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飲み会優先の女神にPCだけ渡され追放された元球児、検索機能とジャイロボールで最強の兎耳美少女を救い、物理最強の成り上がり!  作者: 月神世一


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13/21

EP 13

ドレスアップした兎耳少女の破壊力

 オークション当日の夕方。

 俺たちはゴルド商会が手配してくれた、帝都の一等地に店を構える高級ブティックにいた。

「お客様、こちらなどいかがでしょう? 今季の新作、シルクと魔法布のイブニングドレスでございます」

「うぅ……こ、こんなヒラヒラした服、着たことないわよぉ……」

 試着室のカーテンの奥から、キャルルの情けない声が聞こえてくる。

 闇オークションのVIP席にはドレスコードがある。薄汚れたパーカーと拳法着では入場すら許されない。

 なので、俺たちは「戦闘服」としての正装を選んでいた。

「キャルル、大丈夫か? もう時間はギリギリだぞ」

「わ、わかってるわよ! ……もう、笑わないでよね?」

 シャッ。

 カーテンが開いた瞬間。

 俺は持っていたアイスコーヒーを落としそうになった。

「…………っ」

 そこに立っていたのは、いつもの活発な格闘少女ではなかった。

 深海のようなミッドナイトブルーのドレス。

 背中とデコルテが大胆に開いたデザインは、彼女の鍛え上げられたしなやかな肢体と、透き通るような白い肌を艶かしく強調している。

 純白の髪はアップにまとめられ、長い兎耳が恥ずかしそうに震えていた。

 可愛い、という言葉では足りない。

 息を呑むほどに、美しかった。

「ど、どうかな……? 変、じゃない?」

 キャルルがもじもじとスカートの裾を掴み、上目遣いで俺を見る。

 俺は深呼吸をして、動揺を悟られないように親指を立てた。

「……最高だ。会場の誰よりも輝いてる」

「も、もう! からかわないでよバカ大地!」

 顔を真っ赤にしてポカポカと叩いてくるが、その威力もドレスに合わせて控えめだ。

 俺自身も、借り物の黒いタキシードに身を包み、髪をセットした。

 鏡に映る自分は、コンビニ店員でも元球児でもなく、若き青年実業家のように見えなくもない。

「よし、行くぞ。戦場へ」

「ええ。……取り返しに行きましょう」

 †

 オークション会場は、帝都の地下深くに建造された巨大なホールだった。

 入り口には武装した黒服の男たちが並び、招待客のチェックを行っている。

「招待状を拝見します」

 俺はゴルド会頭から貰った『漆黒の招待状』を無言で差し出した。

 黒服はそれを見た瞬間、背筋を伸ばして最敬礼した。

「失礼いたしました! 特別賓客(VIP)用の個室をご用意しております。どうぞこちらへ!」

 案内されたのは、ホール全体を見下ろせる二階のバルコニー席だ。

 眼下には数百人の参加者がひしめき合っている。小太りの貴族、怪しげな魔術師、顔を隠した裏社会の住人たち。欲望の坩堝るつぼだ。

「うわ、人がいっぱい……」

「キャルル、あそこを見てみろ」

 俺はバルコニーの手すりから身を乗り出し、一般席の前列を指差した。

 そこに、見覚えのある男が座っていた。

 帝国の制服を着崩し、酒を飲みながら下卑た笑い声を上げている男。

 関所で俺たちを止め、キャルルの宝石を奪ったあの憲兵だ。

「あいつ……!」

「落ち着け。今はまだ動く時じゃない」

 キャルルの目が殺気立つが、俺はそれを制した。

 俺は懐からPCを取り出し、画面を開く。

 そして『カメラアプリ』を起動し、ズーム機能であの憲兵の顔を捉えた。

「今のうちに、証拠を集めておく」

 画面の中の憲兵は、隣の席の商人に自慢げに話しかけているのが、PCの『読唇術アプリ(自動字幕生成)』で読み取れた。

『へへっ、今日は大儲けだ。あの青い石、ガキから巻き上げたんだがよ……軍の連中が高値で欲しがっててな』

『ここだけの話、横流しの売上は全部俺の懐に入るって寸法よ!』

「……バッチリだ。全部録画したぞ」

 俺は冷たい笑みを浮かべた。

 あいつは気づいていない。

 自分が巻き上げた「ガキ」が、今まさに頭上のVIP席から、破滅へのカウントダウンを刻んでいることに。

 そして、自分が出品した宝石を、俺たちが圧倒的な資金力で奪還しようとしていることに。

「へえ……。軍に横流し、ね。思ったより根が深そうだ」

 単なる小遣い稼ぎかと思いきや、きな臭い話も混じっているようだ。

 だが、関係ない。

 俺たちの目的は、宝石を取り戻し、あいつを地獄に落とすこと。それだけだ。

 ブォォォォォォン……。

 その時、会場に重低音の法螺貝が響き渡った。

 照明が落とされ、ステージだけがスポットライトで照らされる。

「紳士淑女の皆様! 今宵は『闇の競売ダーク・オークション』へようこそ!」

 仮面をつけた司会者が、大げさな身振りで叫んだ。

「欲望のままに! 金の力で全てを奪い合ってください! それでは、最初の商品はこちら!」

 幕が上がる。

 最初の獲物は、俺たちのもう一つのターゲット。

「来るぞ、キャルル」

「ええ!」

 ステージ中央に運ばれてきたのは、巨大な鉄の檻。

 その中で、一人の美しいエルフが、死んだ魚のような目で膝を抱えていた。

 天才にして変人、リーシャ・ヴェルデ。

 俺たちのパーティの「頭脳」となるべき女だ。

「まずは彼女を確保する。……俺の『10億』が火を噴くぜ」

 俺は手元の入札用魔導端末に手をかけた。

 金に物を言わせる、大人の戦いが始まる。

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