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ザ・インタビュアー 株式会社NURE

作者: トクタワカシヨ

 こんにちは、インタビュアーのトクタです。

 いきなりですが皆さん、「ぬれ煎餅」って好きですか。煎餅といえば固い食感が普通だけど、ぬれ煎餅はしっとり食感。初めて食べたときは慣れない食感に、なんじゃこりゃ~でした。皆さんもそうだと思います。しかし食べ進めるうちにクセになり、今ではすっかりはまってしまいました。

 そんな、ぬれ煎餅にヒントを得て会社を立ち上げてしまったのが、今回のインタビューの相手。固い煎餅をしっとり柔らかく仕上げたように、世の中の固いものを柔らかく加工することにビジネスチャンスがあるのではないかと考えたという。


 訪れたのは埼玉県草加市。奇しくも固い煎餅の代表「草加煎餅」発祥の地だ。東武伊勢崎線草加駅に着くとタクシーに乗った。行き先を伝えると東方向に発車し、ほどなくして綾瀬川を越え、いくつか角を曲がると倉庫のような建物が現れた。どうやら目的地に到着したようだ。料金を払いタクシーから降りると、社名の入った木製の看板を確認した。そこには墨字で「株式会社NURE」と書かれていた。


 倉庫のような建物は工場になっており、中には20人程度の従業員が工具を片手に汗を流していた。なにやら自動車を組み立てており、ときおり談笑する姿が見られた。

―なんか、いい感じだな。

 そんなことを思いながら、工場の隣にある事務所棟の扉を開いた。中に入るとすぐに受付があり、パーマをあてた50代半ばの女性が一人、パソコンを難しい顔で睨んでいた。

「すみません」

「はい」

 女性は俺に気付くと立ち上がって受付まで来てくれた。

「はい、なんでしょう」

「あのー、私トクタと申しまして、佐野社長とお約束しているんですが」

「トクタさん。あー、はいはい、主人から聞いてます。こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」

 女性は答えると受付を出て、奥に案内してくれた。「主人」と言うのだから、おそらく佐野社長の奥さん。事前に家族経営の会社だと聞いていたが、経理、総務みたいな事務仕事を任されているのかも知れない。

 女性の後に続き廊下を進むと、会議室、資材室、実験室、応接室が並んでいた。そして突き当たりの社長室に着くと、女性はノックもせずに扉を開けた。

「うわっ!」

 中から驚いた声が聞こえた。佐野社長だろう。

「あんた、お客さん、トクタさん」

「ノックしろよ、ノック」

「いいでしょ別に、さぁ、どうぞ」

「いいこと、あるかよ。お前はいつも…」

 あわや夫婦喧嘩という気まずい中、俺は社長室に入った。案の定、男性の顔は紅潮し、女性に向かってもう一言、二言、言いたそうな雰囲気だったが、さすがに客人の前で怒鳴ることもできず、ばつが悪そうな顔で俺を迎えてくれた。

「お茶入れてくるから」

「いいよ、ここにあるから」

「あ、そう」

 女性はそう言い残すと、バタンと扉を閉め部屋から出て行った。

「すみませんねぇ、ガサツな嫁で」

「いえいえ、そんな」

 男性は部屋の奥のデスクから立ち上がり、こちらにやってくると名刺を差し出した。

「社長の佐野です」

 俺もカバンから名刺を取り出し挨拶した。

「初めまして、トクタです。本日はお時間ありがとうございます」

 一礼すると、「どうぞ、おかけ下さい」とソファーを勧めてくれたので腰を下ろした。佐野社長は冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し、向いのソファーに座った。

 社長室は、入ってすぐに3人掛けのソファーが向かい合って置かれ、奥にデスクや書類を収めるキャビネットというレイアウト。デスクには何やら書類が散乱している。部屋に入った時から気になっていたが壁には油絵がかけられ、棚には鷲のはく製や壺、アンティーク調の時計、部屋の角にはゴルフバッグ、段ボールと所狭しに物が置かれ雑然とした雰囲気だ。

「散らかってるでしょ」

「あ、いえ」

 心を見透かされたようでびっくりした。

「いいんですよ。初めて来た人はだいたい同じ顔するんです。ごちゃごちゃしているなーって。嫁は片付けろって言うんですけどね。けどねこれがいいんですよ、この感じが。ごちゃごちゃしてると、色々とアイデアが浮かぶんですよね、不思議と」

