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飲み会優先の女神にPCだけ渡され追放された元球児、検索機能とジャイロボールで最強の兎耳美少女を救い、物理最強の成り上がり!  作者: 月神世一


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10/20

EP 10

ゴルド商会殴り込み! 手土産は「地球の猛毒」

 翌朝。

 俺たちは宿を出て、帝都ルミナリアの中央区画へと向かった。

 目指すは、大陸経済の心臓部――『ゴルド商会』の本店だ。

「ねえ大地、本当に行くの? 相手は国より金持ちだって噂の大商会よ? 私たちみたいなFランク冒険者が行って、門前払いされない?」

 隣を歩くキャルルが、不安そうに俺の袖を引っ張る。

 彼女の心配はもっともだ。俺の格好はパーカーにジーンズ。キャルルは可愛らしいが、所詮は獣人の少女。

 どう見ても、大商談をしに行くVIPには見えない。

「普通に行けば、間違いなく門前払いだな」

 俺はニヤリと笑った。

「だから、正面から『殴り込み』をかける」

「な、殴り込みぃッ!?」

「物理じゃないぞ。……俺たちの武器は、これだ」

 俺はポケットに入れた『ある物』を確かめる。

 昨夜、ルチアナとの通話の後にPCの『転送機能』を使って取り寄せた、地球のアイテム。

 女神様いわく、「ゴルドの爺さんはこれがないと生きていけない身体」らしい。

 †

 ゴルド商会の本店は、威圧的なほど巨大だった。

 大理石で作られた五階建てのビル。入り口には屈強なガードマンが立ち、高級そうな馬車がひっきりなしに出入りしている。

「うわぁ……お城みたい」

 キャルルが口を開けて見上げる中、俺は迷わず正面玄関をくぐった。

 ロビーはホテルのように豪華で、床は鏡のように磨き上げられている。

 俺たちが受付カウンターに近づくと、制服を着た受付嬢が、露骨に眉をひそめた。

「……いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

 声色は丁寧だが、目は全く笑っていない。

 その視線は、俺の薄汚れたスニーカーと、キャルルの兎耳を舐めるように見て、「帰れ」と語っていた。

「会頭のゴルド・マッキンリー氏に会いたい。商談だ」

 俺が単刀直入に言うと、受付嬢は「プッ」と吹き出しそうになるのを堪え、冷ややかな声で答えた。

「会頭との面会には、事前のご予約が必要です。現在は三ヶ月先まで埋まっておりますので」

「予約はない。だが、緊急の案件だ。今すぐ通してくれ」

「……お客様」

 受付嬢の声が低くなる。

 背後でガードマンが動く気配がした。

「当商会は、冷やかしや物乞いのお相手をするほど暇ではございません。Fランクのプレートを下げた冒険者風情が、会頭にお会いできるとお思いですか?」

 周囲の客たちも、クスクスと笑いながらこちらを見ている。

 「身の程知らずが」「田舎モンが迷い込んだか」という嘲笑。

 キャルルが悔しそうに唇を噛み、俺の前に出ようとする。

 だが、俺は片手で彼女を制した。

 ――予想通りだ。

 こうでなくちゃ、ひっくり返す甲斐がない。

「物乞い、ね。……あんた、名前は?」

「は?」

「俺を追い返したとあっては、あんたの首が飛ぶことになる。その時に備えて名前を聞いておきたい」

「なっ……無礼な! 警備員さん、つまみ出して!」

 受付嬢が顔を真っ赤にして叫んだ。

 大男たちが俺たちを取り囲もうとする。

 その瞬間。

 俺はポケットから『それ』を取り出し、大理石のカウンターに叩きつけた。

 ダンッ!!

 乾いた音がロビーに響く。

 俺の手の下にあるのは、白地に星屑模様が描かれた、小さな四角い箱。

「……なんだ、それは?」

「手土産だよ」

 俺は箱の封を切り、中から白い棒を一本取り出した。

 そして、100エンライターで火をつける。

 シュボッ。

 紫煙が揺らぎ、独特の香りがロビーに漂った。

「なっ……!?」

 その匂いを嗅いだ瞬間、受付嬢の顔色が変わった。

 嘲笑や怒りではない。純粋な『恐怖』と『驚愕』の色だ。

「そ、その香り……まさか……『女神の紫煙』……!?」

 この世界において、タバコは嗜好品ではない。

 女神ルチアナだけが供給できる、王侯貴族すら容易には手に入らない『神の供物』だ。

 それを、こんな薄汚れた冒険者が持っているはずがない。

 だが、目の前で漂う香りは本物だ。

「これは、俺の故郷では『セブンスター(七つの星)』と呼ばれている」

 俺は紫煙をゆっくりと天井へ吐き出し、受付嬢を真っ直ぐに見据えた。

「ゴルド会頭に伝えろ。『女神の使いが、極上の星を持ってきた』とな」

 受付嬢の手が震えている。

 彼女は理解したのだ。このアイテムを持っているということは、俺がただの冒険者ではなく、商会のトップであるゴルド会頭、ひいては『女神』と太いパイプを持つ人間である可能性が高いと。

 もし、本当に女神の使いを門前払いしたとなれば――首が飛ぶどころではない。

「し、少々お待ちくださいッ!! ただいま、確認してまいりますッ!!」

 受付嬢はカウンターを飛び出し、スカートの裾を翻して階段を駆け上がっていった。

 取り残されたガードマンたちは、どうしていいかわからず、俺とキャルルを遠巻きに見つめるだけだ。

「だ、大地……今のって、昨日ルチアナ様が送ってくれた……」

「ああ。地球じゃ数百エンの嗜好品だが、ここでは最強の通行手形だ」

 俺はタバコの火を携帯灰皿でもみ消し、キャルルにウィンクしてみせた。

「さあ、第一関門突破だ。ここからが本当の『商売ゲーム』だぞ」

 数分後。

 階段の上から、恰幅の良い老人が転がるように駆け下りてきた。

 その目は血走り、俺の手元の箱に釘付けになっている。

 大陸最大の商人、ゴルド・マッキンリー。

 俺という異物が、この巨大組織に風穴を開ける瞬間だった。

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