第17話 スライムを瞬殺するシュヴァルさん
シュヴァルは強いよ。ちゃんと強いスキル持ってるからね。
シュヴァルは千鳥の隣で楽しげなオープニングトークを交わしていた。
カメラドローンの前でもノリノリ。スマホをチラチラ見てみると、コメント欄も楽しそう。
“シュヴァルさんもダンジョンに行くんですか!”
「もちろん、そのために来たんだよ」
“シュヴァルさんはダンジョンに行くのは初めてなんですか?”
「うん、初めてー」
“時々伸ばすのは何でですか?”
「そう言う癖だよー。ごめんね、癖ってなかなか治らないんだー」
“千鳥さんもダンジョンに行くんですよね?”
「そうだよ。ねっ、千鳥!」
「な、なに急に?」
突然話を振られるので千鳥はタジタジになる。
シュヴァルはそんな千鳥に優しくて、丁寧な口調で言葉を返す。
「千鳥もダンジョン行くよね?」
「う、うん。一応行くよ?」
「何で疑問系なの?」
それは千鳥にも分からない。
たまたま疑問形で返してしまったのだから仕方ないとして、とりあえずオープニングトークはそこそこにする。
「っと、掴みはOKかな?」
「多分良いと思うけど……もう行くの?」
シュヴァルは千鳥に尋ねた。千鳥も何となくだけで判断したものの、シュヴァルの視線がダンジョンをチラチラ見ていて緊張する。
心拍数が上がって呼吸が浅くなる。
緊張気味の千鳥だったけど、シュヴァルに背中を押される。
「ほらほら、ダンジョン配信者先輩、先導してねー」
「ちょ、何で私が先頭なの。ちょっとやめてよ、私は戦えるタイプじゃ……聞こえてるよね、シュヴァル!」
千鳥はシュヴァルに叫ぶ。
だけどニヤニヤした笑みを堪え切れず、千鳥の背中をドンドン前に押し出した。
完全に陰キャゾーンを追い出され、陽キャゾーンへと強制的に引き上げられてしまった千鳥に、もう抗う術など残されていないのだった。
カメラドローンを背にして、千鳥とシュヴァルはダンジョンを進んだ。
カメラドローンに搭載されたオプション装備で強力なライトがギラギラ光る。LED仕様なので熱くはなく、快適に進むことができた。
「結構地面が凸凹だね。もっと平らかと思ってたよー」
「う、うん。もしかしたらダンジョンが成長している証拠かも?」
ダンジョンは常に変化する。
そのせいで人がたくさん歩いたら、その分地面も隆起しちゃうのかもと考える。
納得のいく説明だったけど、そのせいで足を取られる。
千鳥達は壁との距離がある中、真ん中を堂々と歩いていた。すると何か小さな塊が見えたので、千鳥は声を上げて知らせる。
「あっ!」
「何かいたの? おっ、スライムだ!」
千鳥は立ち止まった。それに合わせて後ろを歩いていたシュヴァルも立ち止まると、千鳥の右肩から奥を覗く。
そこにいたのは青いプルプルしたゼリー状のモンスター。千鳥はもう遭ったことのあるスライムだった。
(戦いたくないなぁ)
千鳥は後ろ向きだった。
横に避けて先に行った方がいいなと思った千鳥だったが、頭の中に文字が浮かぶ。
[前から来るよ]
「えっ?」
「如何したの千鳥?」
何だか嫌な予感がした。
シュヴァルの声は耳に入らず、何か行動しないと思い声を上げる。
「ひゃっ!」
「うぉっ!」
千鳥は勢い余ってしゃがんでしまう。
するとシュヴァルの目の前にスライムが飛び込んで来た。
シュヴァルも一瞬驚く。まさか突然自分の目の前にスライムが飛び出してくるなんて。
ましてや千鳥は気が付いているみたいだった。この瞬間、「もしかして?」とシュヴァルは思ったが、その前に目の前のスライムを蹴散らす。
「そりゃあ!」
シュヴァルは装着したガントレットを武器に使う。思いっきりスライムを殴り付けると、強烈な右ストレートが炸裂した。
スライムは「プキュ!」と可愛い鳴き声を残し、破裂してしまう。
スライムの青い液体が凸凹の地面に流れ、コロンと魔石が一つ転がった。
「ま、魔石?」
千鳥は目の前に転がった魔石を拾い上げる。
立ち上がるとシュヴァルが「こんな感じかー!」と何かを掴んだ顔をしていた。
「あ、ありがとうシュヴァル」
「いいよいいよ。それより避けるなら先に言ってよ」
「ご、ごめんね……スライムは見えてたんけど、まさか目の前から飛び掛かってくるなんて……」
「それにしては逃げるの早かったけど?」
「うっ、ごめんなさい」
千鳥は友達に謝る。
するとシュヴァルは不服そうな顔をした。
「千鳥、謝らない」
「えっ?」
「謝るのは本当に何かした時だけ。謝り癖が付いてると楽しい人生にはならないよ」
シュヴァルは千鳥にそう教える。
千鳥もそれは分かっていたけれど、前もって教えたら良かった。本当、突然のことすぎて頭の中がおかしくなる。
もしかしてこれが能力? 千鳥は能力なのに能力じゃないと思い込んでしまっていた。
(本当私の能力って、具体的には何なの?)
千鳥は顔を覆いたくなる。
しかしシュヴァルは先に行きたがりたがっていたので、千鳥も進むことにした。
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