「あぁ、なるほど…」

 俺はあいまいな返事をすると、佐野社長はペットボトルの蓋を開け、私にも「どうぞ、飲んでください」と促した。俺も蓋を開け一口飲み、しばらく雑談(ほとんどが奥さんの愚痴だったが…)し本題に切り出した。

「では、今日は御社についてお話を伺えればと思います」

「そうですね。宜しくお願いします」


 今回インタビューするのは株式会社NUREの社長、佐野正治さの・まさじさん。54歳。身長は170㎝そこそこだが恰幅がよく、ゴルフ焼けか肌は黒く、ぎょろっと大きい目が印象的だ。


―改めまして、本日は宜しくお願いいたします。

佐野 こちらこそ、宜しくお願いします。

―早速ですが、株式会社NUREのご説明を頂いても宜しいですか。

佐野 そうですね。簡単に言うと、世の中のあらゆるものを濡らして売る会社です。だから社名もNURE。立ち上げたときからシンプルで分かりやすく「ぬれ」にしようと思ってたんですが、「濡れ」って漢字にするか、平仮名、片仮名も考えたんですけど、従業員と話し合ってローマ字がカッコイイかって。

―外国人も読めますしね。

佐野 そうなんですよ。最近海外からも受注があってローマ字にして正解だったかなって思ってます。

―なるほど。それにしても、あらゆるものを濡らすという発想がユニークだなと思うんですけど、きっかけだはなんだったんですか。

佐野 きっかけって言うのか、なんて言うかあれですけど私、ぬれ煎餅が好きなんです。ここ草加じゃないですか、固い煎餅の本場のくせに、ぬれ煎餅か好きなのかよみたいに思うかも知れませんけど好きなんです。

―はい、私も好きです。

佐野 あ、そうですか、嬉しいですね。

―美味しいですよね。

佐野 やっぱり、あのしっとりした食感がいいんですけど、その〝しっとり〟っていうのにヒントを得て会社作ったんです。

―なるほど。けど、ぬれ煎餅が好きで会社作るって、まだピンとこないんですけど。

佐野 ですよね。ちょっと長くなりますけど、話さしてもらっていいですか。

―えぇ、お願いします。

佐野 ここって元々は親父が興したスコップ工場だったんです。農家さん向けだったり、家庭菜園用とか学校、幼稚園にも卸してたり。結構前ですけど埋蔵金ブームっていうのがあって、トクタさんは知らないかも知れないけどテレビ番組でそういうのが流行ってね、山行って掘る人が続出してスコップもよく売れてそこそこ儲かってたんですよ。けど、私が大学出てここに入って、ちょうど40歳の時に親父が亡くなって社長を継いだんです。そのころはスコップの生産も下火になってて、これからどうしようかって思案してたんですよ。

―そうなんですね。

佐野 よくあるじゃないですかドラマなんかで工場の経営が傾いたとき新しい発想で再起を果たしたみたいな。けど現実はそんな甘くねーよって。新しい発想もねえし、現状の仕事で精一杯だし、けど売り上げは下がるしってね。けどどっかで何か新しいことしなきゃってのはあって。

―ドキュメンタリーなんで見ますね、そういった再起もの。

佐野 でしょ。けど現実はなかなかね。けどね、そんな悶々してる時に、ぬれ煎餅食ったんですよ、お茶うけに。別に仕事さぼってるんじゃないですよ、ちょっと休憩ってだけで。

―(笑)えぇ、大丈夫です。

佐野 そもそも私、ぬれ煎餅好きなんですけど。そん時は何も感じなかったですよ。けどその後、手洗ってタオルで拭こうとしたとき、はっとしたんです。

―どうしたんですか。

佐野 手を拭こうとしたタオルが濡れてたんです。

―え、どういうことですか。

佐野 そのー、タオルって初めは当たり前ですけど乾いてるじゃないですか。

―はい。

佐野 使うと濡れるじゃないですか。

―はい。

佐野 けど多少濡れてても手を拭けるじゃないですか。

―確かに。

佐野 そこで思い付いたんです。乾いているのが当たり前だった煎餅を濡らして「ぬれ煎餅」ができたように、乾いているものが当たり前のものを濡らすことでビッグチャンスがあるんじゃないかって。

