を曲がった一番端にあるから。好きな時に入っていいわよ。ここはもう、貴方の家みたいな物だから。あ、お湯は朝に捨てるから、流さなくていいからね」


ふふっと笑って、佳乃さんは部屋に戻って行った。


カラーボックスの隣に巫女服が入ったかご。

なんだか分からない世界に来たのだな。

ぼんやりと考え込む。


カラーボックスの上に置いた紫の浴衣。

せっかくだし着てみようか。

下着と一緒に抱えこむ。

お風呂はいつ入ってもいいらしい。せっかくだし、入って来よう。


言われた通りに、暗くて冷たい廊下を進む。

もっと明るい電球をつけたらいいのにと思う。

見慣れないお風呂場で戸惑いながらも服を脱ぐ。

家ではお風呂場に洗濯機があったので、脱いだ服を突っ込めばよかったが、

ここにそれはない。

脱いだ服はどうすればいいのか、明日にでも佳乃さんに聞いてみよう。


お風呂はぬるかったが、幸いにも見たことのあるスイッチ類で、湯沸しは出来た。

シャンプーや、リンスのボトルもある。

使っていいのかなと思いながらも勝手に使う。

そして湯舟へ。

古い建物だけど、お風呂は家とあんまり変わらないな。

浮かんでいく湯気を眺める。


紫の浴衣は、わかってないなりに着ることができた。

帯で締めるだけだったから簡単だ。


裸足でペタペタ冷たい廊下を歩いて部屋へ。

がらんとした見慣れない部屋。

やることもない。

布団を引いて中に潜ってみる。


朝は五時半という佳乃さんの言葉を思い出して、はっとする。

カラーボックスを開けて、目覚まし時計がないかと探る。

どうやら母は入れてくれなかったらしい。

仕方ないのでスマホのアラームをセット。

今は九時半。

いつもだったらスマホを片手にダラダラしている時間だ。

でも、今日はもう寝た方がいいのかもしれない。

義務感に駆られて電気を消す。




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