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【連載版】儂、国王なのに国を追い出されたのじゃが ~第一王女の奮闘記~  作者: Konji
第1章 クーデター発生から玉座奪還まで
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5.王城奪還

これで、第1章の完結です。

まず一つの形ができました。

5.王城奪還


今日は王城奪還の日。父上と最終確認をする。

私は城下町に入り、状況を確認しながら城に向かう。

父上は、直接城にテレポートしてヤツと対峙する。

影によると、城は誰もおらず、執務室にヤツがいるらしい。

大事なところは仕掛けにより閉鎖空間となっているから、大事なものは守られているだろう。


確認が取れたところで、私は郊外にテレポートする。ここからは「冒険者リルちゃん」で城下町に入るのだ。

城下町に入るところで門番さんに止められた。え、城が稼働しておらず人がいないのに?

聞くと、冒険者だそうだ。城下町で好き勝手暴れていた兵士をぶん殴り、追い出し、「王様が帰ってくるまで俺たちがこの町を守るんだ」と冒険者ギルドの会員全員が立ち上がった。級なんて関係ない。誇りをもって一年半守り通してきたそうだ。ありがたい。

だが、門番さんの私に対する目つきが冷たい。なにかあった?わたし、悪いことしてないよ?


中に入ると、いつも通りの喧騒が聞こえてきた。以前と全く変わらない雰囲気だ。

果物屋のおばちゃんに声を掛けられる。

「あら、リルちゃん、久方ぶりねえ。どうしてたんだい。」

「遠くに冒険に行ってたんですよ。で、今こちらに来たところです。」

「そうなのかい。ところで、国王はいつお戻りになるんだろうねえ。」

「さすがに長いので、そろそろじゃないんですか?」知ってるけど、ごまかす。

「早く戻ってきてほしいねえ。そしてこの様子を見てほしいよ。何も変わっちゃいないだろ?」

「そうですね。すごいです。」

会話ははずむが行きたいところは他にもある。一応買い物をして移動する。

行きたいところとは、冒険者ギルドだ。絶対ねちねちと責められるが、情報を得るためには致し方ない。


冒険者ギルドに入ると、視線が私に突き刺さる。

「赤の冒険者リルだ」「あいつ、もぐりだろ?今更何しに来たんだ?」「力はあっても肝心な時いないんじゃなあ」「王様が逃げた当日、あいつを見かけたぞ」「しっぽを巻いて逃げたんじゃないの?」「ほんとは何も力がないんじゃねえのか?」門番さんの私に対する態度はそういうことか!

受付に行き、お姉さんに今までの状況を聞く。やはり、門番さんが言っていたとおりである。

そして、やはりお姉さんからもねちねちと攻撃された。しょうがない。もぐりでも冒険者なのだから。

最後にお姉さんから、

「あなたが来たら、ギルドマスターが話があるって。2階のマスター室にいってちょうだい。」

と、横の階段を指さす。仕方ない。会いに行かないと。

2階に上がり、マスター室のドアをノックする。

「あいてるぞ。」との声。

「失礼します。」といい、入室する。

そこには、がたいのいいおっさんがいた。冒険者の経験を重ね、最終的にギルドマスターを任された男。威圧感を感じる。

「まあ、そこの椅子に座れや。」と言われ、「失礼します。」と椅子に座る。

「下では冷たい視線と誹謗中傷を浴びせられたと思うが、今回のお前の行動の結果だ。文句はないよな?」

自分が王女であることを隠しているんだから、しょうがない。うなずく。

「ところでだ。お前さんを最後に見たのはクーデター当日。それから今日まで誰も見かけていない。俺は因果関係があると思っている。そして、お前がもぐりであることもな。」

このギルドマスター、どこまで気づいている?

「一体お前は何者だ?俺の予想では…」

「そこまでです。」と話を止める。

瞬時に結界を張る。気配を感じさせない、声を漏らさない結界だ。

「結界を張ったことについてはお許しください。その先はとても大事なことであり、私の自由を奪うものです。状況によっては…」

冒険者ギルドごとつぶす!

その気配を感じ、ギルドマスターは冷や汗を垂らす。今後の答え方によってはとんでもないことが起こる。自分よりもこの娘が強いことを本能で感じていた。腕力ではない。トータルでの強さだ。

「私とあなただけの関係です。あなたはどのように予想されたのでしょうか?」

「王宮に雇われた冒険者だと始めは思っていた。しかし、それではもぐりである必要がない。事情を話すればS級の討伐依頼もこなせるだろう。でももぐりをやめない。そして、王と一緒にいなくなっている。王を守るものか、王の周辺者か…」

なかなかのものである。言葉も選んでいる。では、それに敬意を表しましょう。

「いいところまで来ましたね。今までの応対に敬意を表して答えましょう。私の正式な名はリルリアーナ、第一王女です。王女が討伐依頼を受けることはできない。公務を抜け出すことはできませんからね。ですからランクに縛られたくないのですよ。」

ギルドマスターはびっくりしたが、納得してうなずいた。

「私はあくまでも今の応対に敬意を表したのです。もし、この秘密を誰かに漏らしたならば…」

冒険者ギルドをつぶすぞ!