―なるほど。

佐野 ビッグチャンスがあるなとは思ったんですけど、かといって何していいか分かんないし工場もあるんでね。また悶々とするんですよ。そしたら今度は、雨の日があって洗濯物が濡れたときがあったんです。

―はい。

佐野 工場の横に自宅があるんですけど、夕方急に雨が降ってきて、嫁がすぐ取り込んだんですけど濡れちゃって。うち乾燥機もないし、近所にコインランドリー行くのももめんどくさいしって家の中に干してたんです。それで、その日風呂入って着替えようとして、しょうがないから部屋干ししてたTシャツを着たんです。

―乾いてたんですか。

佐野 濡れてました。

―それは嫌ですね。

佐野 いや、それが良かったんです。

―えっ。

佐野 濡れてるっていってもズクズクでとうどうしようもないわけじゃなくて、半乾き、生乾きっていうんですか、しっとりというか着れないわけじゃない程度で。それが冷っとしてね、なんか気持ちよかったんです。風呂上がりで体が温まっていたのもあるかも知れませんけど。

―そうなんですか。

佐野 で閃いたんです。これじゃないかって。この濡れたTシャツに可能性があるんじゃないかって。濡れたTシャツなんて普通嫌がると思いますけど、私がそうだったように気に入る人もいるんじゃないかって。よく聞くじゃないですか、どんな変わった趣味でも自分だけじゃない、他にも好きな人はいる、共感してくれる人はいるって。

―まぁ、確かに。

佐野 それで適度に濡れたTシャツの開発に取り掛かったんです。


 佐野さんは、濡れたTシャツを着たその日から開発に取り掛かった。タンスからTシャツを引っ張り出して洗濯し、ハンガーにかけて干し、時間の経過と乾き具合を調べた。生地、サイズ、色、柄による違いも調べるため、休日には様々なTシャツを買い求めに出掛けた。


―行動力凄いですね。

佐野 思い立ったらすぐ行動しないとね。猪突猛進なんて言われますけど。

―ちなみに奥さんの反応って、どんな感じだったんですか。

佐野 最悪ですよ、最悪。洗濯して干してって工場の一角でやってたんですよ。そしたらいきなり来て「なにやってんの」って。しょうがないから「見りゃ分かんだろ、洗濯だよ洗濯」って返して、そしたら「洗濯は分かるわよ、こんなに干してどうすんのって聞いてんの」って。

―はい。

佐野 まぁ、そうなんですけど。なんかカチンときちゃって「うるせーな。濡れたTシャツ開発して売るんだよって」って言っちゃって、そしたら「はぁ、バカなの」って。もうねぇ、旦那が一所懸命してることにバカなのはねーだろって。でまた「うるせー!」って言ったら、「好きにすれば」って帰っていったんですよ。もうなんかムカついて、それを機に開発に熱が入っちゃって、けど嫁さんの言葉でやる気になるのもまたムカついてってね。癪に障るというかね。


 そこで佐野さんは、一息ついてお茶を飲んだ。夫を妻が、妻が夫を悪く言うのはよくあること。余程であれば離婚するんだろうが、同じ屋根の下に住んでいるのだから、なんだかんだ仲が良いのだ。佐野夫妻もそうなのだろう。おそらく奥さんは佐野さんのことを熟知している。こういう言い方をすれば、佐野さんのやる気を引き出せると。俺もお茶を飲んでインタビューを続けた。


―それで開発は進んだんですか。

佐野 そうですね。工場の仕事して、晩飯食ってから洗濯機回す日が続きました。一回で十着ぐらい洗うんですけど、洗濯機は家にあるじゃないですか、洗い終わったら工場持って行って乾く時間測って、着るって作業を繰り返して。

―なかなかハードですね。

佐野 ハードでしたけど、徐々にデータもとれて順調っちゃあ順調でした。夜中にTシャツのことやって、工場で寝ちゃって、気が付いたら朝って日もあって、出社してきた従業員に起こされることもしょっちゅうでした。従業員には何やってるのか言ってなかったんで、また奥さんと喧嘩して工場で寝てんのかなぐらいに思ってたんじゃないかな。

