第八話 魔梨子レオナルド山本
魔梨子レオナルド山本
女の子は転校生だった。
「では、自己紹介をしてくれるかな?!」
「こんにちは、私は、」と言うと黒板に文字を書き出した。
「私は、魔梨子レオナルド山本です。」
「おお〜」と男子軍団から歓声の声があがった。
いや、女子からも上がった。
灰色と、少し紫がかった髪に、緑色の瞳だった。皆んなコスプレしてんのか?!と一瞬観えたが、いや、違う。生まれたそのまんまのいぢってない感の生命体だった。
「山本さんで良いかなぁ〜」
「はい、山本魔梨子で良いです」
隆は、名前だけは梨子に似ているなぁ〜と思ったが、あまりの美しさに、声も出なかった。
「私は、父の仕事の都合で一年間だけ、東京から神戸に来ました。
家が、尼崎になったので、宜しくお願い致します」
「おう、隆!面倒みてやれや」
「あいつは、ダブリで、一応二歳も年長者やから、ちゃんとエスコートしてくれるだろう」、
「エスコートって、お姫様?!」皆んな小言で言っていた。
「まー、なんだ、!!あ〜尼崎も良い所だから、馴染めるようになってくれ!!」と、先生から挨拶があった。
魔梨子は、隆の横に座って、隆は教科書を見せた。シーンと静まる感とは、こんな感じなのかなぁ〜と皆んな緊張が張り詰めていた。
隆は冷静になろうとしたが、普段、一番クラスで肝の座ってる人間と言われてる隆も大したことなかった。
完全にビビってしまっていたのであった。
隆は小声で、「ハーフ?!」と聞くと、
「わからない、色々混じっているから」と言う。
父親は、日本人で技術者らしいが、母親は、ルーマニアや、グルジアやロシアや、南米まで混じってるらしかった。
隆は授業に全く身が入っていなかった。そりゃあ誰でもそうだろうって言う感じだったが、普段から授業に身が入ってない隆は、更に爆発的にぼーっと記憶がなくなりそうだったのだ。
授業が終わり、最初、遠巻きに観ていた連中も少しずつ、すり寄ってくると、どっかん記者会見になってしまっていたのだ。男子は、何処出身とか、親は何人?!とか、つまらない話から、女子はレイヤーなのとか、普段オタクで、まともに話も出来ない連中まで取り囲んでしまったのだ。
隆は、実は少し気になる事があったのだが、まあ、あまりの美しさに、どうでも良くなっていた。
その後、昼からの体育の授業は、尼崎の五月の体育系のイベントの為に、男子も女子も合同で、短距離の練習だった。もちろん男子は彼女の体操着に期待していた。
その期待通りの彼女の姿に、男子も女子もお花畑でスィーツの状態だった。
先生も、「お前ら何やってんねん」と言っていたが、いざ競技の練習になった途端に、彼女は鬼のようなスタートで、ターボエンジンを積んだポルシェの用に、爆音を優雅に奏で突っ走るのであった。バトンを受け取る女の子は、あたふたと、彼女が何処にいるのか判らず受け取れなかったのだ。
その時、隆は、少しだけ嫌な予感がした。
つづく〜