第九話 夕方
第九話 夕方
授業が全て終わり、ホームルームが終わると、魔梨子が寄って来た。
「一緒に帰ってくれる?!関西に慣れてないし、尼崎なんてちょっと怖そうだから」と言う。
「偏見だよ、偏見!!笑笑、尼は、義理人情に熱い優しい街だよ。いいよ、送って行くよ、家どの辺?!」
「さんさんタウンて言うの?!、その近くだと思う」
「わかった、塚口近辺なら、そんな遠くないし、更に安全!!まあ、街を覚える為にも、一緒に歩いて行こうか?!」
「うん」、
思っていた以上に、魔梨子は、雰囲気も良いし、やっぱりすんげえ美人だ。(こりゃあ、梨子が観たら気ぃ狂うなぁ〜)と思いながら歩き出した。
今日、梨子は部活で遅くなるとか言ってたから良かったものの、明日からはどうしようかと思った。
「お父さんって、技術者なんだろ?!神戸って言ってたけど」
「なんか造船系の仕事をしているわ、ヨーロッパを回っている時に、母と知り合ったみたい」
「へーっ」
こんな美人に関東弁で話しかけながら歩いていると、映画のワンシーンみたいな感じだった。
東京の高校生ではなく、「ここは尼やで〜」と思いながら、たわいもない話をしていると、
「あなた.......実はZXなの?!」
「へっ?!」
「誰かが言っていたわ、アニメソングを歌っているAIさんて」
「ああ、AIさんて、そっちの」と言うと、
「別のZXさんがいるの?!」と笑っていた。
隆の背中には、冷たい汗が沸いてきた。
「ああ、一応、音楽は子供の頃からやってるから、願いが叶ったと言うか、アレは俺で、他のゴーストライターがいる訳ぢゃないよ」と誤魔化すと、
「冗談よ、あなたが作っているって思ってるわよ」
と笑っていた。
(ふ〜っと、隆は、落ちついたが、なんか変な感じがした)
郵便局を超えて、阪急塚口駅に向かって歩いている。山本魔梨子は、思っていた以上に美しくて、梨子も可愛いが、なーんか甘〜い匂いがして理性を失いそうになった。
「隆くんの彼女って、二年生なの?!、軽音の後輩?!」
「いや、梨子とは、幼稚園からの腐れ縁で」と言うと、「ぢゃあ、軽音部に私を入れてくれない?!」
「ああ、良いよ、バンドの連中がボーカル探していたし、ビジュアル最高だから」と言うと、
「ぢゃあ、部室で毎日会えるね!」と緑色の目で覗かれてしまった。(参ったなぁ〜)と思いながら、さんさんタウンのロータリーまで、送って行った。
「ぢゃあね!!」と山本魔梨子は、手を振ってバイバイした。
「ふ〜っ」っとため息をついた瞬間、
「兄ちゃん、梨子ちゃんに言う」と妹が半笑いで、後ろに立っていた。
「転校生やから送って来ただけやん」と言うと、「兄ちゃん、梨子ちゃんに言う」
「わかった。よっちゃんでいいんか?!」と言うと、
「よっちゃんのからあげでイイ」と買わされてしまった。
「でも、あの人恐ろしく綺麗ね、まるで人間ぢゃないみたい」
と、中坊の妹は変な事を言い出した。
つづく〜