―そうとうハードですけど、体大丈夫だったんですか。

佐野 んー、それがねー、駄目だったんですよね。やっぱ工場の仕事が最優先じゃないですか、従業員もいるんでね。好き勝手Tシャツのことばっかりもやってられませんしね。何回目か、また工場で寝ちゃって社員に起こされて、ちょっと熱あるなって思って、専務の吉野っていうのに「悪いけど午前中、休むわ」って言って家で横になったんです。そしたら起きれなくなっちゃって。そっから一週間寝込んじゃいました。

―えー、大変でしたね。

佐野 そうですね。まあ単純に過労ですよね。自分で言うのもあれですけど突き進んじゃうところがあるんですよね。で食欲もなくて、トイレ以外は布団で横になってました。そしたら寝込んで三日目かな吉野が来てくれて。あぁ吉野ってさっき言った専務なんですけど、親父の代からいて私以上に工場の知ってる人間で。私がガキの頃は一緒に遊んでくれたりしてね。親父が死ぬとき「息子を頼む」とか言われたみたいで、今は私の方が立場は上ですけど今でも私のこと「坊ちゃん」って呼びますし、お目付け役といくか、私も頼りにしてるんですけど。で吉野が心配してきてくれたんですよ。「坊ちゃん、大丈夫ですか」って。

―そりゃ心配になりますよね。

佐野 まぁ工場は吉野がいてくれれば問題ないんですけど。そしたら吉野が意外なこと言い出して。「良子さんが、えらく心配してますよ」って。

―リョウコさん。

佐野 あぁ嫁です。良子っていうんですよ。良い子と書いて良子なんですけど、どこが良い子なんだって話しなんですけど。

―奥様が心配しているって吉野さんが伝えに来てくれたんですか。

佐野 そうなんですよ。何でも嫁さん、工場行って吉野にちょっと様子見てきてくれって言ったらしく、私が行ったらまた言い合いになるからとか。それと何か夜中に頑張って作ってるって言ったらしくて、吉野からも何やってるんですかって聞かれて。それでTシャツのこと全部話したんです。

―そしたら吉野さんなんて。

佐野 水臭いじゃないですかって。完成したら言うつもりだったんですけどね。そしたら吉野が手伝うって。工場の皆にも声かけるって。吉野も言うんですよ、工場の皆も何か新しいことしたがってるって。で「坊ちゃん、一緒に濡れTシャツ完成させましょう」って言ってくれて、そしたら私感動しちゃって、何か泣いちゃったんですよ。

―いい話じゃないですか。奥様も心配してくれてたんですね。

佐野 んー、まぁどうでしょうね。


 佐野さんの体調が戻ると、従業員全員による濡れTシャツ作りが始まった。工場はやりながら、合間を見つけて手が空いている従業員がTシャツを洗濯、干す、濡れ具合の測定した。


佐野 なんかね、従業員の顔が生き生きしてたんですよね。それが嬉しくてね。親父から会社継いだはいいけど業績は下がる一方で、どうしたらいいのか考えながら仕事してたんですけど、従業員も一緒だったんだなって。何か新しいことしたいって気持ちがあって、けど何していいか分かんないって。やりがいのある仕事って難しいと思うんですけど、社長としてそれを見せてやれてなかったなって反省して。けどあいつらが、濡れTシャツに取り組む姿見て、あぁこれなのかもなって思えて。

―やりがいのある仕事ってことですか。

佐野 そうです。やっぱ社長として従業員の生き生き働く姿って、嬉しいですよ。まぁ、それが私にとってのやりがいですかね。

―で、濡れTシャツ作りはどうなったんですか。

佐野 はい。完成しました。濡れ具合を確かめながら従業員と試着を繰り返して、最終的に「30NGP」が最適という結果になりました。

―すみません、30NGPってなんですか。

佐野 あー、すみません。開発を進めるうちに使い始めた濡れ具合を表す単位でして、濡れ、具合、ポイントの頭文字を取ってNGPです。その後もNGPを基準にして商品を開発してます。

―なるほど、そうなんですか。ちなみに、そのNGPってどういった測定方法なんですか。

佐野 あー、せっかくなんですけど、それは企業秘密でしてすみません。

―何か特別な機械で測定しているとか。

佐野 んー、そうですね、機械、んー、機械といえば機械かな。すみません、ここまでで。

―分かりました。こちらこそすみません。それで完成したTシャツは、どうされたんですか。

佐野 そうなんです。完成したはいいけど、どうしようかってなって。そしたら若い従業員が渋谷のセレクトショップに知り合いがいるって。駄目もとで、そいつと私で試作品を持って行ったんですよ。

