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【連載版】儂、国王なのに国を追い出されたのじゃが ~第一王女の奮闘記~  作者: Konji
第1章 クーデター発生から玉座奪還まで
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4.来訪者たち

リルちゃんたちに来訪者が複数きた。

いったい誰でしょう。

そして、どうなるの?

4.来訪者たち


決行日は決まったものの、思ったより期間がある。

ジョルジュの世話をしつつ、日々を過ごしていく。

ある種、こんな日が続けばいいのに、と思ってしまう。


ジョルジュ誕生から5か月経ったある日、私は家を出て、自主訓練に励んでいた。

服装は冒険者の服。やっぱりこれでしょ。

まずは刀の振り。木刀を取り出し、基本形から始め、次に応用編。

我流ではあるものの、前世の記憶を総動員して考えたものだ。

少なくとも、私を形作るものであり、私を守るものでもある。


次に、木刀をアイテムボックスにしまい、徒手空拳の練習。

これも我流だが、格闘技なら、様々なゲームがある。型を作るのはまだ楽であった。

ある程度納得できる形になったところで、いたずら心が芽生えた。

どこまで連続技がつながるか。実践ではつかえないが、つい遊び心が芽生えた。

移動に攻撃に移動に連続攻撃。ここでバランスを崩すので、魔法の風を体にあてて体制を整え、ついでに移動する。さあ、どこまでつながるかな?

最後にジャンプして空中で一回転し、そのまま着地。自分的には10点満点だ。

そのまま残心して呼吸を整えていると、拍手が聞こえてきた。恥ずかしい、見られていた。


「お嬢ちゃん、なかなか面白い動きをしていたね。そして優雅だった。」

声を掛けてきたのは初老の老人。

噓でしょ?ただただ技をつないだだけだよ。

「これは自分がどれほどのことができるか挑戦していただけで、実践では使えないものです。」と答える。

「それがわかっているとはなおのこと興味深い。儂は拳王といって、拳を極めたつもりの男じゃ。世界を渡り歩いているが、ある時こちらから強い気配を感じての、やってきたというわけだ。」

え、私につられたの?私なんてまだまだだよ。14歳になったばかりだし。

「それでじゃ、儂と仕合いをしようではないか。」

え、死合い?

「殺し合いではなく、立ち合い。とはいっても、いいものが入るとろっ骨が折れたりはあるかもしれん。どうだ、仕合ってみんか?」

「わかりました、拳王さん。私もどれほどの力があるか試したいです。ただし、拳王さんに合わせ、素手で応対します。また、術や道具は一切使いません。己の拳だけで勝負いたします。」

「よくいった。今まで仕合ってきた中で最高の内容だ。では始めようかの。」

「国王が娘、第一王女リルリアーナ、いきます。」しっかりと名乗ろう。

言った瞬間雰囲気ががらりと変わる。私も構え、戦闘態勢に移行する。空気がピリピリする。久しぶりの感覚だ。

拳王さんが動いた。こちらの緊張をほぐすかのような攻撃。しっかりさばき、反撃を試みる。

その拳は受け止められ、逆に反撃しようとしてくる。

攻守が入れ替わる中で、私は唇がつりあがってくるのを感じる。色々な技を試してみたくなった。

拳王さんの拳をかいくぐり、後ろに回り込んだ瞬間。背中で拳王さんの背中を思いっきりドーン!

はじかれる拳王さん。今までにない攻撃にさぞやびっくりしていることだろう。

鉄山靠って実際にある技なんだよ。ゲームの中の技じゃないんだよ。


それからも攻守が入れ替わる。私の拳は当たっているはずなのだが、どれほどのダメージが入っているかはわからない。私もいいものをもらったりして痛いが、ろっ骨が折れたり、内臓にダメージを負ったりはしていない。

そうこうしているところで、私から仕掛けてみることにした。

拳王さんの服を両手でつかみ、自分が後ろに倒れるのに合わせ、上手に体重操作をして倒れこませる。

そしておなかの部分を蹴り飛ばす。巴投げだ!

