百万回報復したサレ令嬢
裏切られた女の報復の話です
※ゆるふわ暴力表現
※書きたい話の書きたいところだけ
暇つぶしにどうぞ
「俺たちは真実の愛を見つけたんだ!」
「もう彼を縛るのはやめて!」
目の前でシーツを纏った男女がそう口々に叫んでいる。さっきまで情事に励んでいた2人の肌は汗ばみ、髪も乱れている。
男のほうは、私の婚約者だったはずの男だ。
女は、私の妹である。
それが、なに?
真実の愛だのなんだの言っているが、要するに浮気である。2人して大きな声で主張すれば罷り通ると思ったんだろうか。
「そう…2人とも、愛し合っているのね」
確かに婚約者の義務以上に親しくはなかったかもしれない。
でも、こんなのってあんまりだと思うのよね。
暖炉に近付き、火かき棒をそっと手に取る。
2人が呆然としている間に距離を詰めて、元婚約者の側頭部に思い切りそれを振り抜く。
がぼんと良い音がして、婚約者だったものがベッドから転がり落ちた。
硬いものを思い切り殴った腕はじんじんしているが、気持ちは不思議と高揚している。
悲鳴を上げて逃げようとする女の髪を掴んでベッドに引きずり戻す。
「い、いやっ!あやまるから!ころさないで!!ゆるして!!!」
「だめよ。愛し合ってるんでしょ?ならきっと来世でも巡り会えるわよ」
がぼん
はっと目が覚めると、そこは見慣れたベッドの上だった。
やってきたメイドに日付を尋ねれば、なんと「昨日」になっていた。
婚約者たちはきっと今日もどこかで逢瀬をしているだろう。
私は火かき棒を手に取って自室の扉を開けた。
使用人たちは不思議そうな顔で私を見るが、深くは追求してこない。
父はすでに仕事で屋敷から出ているし、母は自室にいるだろう。
妹は……どこだろうか。
屋敷にまだいるだろうか。
私に明日の記憶があるのならば、妹にもあるのだろうか。
妹の部屋を訪ねたけれど不在だった。
それならばと婚約者の家を尋ねれば、迎えてくれた執事さんが妹が来ていると言う。
婚約者である私が相手の家に訪問することを疑問になんて誰も思わない。
あっさりと通された部屋で、私はまたあの光景を見る。
「やっぱり夢じゃなかったのね」
「あ、あ……!」
またもや素肌で繋がっている2人の背中に火かき棒を振り下ろした。
目が覚める。ベッドの上だ。
メイドに訪ねた日付は一昨日になっている。
あら、一日ずつ戻っているのね。
まあいいわ。それでいい。
私はまっすぐ妹の部屋に向かい、魘されている妹の頭に火かき棒を振り下ろした。
目が覚める。ベッドの上だ。
火かき棒が手に馴染みつつある。
最初の日と比べても、火かき棒を重く感じなくなっていた。
力がついたのかしら?
時を逆行しながら力を増すなんてそんなことあり得るのかしら。
2人して逃げようとするので、先回りをした。
足を折られた婚約者が、ヒイヒイ情けない声をあげながら命を乞うている。
私の何がいけなかったのかしら。
私の何が、裏切るに値したのかしら。
私にこんな仕打ちをしていいとどうして思ったのかしら。
私の問に、彼は答えなかった。
答えられぬ頭なら潰してしまいましょう。
目が覚める。ベッドの上だ。
妹と婚約者は私と同じくこれからの、そして今までの逆行の記憶を有していることがわかった。
妹の部屋に入るなり、妹が命乞いを始めたからだ。
どうして人の婚約者に手を出したのかしら。
どうして私が彼を縛っているなんて世迷言を言ったのかしら。
どうしてそんなことをしていいと思ったのかしら。
私の問に妹は答えられなかったので、その頭を潰した。
目が覚める。ベッドの上だ。
目が覚める。
目が覚める。
目が覚める。
目が、覚めて、
いつしか、私は婚約者と初めて顔を合わせた日に戻っていた。
妹は、部屋から出てこない。
そういう【約束】をしたからだ。
もしも破ればまた一日【戻る】ことになる。
この日の私は美しい花の咲き乱れる庭で婚約者を待っていた。
一度目の私は薄い桃色のドレスを着ていたが、今回は少し気分を変えたくて淡い水色のドレスを着ていた。
いくら待ってもやってこない婚約者に両親が徐々に不穏な表情を見せ始める。
それでもきっと彼はここには来ないだろう。
私の心はあまりにも穏やかで、すこしぬるくなった紅茶が酷く美味しく感じた。
そろそろ部屋に戻ろうかと考え始めた矢先、家令が客人の来訪を告げる。
告げられた家名は婚約者のものとは違い、我が家よりも家格が遥かに上のものだった。
驚きながらも待っていれば、1人の美しい少年がこちらに歩いてくるのが見えた。
髪色も、瞳の色も婚約者とは違う。
丁寧に礼をする彼は一体誰で、何故ここに来たのだろうか。
何もわからないけれど、ここから先はきっと知らない【明日】が来る。
少しの期待と不安を胸に、私はカーテシーで彼を迎える。
今朝から自室に用意した火かき棒のことを想いながら。
書きたいところだけ書きました
読みたい人がいたら後日談なども書くかもしれません
感想等いただけるとよろこびます
ゆるふわ人物設定
▽主人公
女 令嬢
基本的に怒らない大人しい令嬢だったがキレたらやばかった。火かき棒を持っていると落ち着くようになってしまった。撲殺聖女になる可能性を秘めている。
▽婚約者
男 令息
婚約者の妹に手を出したカス。主人公のことを舐めていたらとんでもない目に遭った。
火かき棒と主人公に似た令嬢がトラウマになり自宅から出れなくなった。
▽妹
女 令嬢
姉の婚約者に手を出したカス。顔は可愛いが性格が終わっている。姉のことを舐めていたらとんでもない目に遭った。二度と部屋から出ないと約束するまで火かき棒でどつき回されたため部屋から出ない。
▽火かき棒
主人公の相棒。硬くて強い。イケメン。
▽謎のイケメン
男 なんかすごい家柄の令息
突然やってきた美少年。主人公の婚約者として現れたが目的は不明。多分何かを知っている。