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歴史に娶られ  作者: 剛申
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第十二話 知らない女の人





昼食は珍しくバラバラにとる。

香織さんが用意してくれた、おにぎりと御吸物。


ふうー、と一息ついてかぶりつく。

う、美味い! 絶妙な塩加減。これが労働のあとの飯というものか!

そう言えば、いつもよりお腹もすいている気がする。

もしゃもしゃと、あっという間に食べ終わる。


「こんにちはー」


振り返ると、廊下に知らないお姉さん。

一見して、いや、どう見ても、綺麗なお姉さんである。

神社の人の服装ではない。誰だ?


「あー、もしかして、御前ちゃん?」


御前ちゃん?

また新しい呼び名が増えたなと思いながらも、こんにちはとペコリ。


「こんにちはー。バイトの()()でーす。よろしくねー」


バイバイしながら、歩き去る。

新鮮だな。ここに若い女性がいるなんて。

ぼけーっと考えそうになるが、これではいけない。社務所に戻らねば。


「ごちそうさまでした」


「あら、もうちょっと休憩しててもいいのよ?」


窓口に座る香織さん。


「なんか、みんな忙しそうだし……、休憩しているのも……」


しどろもどろに返すと、あらあらという感じの香織さん。


「もうすぐ他の巫女さんが来るから、窓口は彼女に任せていればいいからね」


他の巫女?佳乃さんのことではないようだ。他にも巫女さんが?


「おはよーございまーす」


元気よく社務所に現れる巫女服の美人。どうやらさっきの人だ。

私と同じ巫女服を着ている。


「美希ちゃん、今日もお願いね。この後、みんな出払っちゃうから」


「はーい、おまかせあれー」


香織さんと入れ替わりで窓口に座る。


「あ、あの、香織さん、私は……」


やると思っていた仕事がなくなり、香織さんを見てしどろもどろ。


「あー、お嫁さんは、美希ちゃんの隣に居てね。後で御前様が呼びに来るはずだから」


はあ、と分かったような、分からないような返事をする。

この後も激動の時間が訪れると思っていたが、どうやら強力な助っ人がきたので、

私の出番は無くなったらしいことを知る。


「よろしくね、御前ちゃん」


「よろしく、お願いします」


そして無言。いきなり知らない人と並んで座らされる。緊張しかない。

そんなときに参拝客の女性が窓口を尋ねてくる。


「Excuse me, is this a shop…… or the shrine office?」

(すみません、ここはお店ですか、それとも社務所ですか?)


な、なにー!日本語ではない人が来た!

今、なんて言ったんだ。エクスキューズミーしか分からなかった。

何て返そう?ファインセンキューだっけ!?


「Oh, it’s both!」

(どっちもです!)


美希さんが突然何語かもわからぬ言葉を発し、度肝を抜かれる。


「So the items here are for sale, right?」

(じゃあ、ここにある物は売ってる物?)


「Yes, of course. Would you like anything?」

(はい、なにか買われます?)


「I’m curious. What is this?」

(これが何か、気になっているの)


「It’s called a Yamahebi doll fortune, and there’s a fortune card inside!」

(これは“山蛇人形おみくじ”と言って、中に占いのカードが入ってます!)


ば、馬鹿な!普通に意思疎通しているように見える!

私はカチコチに固まっているのに、なんて堂々とした態度。

か、かっこいい。綺麗なお姉さんではなく、かっこいいお姉さんだったとは。


ニコニコしながらおみくじを買って行く英語の女性。

何食わぬ顔でお金をしまう美希さん。


「み、美希さんは、外国の人なんですか?」


「え、日本人だよ?」


きょとんとする美希さん。


「ぺ、ペラペラ……」


「あー、高校のときに留学してたからさー。ちょっとはね」


指で“ちょっと”を作って見せ、にこにこ笑う。

ちょっと、という感じではなかった気がするが。


「す、すごいですね」


「ぜーんぜんだよー」


ははっと笑う。

この人は村の人なんだろうか。バイトと言っていたが、どういう役割だろう。


「あ、あのー」


ん?とこちらを見る。


「美希さんは、山蛇の御前様……、じゃないですよね?」


「ええ!?」


目を丸く開いて驚いた顔。

違ったか。そりゃそうか。


「同じ巫女服を着ていたので、そうかも、と」


「違うよ、ここの窓口担当。時々、他のこともやってるけどねー」


「他のこと?」


他に巫女さんの仕事が?何かあったっけ?

頭をひねって考える。


「でも、今日は御前ちゃんが、その役かもねー」


にこにこと笑う美希さん。

どういうことだ?その役?それも今日?

どうやら別の仕事を、この後に任されそうだと感じて身構える。


「ほら、準備が始まったみたいだよ」


美希さんが境内を見ている。

何かなと思って見てみると、神主さんっぽい茶色い服の人達。

次は何が始まろうというのか……。


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