でも感触がおかしい。そしていつの間にか私の両手がはずされている。

何か仕掛けるのを察知し、拳王さんは自分で飛んだのだろう。見ると離れたところに着地する姿が見えた。

急いで起き上がるが、さきほどまでのピンと張りつめた空気は霧散していた。

「すごいのう、お嬢ちゃん。これだけの時間儂と仕合うことができるとは。」

「そんなことありません。結構いいのをもらっておりましたから。」

そういうと、その場に崩れこむ。思ったより消耗していた。

「そんなことはないぞ。儂と長時間拳で仕合えたのはお嬢ちゃんが初めてじゃ。」

そういいながら拳王さんが近づいてきて私の体をマッサージしてくれる。とても気持ちいい。

「いい筋肉をしておるな。柔軟性がある。最近の若造は硬い筋肉を作ろうとして困る。」

わかります。戦いに使える筋肉は硬いとだめなんです。

「よしっと。儂はまた旅を続けることにしよう。今日仕合った縁じゃ。このメダルをあげよう。」

「これは?」

「拳王のメダルって言ってのう、いい仕合いを行ったものにだけ渡すことにしてる。でも嬢ちゃんが初めてだ。」

へえ、そうなんだ。

「嬢ちゃんはまだ動けないじゃろう。その間におさらばさせてもらう。他の人とは会いたくないのでな。さらばだ。」

そういうと、拳王さんはさっといなくなってしまった。

今までの時間がなかったかのような錯覚を覚える。しかし、身体は拳王さんと仕合ったことを覚えている。そして手元には拳王さんのメダルがある。

帰りが遅いので気になったレイモンドが迎えに来るのが見える。これを感じて立ち去ったのだな。


レイモンドに支えてもらいながら家路に着く。まだ疲労感が取れないので、リビングの椅子に誘導してもらい、皆が集まってから先ほどの件を説明する。

「拳王が放浪しているのは聞いておったが、まさかリルと仕合うとはのう。」と父上。

「しかも実力を認めさせるとは。」

「ところで父上、このメダルは本物ですよね?」といって父上に見せる。

「ああ、間違いない。ある時拳王が帝王とお会いした時、認めたものに渡すメダルが欲しいといったそうじゃ。そこで帝王がデザインし、メダルいくつか作成して拳王に渡したそうじゃ。そのデザインを見せてもらったことがあるが、間違いない。」

「お嬢様が拳王に認められたってこと?信じられない。」と宰相。わかる。自分でもそうだもん。

「なかなかないものじゃから、大事に取っておくのじゃ。」と父上からメダルが返される。

大事にアイテムボックスにしまう。拳王さん、いい仕合いでした。



逃亡生活1年と6か月。そろそろ王城奪還だ。

そんなことを考えながら、今日も自主訓練を行う。

訓練が終わって一休みしているところに馬車がやってきた。何者?

私を見つけると、一番前にいた騎士が私に話しかけてきた。

「おい、小娘!」え、私のこと?

「こちらの方に国王陛下が隠れ住んでいるという情報が入った。なにか知らぬか。」

むかっ。何を偉そうに。あんたが偉いんじゃなくて、バックが偉いんでしょうに。

「小娘呼ばわりは失礼です。そんなあなたには、どんな情報を持っていても答えることはありません。」

「なにを小娘が、いい気になりおって。」と武器を構えてくる。本気か?こいつ、ばかか?

