第二話 オーディション
オーディション
夕方、家に帰って、テレビをつけると大騒ぎになっていた。
女子高生惨殺事件の犯人が死亡していた。
急に発作を起こし、病院に運ばれたが、病院に着く頃には、死亡が確認されたらしい。
その後、顔面にはZの文字が浮き上がり、後頭部には、Xの文字が浮き上がったらしい。医者は死亡後に、恨みを持った人間が引っ掻き傷を作ったのだろうとか言っていたが、埋葬前に、傷は無くなっていたらしい。
不思議な事件として賑わっていたが、YouTubeや、ネットでは、正義の使者が現れたと大騒ぎだった。
隆は別に気にする事もなく、例の譜面を見ていた。隆は譜面を読めない事も無かったが、完全にコピーするのが嫌いだったのだ。
しかし今回はきちんと把握する必要があったので、Macに miniデータとして打ち込んで再生させた。
良い曲だった、完全なハードロックだが、メロディックでもあり、心を揺さぶった。隆はバンドも組んでいたが、トラブルや喧嘩も多いので、アコギ一本で弾き語る事も多かったのだ。
早速、ギター一本でコピーして、自分なりの表現を加えて、YouTubeにあっぷした。
それと、大手のレコード会社のオーディションにもデータをアップした。
これで、怪物野郎の力は、本当に及ぶのかと思ったが、公開した後、あっと言う間にYouTubeがバスってしまった。一週間で三十万回再生にもなってしまったのだ。
それからレコード会社から、オーディションの締め切り前から電話がかかって来て、デビューの話が舞い込んで来た。
しかし、二十歳を超えてるとは言え、まだ高校生なので、某歌手みたいに、アニメとかAIのキャラでデビューはどうかと言う提案も来た。とりあえず、東京から、スタッフが尼崎まで来ると言う、怪物のお陰様サマだった。
学校には、教職員だけに話す様に言われ、スタッフが行って直接交渉するとの話だった。あれよあれよと言う前に話が進み、冴えない隆は、いつのまにかイケてる高校生に早替わりしたのである。
しかし相変わらず、隆はマイペースだった。隆の家族も一回ぐらいは、まぐれがあるさ、と言うくらいで、そんなに騒ぎはしなかった。中学生の妹だけは、はしゃいで、
「学校でみんなにバラした〜い」と言っていたが、母親に、「面倒な事になるからやめて」と言われていた。しかし、反響が凄すぎて、何となくバレてる感だけは、少しずつ拡がって来ていたのだ。
結局オーディションは辞退させられ、他の人に賞は行ったみたいだが、ZXの曲は、もうプロとしてアニメの主題歌に採用され、隆が歌も歌う、と言う事に決定していた。
そんな中、今度は、超悪質な詐欺事件が勃発したのであった。
続く〜
つづく〜