しっかり威圧を掛けてから、結界を解く。

「では、誠意ある対応をお願いいたします。」

「わかった。今回のことは墓場まで持っていこう。」

そうしてマスター室を出た。


1階に降りるとさっそく受付嬢が絡んできた。

「ギルドマスターにこってり絞られてきたんでしょ。どうだった?」

私はあいまいな笑みを浮かべる。

そうこうしているところに、素行の悪い冒険者がやってきた。

「おい、リルってやつよ。今まで調子に乗りあがって。今回のことで皆が迷惑してるんだ。俺がその根性を鍛えなおしてやる。」

といって殴りかかってきた。おいおい、ばかか?脳筋か?

殴ってきた手をつかみ、上手に力の向きを変えくるんとひっくり返すように投げる。びたーんっと背中を床に打ち付ける男。

周りの冒険者も立ち上がり、一触即発となった時、2階からギルドマスターが下りてきた。

「皆の者、そこまで!」

周りの男たちは、なぜだ、こいつが悪いんだろ?といっているが、それを無視してギルドマスターが私に話しかけてくる。

「リル嬢の言い分は聞いた。どうしても王都を離れなければならない用事ができたことをな。こいつらは一年半頑張って王都を守ってきたから、どうしても冷たく当たってしまうのだろう。どうか許してもらえないだろうか。」

とわざわざ私に頭を下げる。冒険者連中の前で頭を下げることで、今後の憂いを断ち切ろうとしてくれている。

「私も事情があったのでお互い様です。今後は以前のような対応をお願いいたします。」

ギルドマスターが小娘に頭を下げたことでぽかんとする冒険者連中と受付嬢。次回は普通に対応してくれるといいな、と思い、冒険者ギルドを後にした。


------------------------------


俺は直接王城にテレポートした。場所は王宮の隠し部屋だ。

すぐさま気配探知の魔法を使う。儂もリルと同じように無詠唱だ。でないと様々な魔法が使いこなせない。ただし、リルほど魔力がないので、ものによっては発動に時間がかかったり、集中するために言葉を発したりするが。

反応が執務室に一つ。おそらくヤツだろう。

言葉遣いが戻っているが、他人はいない。これでいいだろう。


ノックをせず、バンっと執務室の扉を開ける。

びっくりするヤツ。

「弟、お前」

「城を返してもらいに来た。」

簡潔に答える。ヤツを見ると、身体はクタクタな様子で、目は濁っている。リルにしっかり心を折られたらしい。

それでも誰もいない、活動も休止している城に固執するのだからよっぽどだ。

「俺に王の座を渡せ。」

「お前には王の資格はない。いっただろう?城を返してもらいに来た。」

「おのれ~」

逆上して大剣を振りかぶりつっこんでくるヤツ。心を折られた今、俺にはそんな大剣は届かない。

俺は持っていた剣を抜き、ヤツの大剣を持った腕を切り落とす。

この剣は「伝家の宝刀」。代々王に受け継がれてきた王剣だ。王が直接裁きをするときに振るわれる。

過去に何回使われたかしらないが、今回は俺が引導を渡したくて使用した。

もう一本の腕も失ってうずくまるヤツ。

影を呼び、血止めと処刑まで生かすよう指示を出し、連れて行ってもらった。

これで終わった。

ところで、父は何を思って兄を放逐したのだろうか。更生を願っていたのだろうか。

でも、父はこの世にはもういない。真相は闇の中である。

最後はあっさりだったが、一年半のことを思い出しながら、しばしたたずんでいた。


------------------------------


私は、城に向かった。

城の入口は開け放たれているが、冒険者の門兵がいたので、別のところに向かう。

城に入る隠しルートだ。今回脱出には使っていないが、過去に内緒でお忍びで使っていたりしたのだろう。いくつかのルートがある。

城に入ると閑散としている。誰もいないのだから当然だ。周囲を見渡すと装飾品が見当たらない。略奪されたのだろう。

でも、見えるところのものは、定期的に変更している。城の活動を止めた時、大事なものは隠されたはずだ。また、いくつかの部屋は封鎖される。装飾品については何とかなるんじゃないかな?