一触即発のムードになりかけたところで、馬車の中から声がした。

「失礼した、娘よ。こちらの聞き方が悪かった。私が直接降りて説明をしよう。」

「陛下、それは…」と別の騎士。

「いいのだ。私が顔を出すことで事態が変わるかもしれないからな。私はなんでもするよ。」

といって本当に馬車から降りてくる。

顔を見た瞬間、私はすぐに立ち上がり、淑女の挨拶をする。

「帝王様、お久しぶりです。国王が娘、第一王女のリルリアーナでございます。」

冒険者の服装では格好つかないが、気持ちは伝わったであろう。

最初声を掛けてきた者は眼を見開き、口をパクパクさせている。

「おう、リルリアーナ姫であったか。覚えておるぞ、国王は息災か?」

「はい国王をはじめ、家族全員無病息災でございます。」

「陛下、こんな冒険者の小娘の言うことを信じるのですか?」

先ほど帝王様を止めていた騎士が進言している。普通、偉い人同士、顔合わせを済ませている。その言葉は帝王に対する侮辱だ。

「ほお、じゃあ、この娘と仕合ってみるか。」と帝王。様子を見ると、ここまで連れてきたのも騎士のテストのようだ。もう不合格だけど。

「ところで帝王様、どこまでしてよろしいのでしょうか。」と尋ねてみる。

「どこまででもいいぞ、死ななければな。」と帝王。ボコボコにしてよいとのお達しだ。俄然やる気が出てきた。

「いけ好かない小娘め、冒険者ごときに騎士は負けぬわ。」フラグいただきました。

でも、簡単に頭に血が上ってはだめよ。それだけでも騎士失格だから。


少し離れたところで対峙する。私の武器は刀。騎士の武器はハルバード。よくそんな武器を選んだものだ。

見届け人は帝王。なんて贅沢。

「では、始め」と帝王。

始めの合図で騎士が何も考えずにつっこんできて、ハルバードを振りかぶり、私に当てようとする。ただの力任せ。

上手に躱してジャンプし、地面に叩きつけられたハルバードの上に私は乗る。一度やってみたかったんだよね。

間髪入れずに再度ジャンプし、上から騎士の頭にみねうち!

騎士はいくら兜をかぶっているとはいえ、すごい衝撃を受けたので、脳震盪になっているはず。実際、ふらふらして倒れこんでいる。

「勝負あり、ですよね。」と帝王に尋ねる。

「そうだな、大変申し訳なかった、リルリアーナ嬢。仕合いを引き受けてもらい、感謝する。」

「とんでもございません。」

騎士の回復を待ち、私は馬車に乗せてもらって家に向かう。

馬車の中でいろいろ話を聞いた。

今回はお忍びということで、少人数で来ていること、先ほどの騎士はまだなりたての騎士見習いみたいなもので、テストで連れてきたこと。やはり不合格だそうだ。

そして今回ここに来たのが、魔導師長に人探しの術を使ってもらったところ、この辺にうっすらと反応があったためだそうだ。リルちゃん特製の隠密の術が破られた。くやしい。

そんな話を聞いているうちに、家に到着した。外で待っていてもらって、まずは私だけ家に入る。

「ただいま~。父上、帝王が来訪ですが。」

それを聞いて色めき立つ家族たち。そりゃそうだろうよ。来るとは知らず、寝耳に水なのだから。

なのに、帝王さん、自分勝手。

「失礼するぞ。」と入ってきた。

急いで物をどかし、リビングの椅子に案内し、飲み物を用意する。

今回はお偉方さんなので、アイテムボックスにしまっていた高級茶葉を出す。

ティーセットを持ってリビングに向かい、お茶をだしたのち、自分も椅子に座る。

「王城脱出から一年半、何も音沙汰がない。無事かどうかもわからない。何度も人探しの術を試みたがうまくいかない。最後の最後にアイテムを使ってブーストした人探しの術でやっとうっすら反応が出たので、急いで駆けつけたのだ。」と帝王。

