表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飲み会優先の女神にPCだけ渡され追放された元球児、検索機能とジャイロボールで最強の兎耳美少女を救い、物理最強の成り上がり!  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/23

EP 17

即席開発! 禁断の魔球

「こっちよ、鉄屑ども! 私のスピードについてこれる!?」

 キャルルが叫び、会場の壁を蹴って三角跳びで宙を舞う。

 ドレスのスカートを太腿まで引き裂いた彼女の動きは、銀色の閃光そのものだ。

 ブンッ!!

 ゴーレムの丸太のような腕が空を切り、石柱を粉砕する。

 キャルルはその瓦礫の上に着地し、挑発するように尻尾を振った。

「遅い遅い! 止まって見えるわよ!」

 彼女は軽口を叩いているが、その額には玉のような汗が滲んでいる。

 ゴーレムは3体。しかも、いくら殴ってもダメージが通らない相手に対し、キャルルは回避に専念せざるを得ない。一発でも掠めれば即死級の攻撃を、薄氷の上を走るような集中力で避け続けているのだ。

「ちっ、あの石頭! 私の『泥沼グリース』も効かないなんて!」

 後方から援護するリーシャが、悔しげに杖を振るう。

 彼女が放ったのは、床を滑りやすくする初歩的な魔法だが、ゴーレムの足裏から伸びたスパイクがあっさりと無効化してしまった。

「大地! まだなの!? あの子、もう限界よ!」

「あと10秒だ! そのまま耐えろ!」

 俺は瓦礫の影に身を隠し、PCの画面と、散乱したオークションの商品たちを交互に睨みつけていた。

 俺の頭の中には、すでに『設計図』ができている。

 あのミスリル装甲をぶち抜くには、外からの衝撃じゃ足りない。

 ドリル(ジャイロ回転)で装甲をこじ開け、内部に直接、極大の爆発エネルギーを流し込む『徹甲榴弾』のようなボールが必要だ。

 だが、普通の石では、俺の全力の闘気と回転に耐えきれず、投げる瞬間に自壊してしまう。

 素材がいる。とびきり硬くて、魔力を溜め込める素材が。

「PC、マテリアル・スキャン! 周囲の残骸から適合素材を検索!」

 カメラアプリが瓦礫の山をスキャンし、即座に結果を弾き出す。

『適合素材発見:右3メートル。「竜の心臓石ドラゴン・ハート」』

『適合素材発見:左5メートル。「アダマンタイトの欠片」』

 あった。

 ガストンのゴーレムが暴れたせいで、陳列されていた宝物が散乱している。

 俺は転がるように走り、瓦礫の下から赤く輝く結晶石と、黒光りする金属片を拾い上げた。

「リーシャ! こっちだ!」

「なによ、人使いが荒い……わっ!?」

 俺は駆け寄ってきたリーシャの手に、拾った素材を押し付けた。

「これを使って『ボール』を作れ! 今すぐにだ!」

「はぁ!? あんた正気!? 『竜の心臓石』はS級の火属性魔石、アダマンタイトは最高硬度の金属よ!? これを融合させるなんて、専用の工房で3日はかかるわよ!」

「3日も待てるか! 俺が欲しいのは『即日納品』だ!」

 俺はPCの画面を彼女に見せた。

 そこには、俺が計算ソフトで弾き出した、二つの素材を強制的に融合させるための『魔力波長パターン』が表示されている。

「お前の『魔導具作成スキル』と、この『最適解』があればできるはずだ! 天才なんだろ、リーシャ・ヴェルデ!」

 天才。

 その言葉に、リーシャの眼鏡の奥の瞳が怪しく光った。

「……フン。煽ってくれるじゃない」

 彼女は口元を吊り上げ、マッドサイエンティストの笑みを浮かべた。

「いいわよ、やってやるわ! 私の技術と、あなたの知識(計算)……。これだけの無茶振り、燃えないわけがないわ!」

 リーシャが杖を掲げ、二つの素材を空中に浮かせる。

 彼女の全身から膨大な魔力が溢れ出し、素材を包み込む。

「合成魔法・強制融合フォース・フュージョン!!」

 バチバチバチッ!!

 赤い魔石と黒い金属が、激しい火花を散らしながら溶け合い、混ざり合っていく。

 通常なら反発し合う素材同士が、PCが示した「黄金比」の魔力パターンによって、奇跡的なバランスで結合していく。

「熱ぅぅぅッ! くっ、暴れないでよ、この駄々っ子がぁッ!」

 リーシャが叫び、魔力をねじ込む。

 そして。

 カッ!

 強烈な光と共に、一つの球体が彼女の手の中に落ちてきた。

 野球ボールと同じサイズ。

 だが、その色は禍々しいほどの深紅。

 表面には黒いアダマンタイトの紋様が血管のように走り、内側からは今にも爆発しそうな熱量が脈打っている。

「はぁ、はぁ……できた……」

 リーシャがふらつきながら、熱を帯びたそれを俺に渡してくる。

「『魔導爆裂球マジック・バースト・ボール』試作1号。……中身は、竜のブレスを極限まで圧縮したようなものよ」

「性能は?」

「保証するわ。ただし……」

 リーシャは眼鏡の位置を直し、ニヤリと笑った。

「あなたの『闘気』でコーティングして制御しないと、投げた瞬間にあなたの腕ごと吹き飛ぶわよ♡」

「上等だ。扱いきってみせる!」

 俺はずっしりと重いボールを握りしめた。

 熱い。まるで生き物のようにドクンドクンと脈打っている。

 だが、指に吸い付くようなフィット感は、最高のストレートが投げられる予感をさせてくれた。

「大地ぃぃッ! もう無理ぃぃぃッ!」

 前方でキャルルの悲鳴が上がる。

 見れば、3体のゴーレムに追い詰められ、壁際に追いやられていた。

 回避スペースがない。ゴーレムの巨大な拳が、彼女を押し潰そうと振り上げられている。

「キャルル、伏せろぉぉぉッ!!」

 俺は叫びながら、瓦礫の影から飛び出した。

 右手に握りしめた『禁断の魔球』。

 へその下、丹田から全ての闘気を汲み上げ、右腕に流し込む。

 ――見せてやる。

 地球の野球と、異世界の魔法、そして俺たちの絆が生み出した、最強の一撃を。

 ボールが、俺の闘気に呼応して眩い紅蓮の光を放ち始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