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ホラー短編シリーズ

振舞えなかった料理

作者: 仲仁へび



 俺は、お腹をすかせた子供のために、こっそり余ったご飯をあげることにした。


 俺は料亭で見習いとして働いているんだが、近所にお腹をすかせた子供がいるんだ。


 まさか身近な環境にそういう子供がいるとはな。


 最初の内は見て見ぬふりをしていたが、どうにも可哀想で、俺は余ったご飯をあげる事にしたのだ。


 子供は喜んで食べてくれた。


 見習いだから今まで不出来な料理ばかり作っていたが、食べてくれた人が喜んでくれるのが嬉しくて、毎回元気が出た。


 でも、ある日子供が家で食べたいといってきた。


 俺は目の前で人が、俺が作った料理を食べるのを見る時間が好きだった。


 けれど、もしかしたら今までそれで落ち着かなかったのかもしれないな。


 俺は少し残念な気持ちになりながらも、子供にいいよといった。


 その日から子供は、俺があげた食べ物を家に持ち帰るようになった。


 けれど俺は、ある日その子供がビニール袋にたくさんの小銭を入れて歩いているのを見た。


 食べ物を買えるお金があるのに、嘘をついてせびっていたんだ。


 そう思った俺は、その日から子供を追い返すようになった。


 すると数日後。


 近所の家で虐待が発覚して、警察が大勢その家を訪れた。


 警察は太った母親と父親を逮捕して、牢屋に入れたそうだ。


 そして、家の中には、やせ細った子供の亡骸があったらしい。


 逮捕の数週間前から、その家の子供は、様々な場所で小銭を拾っている姿を目撃した。


 近所の人が話しかけたら、このお金をためていつもご飯をくれるお店に恩がえしするのだといった。


 俺は真実を悟って愕然とした。





 数年後。


 料理の店の店主になった俺は、一組の夫婦が来店したのを見た。


 記憶の中より少しだけ痩せたその夫婦は、笑顔で料理を頼む。


 俺は料理人としてお客さんをしっかりと持て成さなければいけないため、きちんと美味しい料理を振る舞った。


 どんな人間でも、店の中にいるのは皆平等にお客さんだからだ。


 美味しい料理に満足した夫婦は店を出ていく。


 俺はその夫婦の後をつけて、包丁を突き付けた。


 それはお前たちが食べるべきものじゃない。


 先代に免じて料理に毒を盛るような行いはしたくなかったから、お前達ではない顔を思い浮かべて作ったものだ。


 と言って。


 さっき夫婦が口にしたのは、


 小銭の入ったビニール袋を見る前に、俺が腹をすかせた子供に食べさせてやりたいと考えていたメニューだった。


 俺は無心になり包丁でさばく。


 さっき食べたもの返してもらうために。



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