第二章 ポポロ村開拓
PC内政チート始動! 「シム○ティ」感覚で都市計画
「……ねえ大地。本当にここに住むの?」
ポポロ村の広場に降り立ったキャルルが、不安そうに周りを見渡した。
無理もない。
目の前にあるのは、朽ち果てた石壁、屋根の抜け落ちた民家、そして雑草に埋もれた井戸だけ。
風が吹くたびに、どこかでギギィ……と錆びついた看板が揺れる音がする。完全なるゴーストタウンだ。
「住むには屋根も水もないわよ? いくら私でも、ここを修理するのは数ヶ月かかるわ」
リーシャも瓦礫の山を見て溜め息をついている。
だが、俺には全く別の景色が見えていた。
「表面上のボロさに騙されるなよ。……PC、『地質スキャンアプリ』起動。地下300メートルまで透過表示しろ」
俺はPCを開き、エンターキーを叩いた。
画面上に、ポポロ村の3Dワイヤーフレームが表示される。
そこには、肉眼では見えない「宝の山」が眠っていた。
「ビンゴだ。見てみろ」
俺は画面を二人に見せた。
「まずここ。地下50メートルに巨大な水脈がある。しかも、近くの火山帯から熱源が伸びているから……」
「……温泉!?」
キャルルが反応した。獣人族は風呂好きが多い。
俺は頷き、さらに画面をスクロールさせる。
「それだけじゃない。村の北側の地下。ここには高純度の『ミスリル鉱脈』が眠っている。さらに南側には、作物が育ちやすい『黒土』の層がある」
水、熱源、鉱物資源、そして肥沃な大地。
ここは廃村なんかじゃない。三大国が戦争にかまけて見過ごしていた、未開の約束の地だ。
「す、すごぉい……! 大地、この板(PC)には地面の中まで見えるの!?」
「ああ。ここなら、俺たちの理想の国が作れるぞ」
俺はPCのマウスを動かし、『都市計画シミュレーター』を立ち上げた。
画面上の荒野に、道路を引き、建物を配置し、ゾーンを設定していく。
まるでゲーム感覚だ。
「よし、役割分担だ。リーシャ、お前はこの設計図通りに魔法で土地を均してくれ」
「はあ? 魔法で整地しろって? 土木工事なんて地味な魔法、宮廷魔導師はやらないのよ……」
「報酬は、採掘したミスリルの研究権100%だ」
「やります! 喜んで!!」
リーシャが即答で杖を構えた。
彼女の瞳が「研究材料」の輝きに変わる。
「『アース・シェイプ(地形操作)』! PCのデータ転送……リンク開始!」
ズズズズズ……ッ!!
リーシャの魔法が発動すると、地面が生き物のようにうねり始めた。
邪魔な瓦礫が沈み込み、代わりに地下から硬い岩盤が隆起して、平らな石畳へと変わっていく。
PCのCADデータ通り、ミリ単位の誤差もなく、村の区画整理が一瞬で完了した。
「すげえ……。重機いらずだな」
「ふふん! 私の魔力制御と、あなたの正確な設計図があれば、城だって一夜で建つわよ!」
リーシャが鼻息荒く胸を張る。
次はキャルルだ。
「キャルルは、その俊足で周辺の森から木材を集めてきてくれ。建材にする」
「わかった! 任せて!」
「俺は、水の確保とインフラ整備を進める」
作業開始から数時間。
俺たちの手によって、廃村はみるみるうちに「居住区」としての体裁を整えていった。
†
日が暮れる頃には、村の中央広場は綺麗に整地され、いくつかの簡易的な拠点が完成していた。
だが、まだ家屋までは手が回らない。
「ふぅ……。労働の後の空気は美味いが、さすがに疲れたな」
俺はPCを閉じて伸びをした。
すると、後ろから不満げな声が聞こえてきた。
「おい大地君。……まさか、今夜は野宿か?」
クラウスだ。
彼は「騎士たるもの、見張りが必要だ!」と言って周囲を警戒していただけ(実質サボり)だが、公爵家の育ちゆえに野外での就寝には抵抗があるらしい。
「地面で寝るなど、アルヴィン家の誇りが許さん。せめて絹のシーツと羽毛布団がなければ……」
「贅沢言うな。……と言いたいところだが、俺も固い地面は御免だ」
俺はニヤリと笑い、PCの『アイテムボックス(転送機能)』を操作した。
ゴルド商会経由で取り寄せておいた、地球の「最高級アウトドアグッズ」の出番だ。
「出すぞ。……セットアップ!」
ポンッ!
煙と共に現れたのは、4人が余裕で入れる巨大なドーム型テント。
最新素材の防水・防風仕様。中には極厚のエアマットと、ふわふわのシュラフ(寝袋)、そしてLEDランタンが完備されている。
「な、なんだこの奇妙な家は!? 布でできているのか?」
「入ってみろよクラウス。公爵家のベッドより快適かもしれないぞ」
恐る恐るテントに入ったクラウス。
数秒後。
「おおおおっ!? なんだこの床の弾力は! 雲の上にいるようだ!」
「きゃあ! この寝袋、もふもふしてて気持ちいい〜!」
中から歓声が上がる。
キャルルはすでにシュラフに潜り込み、芋虫のように丸まっている。
クラウスも「こ、これは王宮のゲストルームに匹敵する……!」と感動して、鎧も脱がずに大の字になっていた。
「やれやれ。……とりあえず、今日のところはこれで我慢してくれ」
俺はランタンの明かりを調整し、PCのバッテリー残量を確認した。
明日は、いよいよ生活の要である「水」と「トイレ」を作る。
現代人にとって、清潔な水周りは命より重いからな。
「おやすみ、みんな。……明日は忙しくなるぞ」
静寂に包まれたポポロ村。
満点の星空の下、俺たちのスローライフ(ハードワーク)1日目が終了した。