―へー、いいですね。セレクトショップはどんな感じでした。

佐野 どうせ駄目だろうと思ったんですけど、すごく気に入ってくれて「うちで売らせてください」って即決でした。


 昨今、アパレル業界も不況にあえいでおり、今までにないデザイン、機能性を追求した商品で活性化を図ろうとしていた。そんな中、佐野さんが作った濡れTシャツは、Tシャツは乾いたものだという固定概念を覆す画期的商品だということでセレクトショップは、その場採用を決めた。そして濡れTシャツはヒット商品になり、飛ぶように売れた。


佐野 もう、大変ですよ。注文は殺到するは、作るのが間に合わないで。大まかに言うと濡れTシャツは、Tシャツを濡らす、30NGPになるように干して、一枚ずつ畳んで個包装にするんですけど従業員も限られてるでしょ、ほんと大変で。

―嬉しい悲鳴ってやつですね。

佐野 そうですね嬉しかったですね。濡れTシャツが売れたというより、自分と同じ半乾きのTシャツを好きだったという人がこんなにいたのかってことが嬉しかったですね。濡れTシャツが売れたことで、従業員たちとも相談してスコップ工場を廃業し、思い切って「株式会社NURE」にしました。


 佐野さんは、「株式会社NURE」を立ち上げ、スコップ工場で培ったモノづくり精神で次々にヒット商品を生み出す。濡れTシャツに続き、濡れスエット、濡れコート、濡れデニム、濡れセーター、濡れスニーカーなどの濡れアパレルシリーズ。濡れタンス、濡れ布団、濡れ座布団、濡れ皿、濡れ包丁、濡れ鏡、濡れキッチン、濡れ洗面所、濡れ風呂などの濡れ住宅シリーズ。濡れ有機ELテレビ、濡れ冷蔵庫、濡れ洗濯機、濡れイヤホン、濡れスマホ、濡れエアコンなどの濡れ家電シリーズ。そして佐野さんの発想の原点「濡れせんべい」を発展させた濡れ食品シリーズとして、濡れポテトチップス、濡れチョコレート、濡れチーズ、濡れパン、濡れ高野豆腐、濡れ乾燥ワカメなどなど。どれも乾いていることが当たり前のものを、佐野たちの技術によってしっとり濡らすことで消費者に新たな気付きを与えた。


佐野 私としてもこんなに濡れた商品に需要があるとは思いませんでした。会社を立ち上げたときにスローガンに掲げたのが「すべてのものを濡らす」でした。世の中には乾いたものが無数にあります。それらすべてを濡らすつもりで日々仕事をしています。

―大きい夢ですね。

佐野 そうですね。工場を廃業したときは親父にも悪い事したなと思ったんですけど、今は思い切って会社作って良かったと思っています。

―ちなみに今は何を作っているんですか。

佐野 今はですね。濡れ電気自動車ですね。

―濡れ電気自動車ですか。

佐野 えぇ。こちら来るとき工場で従業員がいたと思うんですけど、そこで作っているのが濡れ電気自動車です。

―あぁそういえば自動車組み立ててました。あれが濡れ電気自動車だったんですね。

佐野 そうです。

―実際には、どういった自動車なんですか。

佐野 電気自動者ってエコで注目されてるじゃないですか。自動車メーカーがこぞって開発してますけど、うちも参入しようと思いまして。ある意味、これまでの集大成と位置づけ、電気自動車のすべてを濡らそうと。今のところ濡れ車体、濡れエンジン、濡れシート、濡れハンドル、濡れアクセル、濡れブレーキ、濡れガラス、濡れワイパー、濡れライト、濡れメーターと一通りできており、それらを組み合わせ試作品は出来上がっています。

―電気自動車までも濡らそういう発想が素晴らしいですね。

佐野 ありがとうございます。ほぼ完成してまして、あとは動力だけなんです。

―動力。

佐野 はい。濡れ電気自動車なんで、動力の電気も濡らしそうと「濡れ電気」を開発中なんですが9割方できてます。


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