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磯谷真里亜



柚希颯志、宝条燎悟、雁野結丹の3人があかりの部屋を出て行った。

しかし、松岸壱弥は警察署に連絡を取ろうとする動きを見せない。



「……おい」

「腹を割って話しましょう、弓戸さん。俺が今手に持っている花束や、俺の傍らにいる子供が見えるでしょう?」



壱弥は彰巳に自身の抱える怪異を打ち明けた。

彰巳は髪をガシガシと掻き毟った後……頷く。



「影に触れた時だけな。俺は影に触れた相手の情報が読める。ってか、お前それわかってるだろ?」

「……まぁな」



突然壱弥は砕けた口調になる。



「雁野結丹、柚希颯志、宝条燎悟の情報は読めたか?」



なるほど、それが目的かと、彰巳は合点がいく。



「雁野が沼田晴臣の死を確信しているのは、雁野が沼田を盗聴していたからだ。雁野は沼田が“あかり”と名乗る女を持ち帰った後、沼田の断末魔の悲鳴と盗聴器が破壊される音を聞いている」

「……が、その日肝心の河野あかりは体調不良で寝込んでいた……」

「園村奈津美だろ? それよりも、お前は何故柚希と宝条の情報まで聞く。あの2人には俺の能力を報告済みだろ?」

「……何故そう思う?」



白々しい壱弥に、彰巳は苛立った。



「柚希も宝条も俺が影に触れるのを巧妙に避けている。特に柚希は顕著だ」

「……そうか」



壱弥は否定も肯定もしない。

その態度に彰巳は更に苛立ちを募らせた。

しかし、壱弥は我関せずと涼しい顔をしている。



「弓戸、お前は怪異を何処まで把握している」

「子供の頃に死にかけて、生還したらいつの間にか所持していた。それだけだ」



怪異について教えてくれる者など存在しなかったが、それを所持していることを一般人に知られてはいけないことだけはわかった。



「俺やお前が抱えているのは、言わば怪異の種だ。まだ花開いていない。こいつは開花した怪異に触れることで連鎖的に開花する」

「……それで?」



壱弥は彰巳が持つ日記へと視線を落とす。


「俺たちは怪異の種を《胎児》、《胎児》を抱える者を《母体》、開花した怪異を《ドグラマグラ》と呼んでいる。先日、この暁市で《ドグラマグラ》が発生した。《ドグラマグラ》を発生させた《母体》の名は磯谷真里亜」

「……は?」



彰巳は再びあかりの日記を開く。




○月△日

奈津美が帰宅途中で見たという人身事故の幻覚。

昼間に本当にあの踏切で人身事故があったみたい。

亡くなったのは磯谷真里亜という中学生の女の子。

……言わない方が、いいよね。



○月△日

アクアムーンに磯谷真里亜ちゃんのカット写真が貼ってあった。

柚希さんは人身事故のことを知らないみたいだった。

事故のことを伝えたら悲しそうな顔をした。

お祖母さんと一緒に、よく来店してたって……。

奈津美には真里亜ちゃんの人身事故のことは言わないように頼んだ。




「《ドグラマグラ》に触れた《胎児》は、自らを抱える《母体》を発狂させる。そして発狂させた《母体》を乗っ取って新たな《ドグラマグラ》を発生させる」

「…………」

「もちろん全ての《母体》が発狂し、《ドグラマグラ》を発生させるわけではない。だが、園村奈津美を追えば、俺もお前も発狂し、次の災厄となる可能性がある。それでも、園村奈津美を追うか?」



彰巳の脳裏に押し入れの暗闇と飢餓の苦痛が蘇る。

しかし、それでも彰巳は引けなかった。



「俺は、あかりを見つける」



悩み抜いて、出した結論だった。

あかりが生きているのなら、救出する。

死んでいたとしても、見つける。



彰巳の決意に満ちた眼差しに、壱弥は悲しげに……それでも笑った。



「わかった。俺も覚悟が決まった。共に行こう、彰巳」



壱弥が下の名前で彰巳を呼んだ。

彰巳も、そんな壱弥に応える。



「お前が災厄になったら。俺の手で介錯してやる。安心しておけ、壱弥」

「あぁ、頼りにしている」



2人の男はそんな言葉を交わし合い、河野あかりの部屋を後にした。





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