表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飲み会優先の女神にPCだけ渡され追放された元球児、検索機能とジャイロボールで最強の兎耳美少女を救い、物理最強の成り上がり!  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/27

EP 22

天空の住人、竜人族の「死のキャッチボール」

 魔導飛行船『スレイプニル』は、雲海を突き抜け、ついに目的地へと到達した。

 高度5000メートル。

 真っ白な雲の上に浮かぶ、巨大な島。

 そこには、風化した石造りの神殿や塔が林立する、古代の遺跡群が広がっていた。

「おお……! 見よ、あれが伝説の『セレスティア天空遺跡』か! 神々しきオーラを感じるぞ!」

 甲板の先端で、クラウスがマントをバサバサと風になびかせながら感動している。

 いちいちポーズがうるさい男だ。

「神々しいかはともかく、魔力濃度は地上の5倍以上ね。……PCのバッテリー回復にはもってこいだけど、普通の人間なら魔力酔いで倒れるレベルよ」

 リーシャが計測器を見ながら冷静に分析する。

 幸い、俺は魔力ゼロなので影響がないし、キャルルとクラウスは身体能力がおかしいので平気そうだ。

「着陸するぞ。衝撃に備えろ!」

 俺はPCを操作し、船を遺跡の広場へと降ろした。

 プシューッ……。

 蒸気を上げながら着陸脚が接地する。

 タラップを降り、俺たちが大地(空の上だが)を踏みしめた、その瞬間だった。

 ドシンッ! ドシンッ!

 地響きと共に、遺跡の影から無数の影が現れた。

 身長2メートルを超える巨躯。全身を覆う硬質な鱗。背中には皮膜の翼、尻尾には鋭い棘。

 顔つきはトカゲや竜そのものだが、二足歩行で武器を持っている。

竜人族ドラゴニュート……!」

 キャルルが警戒して身構える。

 天空の支配者にして、地上最強の戦闘種族。

 彼らは俺たちを半円状に取り囲むと、手に持った石斧や槍を地面に打ち鳴らし威嚇してきた。

「グルルル……。地を這う矮小な種族が、我らが聖域に何用だ」

 群れの中から、一際巨大な、赤い鱗を持つ竜人が歩み出てきた。

 歴戦の傷跡が刻まれた顔。リーダー格だろう。

「我々は敵対するつもりはない! ただ、この遺跡の調査と……」

 俺が対話を試みようとした時、クラウスが前に出た。

「下がれ、大地君! 彼らの殺気は尋常ではない! ここは私が騎士として交渉(物理)を……」

「やめろバカ! 話がややこしくなる!」

 俺がクラウスの襟首を掴んで引き戻そうとした、その時だ。

 ヒュンッ!!

 風を切る音がした。

 リーダー格の竜人が、手に持っていたバスケットボール大の岩石を、何の前触れもなく投げつけてきたのだ。

「なっ!?」

 速い。体感速度140キロ。

 殺意の籠もった剛速球が、俺たちの顔面めがけて飛んでくる。

「くっ、私の盾で……!」

「待て、クラウス!」

 俺は盾を構えようとしたクラウスを制した。

 PCの『異種族言語翻訳・文化解析アプリ』が、瞬時に彼らの行動の意味を弾き出していたからだ。

『解析結果:竜人族の挨拶。「強き者への洗礼」。回避や防御は侮辱と見なされる。打ち返すか、相殺せよ』

「(挨拶で岩を投げるなよ……!)」

 だが、ここで逃げれば交渉決裂、最悪の場合は戦闘だ。

 俺はポケットから、いつもの愛用の石を取り出した。

 来る球は、打つんじゃない。

 投げ返すんだ!

「PC、軌道予測! カウンター投法!」

 俺はセットポジションに入り、迫りくる岩石の軌道を見極める。

 岩の回転、空気抵抗、重力。全ての情報が脳内で線となる。

 俺は踏み込んだ。

 右腕をしならせ、全身のバネを使って石を放つ。

「挨拶代わりだッ! 受け取りやがれぇぇッ!」

 ズバァァァンッ!!

 俺の指先から放たれたジャイロボールは、空中で岩石のど真ん中に激突した。

 物理法則を超えた回転力が、巨大な岩を内部から粉砕する。

 パァァァンッ!!

 岩石は粉々に砕け散り、砂利となって竜人たちの足元に降り注いだ。

 俺の投げた石は、岩を貫通した後、リーダーの顔の横を掠めて後方の石柱に突き刺さった。

「…………」

 場が静まり返る。

 竜人たちが目を見開き、ざわめき始めた。

「グルル……。まさか、我の『剛球』を、あんな小石で打ち砕くとは……」

 リーダーの竜人が、驚愕と、そして歓喜の入り混じった表情で俺を見た。

「人間にしては、良い『肩』をしているな」

「……どうも。そっちこそ、いい球だったぜ」

 俺が肩をすくめて見せると、リーダーはニヤリと笑い、大きな手を差し出してきた。

「我は族長のドラケン。強き者は歓迎する。……だが」

 ドラケンは俺の手を握り潰さんばかりの力で握手すると、背後の広場を指差した。

「我ら竜人族は、言葉よりも『投擲』で語り合う種族。貴様らの用件を聞く前に、我らの神聖な儀式を受けてもらう」

「儀式?」

 ドラケンは広場の中央にある、ダイヤモンドのような形をしたベース(石板)を指差した。

「古より伝わる決闘――『死の石投げ(デス・スローイング)』だ!」

「……は?」

「9対9に分かれ、互いに剛速球を投げ合い、相手を再起不能にした方が勝ち。攻守を交代しながら9回戦い、生き残った数が多い方が勝者となる!」

 俺はPCの画面と、広場の形状を交互に見比べた。

 扇形のフィールド。4つのベース。マウンドらしき丘。

 そして、9対9の攻守交代。

「……それ、ただの『野球』じゃねーか!!」

「ヤキュウ? 知らぬ名だが、これは我らの魂の儀式だ!」

 どうやら、遥か昔に異世界転移者が伝えた野球が、長い年月を経て「殺し合いの儀式」として間違って伝承されてしまったらしい。

 バットもグローブもない。あるのは「投げる(殺す)」と「避ける(生き残る)」だけ。

「もし我らに勝てば、この遺跡の宝でも何でもくれてやる。だが負ければ……貴様らの命、ここで散ることになるぞ」

 ドラケンが殺気を放つ。

 周りの竜人たちも、「投げさせろ!」「俺の肩が火を噴くぜ!」とウォーミングアップを始めている。

「ふむ。つまり、正々堂々と飛び道具で勝負しろということか」

 クラウスが腕組みをして頷いた。

「面白い! 騎士として、決闘から逃げるわけにはいかんな!」

「いや、あんたルール知らないだろ……」

 俺は頭を抱えた。

 相手は身体能力お化けのドラゴン軍団。

 こっちは俺、キャルル、リーシャ、そして勘違い騎士の4人だけ。

 人数も足りない。道具もない。

 だが、俺のPCと知識があれば――この野蛮な「殺し合い」を、近代的な「スポーツ」に書き換えて勝てるかもしれない。

「わかった、受けて立つぜドラケン族長。……ただし!」

 俺は不敵に笑い、PCを掲げた。

「俺たちの『ルール』と『道具』を使わせてもらう。それが条件だ」

「グルル……よかろう。道具ごときで、我らの剛腕に勝てるものか!」

 交渉成立。

 ここに、異世界初の公式戦――『人間軍vsドラゴン軍』のプレイボールが決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