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19/27

19話 明日から、よろしくね……! ※

※視点変更あり。


本日もよろしくお願いいたします。




 ――新市街区が近づくと、街の灯りが増えてくる。錬金魔道具でまぶしいくらいに照らされた、人工的な魔力の灯り。


 でも、いまのあたしには、旧市街区のあの家のランタンの淡い灯りのほうがずっと暖かくて、恋しかった。


「もう明日(あした)……かあ。まあ、しばらくは大丈夫だよね? ギルドからもらったお金がけっこうあるし、荷物はこれで運べるし」


 ポンポン、と今日昼間レヴァさんからもらった収納魔道具のカバンをさわってみる。


「でも運がよかったなぁ……。これがなかったら、荷物ほとんど捨てなきゃだったかもだし……。えへへ。これもあたしの日頃の行いのおかげかも、な〜んて……」


 内心の不安を押しころすように、ひとり自分で自分を慰めてみたり。すると。


「アルケミ……!」


 ――いま一番聞きたかった男の子の声が、幻聴(まぼろし)じゃなく聞こえてきた。


「はあっ……! はあっ……! や、やっと追いついた……!」


「カノン……!」


 振り向くと、あたしの運命の人(パートナー)がひざに手をつき、息をきらせてそこに立っていた。



◇◇◇◇


 じゃり。


「カノン。ミニカちゃんはどうしたの?」


「サビーに頼んで泊まってもらった。まあ初めてじゃないし、あいつなら大丈夫だろ」


「そっか。それでわさわざ来てくれたんだ。えへへ。ありがと」


「ああ」


 ――アルケミ。あんた、何隠してるんだ?  


 そう聞くつもりだった。けど、いざとなりで微笑む顔を見ていると。ただ俺が来ただけで、心からうれしそうにしているのを見ていると。


 ――もう、それは言えなくなってしまって。だから代わりに、俺は。


「アルケミ。俺は、あんたの力になりたい」


「え……?」


 ただその想いだけをまっすぐに伝える。


 すると、アルケミは。


「ずるいなぁ……。ホント……」


 そうつぶやいてから、泣き笑いのような顔になって。


「カノン……。あたし……住むとこ、なくなっちゃった……」


 そう俺に、つぶやいた。



『ああ、ペルエクスさん。まったく、夜も帰らずにいったいどこほっつき歩いてたんだい。あんたを探してたんだよ。さっそくだけど、出ていってくれないかねぇ? あんた、王都にその人ありとまで言われるあの高名な錬金魔道技師のモストル教授にたてついたんだって? なんだってそんな馬鹿なことを……。とにかくあんたみたいなのがいちゃ、この賃貸(アパート)の評判が悪くなっちまうんだよ。あと三日くれてやるから、荷物をまとめて出ていっておくれ』


 竜退治の前の日。いろいろ準備をするから、とアルケミが俺の家に泊まらなかった日。数日ぶりに帰ったアパートの部屋の前で出くわした大家は、冷たくそう言い放ったという。


「アルちゃん、って呼んでくれてたんだよ? おばあちゃ……大家さん、いつもニコニコしてて。あたしのこと、孫みたいにかわいがってくれて……。それがいきなり、ペルエクスさん、って手のひらを返したみたいに、すごく、すごく冷たい目で、怒ったみたいな顔で……。あたし、怖くて返事できなかったぁ……」


 新市街区の中央広場。煌びやかにライトアップされた噴水の縁に座りこみ、アルケミは俺にぽつぽつとこぼした。ここ数日、独りでかかえていたものを、少しずつ。


 ――少しも変わらないように見えた。竜退治のときも。レヴァとティルの師弟と会ったときも。ついさっきあった俺の家での祝勝会のときも。


「あはは。だまってるつもりだったのになぁ……。でね、どうせしばらく宿暮らしなら、気晴らしもかねて奮発していい宿に泊まっちゃおうかなぁって思ってて……」


 でも、実際は、その胸には棘のような痛みが刺さっていて。誰にもそれを見せずに、笑ってやりすごすつもりで。


 ――だから、俺は。


「家、来るか? アルケミ」


「え……?」


 ――気がついたら、そう口に出していた。直後。ハッと我に返り、あわててつけ加える。


「あ、いや、えーっと、ミニカも喜ぶだろうし、それに俺たち、パートナーだっ……!?」


「ありがとう……! カノン……!」


 ふわり、と手が背中にまわされる。最後まで口にするその前に、アルケミがぎゅうっと俺に抱きついていた。


 ドクンッ……!


 魔道具で照らされた噴水がきらきらと飛沫を上げる。あまい体温と、におい。つつみこむようなやわらかな感触に、なんだかくらくらとしてくる。


「あ、アル――」


「えへへ……! 明日から、よろしくね……! カノン……! おやすみなさい……!」


 俺が行動を起こす前に、アルケミがぱっと体を離した。それからパッと立ち上がり、うしろに手を組んで頬を赤く染めてうれしそうに一度微笑むと。


 タッときびすを返して、人々の行き交う夜の中央広場の中を弾むように駆けていった。


「はあぁぁ…………!」


 一人とり残された俺は、力なくそのまま噴水の縁で長く長く息を吐く。


 ――きっと今夜は、ロクに眠れないだろうな、といまもうるさいくらいにドキドキと高鳴る胸をそっとそっとおさえながら。




というわけで、いっしょに住むことになりました。

妹つき。



さて、お読みいただき、ありがとうございます!

作者から、なにとぞお願いいたします!


本作の続きを読みたい! 応援したい! 続きが気になる! と少しでも思った方!

別連載のコミカライズ作「闇属性だけど脚光を」も読んでます!という方!


ぜひブックマークの2ポイントと!

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10ポイント!

一人最大12ポイントの応援をお願いいたします!

すでに応援いただいた方、誠にありがとうございます!


より多くの方に本作が届くように、なにとぞ作者にみなさまのお力添えを……!


それが何よりも作者のモチベーションになりますので!



次回「彼女(アルケミ)の夢」

それでは、また明日お会いできますように。

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