そうだったのか。隠密の術はしっかりと働いていたんだね。よかった。

「見ての通り、儂たちは無事じゃ。ちょいっとしたハプニングがあったので、奪還の決行が遅れてしまったんじゃ。」

と母上を見る父上。母上の手元にはジョルジュが抱かれ、眠っている。

「なら早く決行した方がよい。どうも北の国と東の国は戦争を起こそうと画策している節がある。その対策をするにも、奪還しないことには始まらないだろう。」

「西の国の動向は?」と宰相。

「西の国はもともと日和見じゃ。なにもできんよ。」

なお、帝国は我が国の南側に位置している。

「東の国には帝国から警告を入れよう。帝国の友好国に何をする気だとな。」

それはありがたい。

その後の話で、準備でき次第、王城奪還に動くことにした。

「ところで帝王様、このメダルご存知でしょうか。」といって拳王のメダルを見せる。

「懐かしいな。昔拳王に頼まれてデザインし、くれてやったものだ。拳王に認められたのか。」

「どうもそうらしいです。」

「それこそすごい。拳王が認めるとはよっぽどの者だぞ。」


会話が弾むがそろそろ時間である。帝王様は、

「今度は王城で会おうぞ。」

と発破をかけて去っていった。


その後、家族会議。会議の結果、動けるものが明日王城にいき、ケリをつけることになった。

行くのは私と父上。父上は、ヤツとは自分の手でケリをつけたいらしい。どうか死なないで。


明日の話が決まって、一息といったところで、レイモンドが皆に話を振ってきた。

「ねえ、僕のスキルなんだけど、博愛でしょ。本来なら人から人へ、と考えるんだけど、それはどうなんだろうって疑問になったんだ。」

なんか真剣な、そして大事な話のようで、皆が静かに話を聞く。

「ここに来て一年半。自然と触れ合い、自然ってすごいなって感じたんだ。自然は人間に何かをささげてくれている。ある種の愛だ。そう考えると、人間の博愛はなんてちっぽけなんだろうって。自然は無償の愛を人間に注ぎ、人間は少量ではあれど自然に返している。そうしたら、自分の博愛って、人間を前提とせずに自然の力を利用すれば、もっと大きな力になるんじゃないかって。自分のちっぽけな力ではなく、自然の大きな力があれば、すごいことができるかもって。」

そういった瞬間、レイモンドの体が光る。スキルの覚醒だ。

光が収まった時、私は急いでレイモンドのスキルを確認する。名称は変化してないが、質は完全に変わった。

「父上、試してみたいことがあります。父上の王国を覆っている力に、私の力も重ねてみたいのです。お許し願います。」

父上は眼をつむり、しばし考えたのち、結論を出した。

「レイモンド、やってみるがいい。ただし、無理はしないように。」

「はい!」

と勢いよく返事をしたレイモンドは、手を組んで祈りのポーズのような格好をし、集中し始める。

ある程度時間が経ったところで、なんだかぽかぽかと暖かい気持ちが入り込んでくるのを感じた。

「父上、成功です。王国全体に、私の力を行きわたらせられたようです。」

「して、身体の様子は?」

「何も問題はありません。まだまだ力を出せそうです。自然ってなんてすごいんだろう。」

とレイモンドは感動している。

これで次代の王は決まったようなものだ。王になるには、自分の力を王国全体に行きわたらせることが条件の一つである。何で知ってるかって?隠し部屋の本に書かれていたからだよ。通常は先代から次代へと受け継がれていく内容のようであるが。


色々なことが決まって、いよいよ明日が決戦日だ!


拳王様は、本気ではありませんでした。リルちゃんもそれは気づいています。

でも、自分の力を見せつけたいと、全力で仕合いました。だからフラフラになったんですね。


拳王様は、今までこのような仕合いを全く経験しておりません。

拳王様に来るのは力を見せつけようとする挑戦者たち。拳王というのに武器で攻撃してきます。しかも一撃必殺として。拳王に通用するわけがありません。

虚しさを感じていたところにリルちゃんと出会い、楽しい仕合いができ、大喜び。

だから初めてのメダル授与だったのです。


次回、いよいよ王城を奪還し、第1章の完結となります。

第1章のタイトルが玉座奪還までとなっておりますが、よく考えると、玉座は隠したのでしたね。タイトル間違えたな。、

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