気配探知を使うと、執務室に反応があった。多分父上だろう。

執務室に向かうと、やはり父上だった。向こうを向き、ただただじっとたたずんでいる。手には抜き身の伝家の宝刀が握られている。王として自分でケリをつけたのだ。


「父上!」と声を掛ける。

「おう、リルか。ちょうど今ケリをつけたところじゃ。もう問題はない。」

「そうでしたか。城下町を見てきましたが、冒険者たちが張り切って治安を守っておりました。クーデターを起こした悪漢を追い出したのも冒険者です。」

「なら、報奨金をださないとな。」

「それなら冒険者ギルドのギルドマスターに私から伝えましょう。城の入口も冒険者が守っておりました。皆が城に戻ってこれるようにとその件もお願いしておきます。」

「よろしく頼む。」

「ところでですが、城の入り口を封鎖されているのに、ヤツはどうやって城に入ったのでしょうか?」

「素直にテレポートを覚えていたのではないかと思う。何かの必要に駆られてなら、ヤツも覚えるじゃろ。」

そんなもんなんだろうかね。でも、テレポートでしか出入りできないので、やはりそう考えるのが妥当だろう。

「では、私は王宮のロックを解除してきます。父上は待っている4人を連れてきてください。」

「わかった。」


そして私は部屋を出て、隠し部屋へと向かう。

脱出するときは、玉座を動かした段階で、城のロック機構が自動で働くようになっていた。

復活させる際は、隠し部屋のシステムを使い、一つ一つ解除しないとならない。面倒くさい。

今回復活させるのは私たち王家の建物、王宮だけとする。その後は今後のことを決めてからだ。

稼働させたら王宮に向かう。面倒なので、そのまま隠し通路を使う。


王宮に着いて、リビングに向かうと、皆が待っていた。

「リルちゃん、大丈夫だったの?」

「私は戦ってません。城下町の様子を観察してきただけです。ケリをつけたのは父上です。」


そして、今後のことを話し合う。

王宮関係者については、様々なつてを使って王城奪還した旨を伝える。もうすでに決行日は伝えていたものの、成功したことも伝えないと戻ってこれないからである。

王城のシステムは今日のうちに全てロック解除することにした。外から悪者が入ってくることは今のところないからである。冒険者の守りもあるしね。


今後の方針が決まり、さっそく行動に入る。

私は、隠し部屋に向かい、全てのシステムを稼働させていく。一つ一つなので面倒くさい。

玉座は、下からせりあがり、元の位置におさまる。よくできたシステムだ。

なんとか全て稼働させると、次に向かうのは冒険者ギルドだ。


隠し通路を使い、城の外に出る。そのまま冒険者ギルドに向かう。

冒険者ギルドに入ると、中にいた人々の目線がこちらに向かう。しかし、先ほどの件があるので、小声でコソコソ言っていても、直接文句を言いにくるのはいない。

受付嬢に、ギルドマスターに会いに来た旨を伝え、返事を待たずに2階に上がる。

受付嬢がおどおどしていたが、しょうがない。元に戻るまでには時間がかかるだろう。

ギルドマスター室のドアをノックし、返事を待ってから入室する。

「おう、リル嬢か。先ほどから時間がさほど立っていないが、どうしたんだい?」

「少々失礼します。」といい、気配消しと防音の結界を張る。先ほどの件があったので、理解はしてくれるだろう。

「失礼しました。今回は、国王の言葉をお伝えに来ました。そして、お願いもあってきました。」

「難しい話ではないだろうな?」

「いえ、そうではありません。国王は、この度の冒険者ギルドメンバーの大活躍をほめており、感謝しております。おかげで一年半、城下町を安定化させ、住民の方々の生活を守ったと。そこで、冒険者ギルドに報奨金を支払うとのことです。」

「なんだと。」びっくりするギルドマスター。

「全てが片付いてから、ギルドマスターを王城に呼びますので、心しておいてください。」

「…それを伝えに来たのか?」

「もう一つ、お願いがあります。王宮関係者がこれから王城に戻ってきます。城下町入り口および王城入口の冒険者にその旨をお伝えください。もう少ししたら騎士団も戻ってきますので、そこで引継ぎをしましょう。」

「何もかも至れり尽くせりで助かるよ。リル嬢。王城との懸け橋を担ってくれるだけで喧嘩にならずにスムーズに引継ぎができる。」

「それは、先ほどのあなたの応対の結果です。これでも敬意を表しているんですよ。」

「それはありがたい。ところで、これだけの話になったということは…」

「はい、国王が偽王を倒し、王城を奪還しました。」

「それは待ち望んでいたものだ。皆に伝えてもいいか?」

「私からということがわからなければ、かまいません。どこからか連絡が入ったことにでもしてください。そのための王城関係者の帰還ですから。私が帰ってだいぶたってから報告してくださいね。」

「わかった。約束を守ろう。自分が持っている裏ルートから連絡が入ったことにしよう。マスター室で受け取れるものにしておけば、外から人が来なくとも情報が流せる。」

「ありがとうございます。」

その後、多少雑談をし、マスター室を後にする。


1階に降りると、1階にいた皆の視線が私に向けられるが、やはり文句を言ってる人はいない。

受付嬢に挨拶をし、冒険者ギルドを後にした。


外に出て、まっすぐ王城に向かう。ふと、王城の天辺を見上げる。天辺では、ずっとしまわれていた旗が出され、風にはためいておる。知る人は、これだけで王城が再稼働したこと、すなわち国王が戻られたことがわかる。


王城奪還は果たされたのだ。


いかがだったでしょうか。

第2章も全て書き溜めたので、そのまま連続投稿としますね。、

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