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2.入園式の日だ~。どんなクラスかな?

2.入園式の日だ~。どんなクラスかな?


今日は待ちに待った入園日。何が待ち構えているかな?

父上と母様に見送られての出発。裏口からではなく、王城の門から必ず出入りしなさいと言われている。

レイモンドは王子なので馬車での登園。私は歩き。入園式は昼からなので、今日は遅めの登校である。

真新しい制服に身を包み、学園に歩いていく。春の風が気持ちいい。

制服は、日本のブレザー制服のような感じ。上はブレザーのような、びしっとした服。下は、男子はズボン、女子はスカート。スカートは長めである。パンチラしにくいのはよかった。

そして、制服の襟は学年によって色が違う。見ただけで、どの学年かがわかるようになっている。


学園に到着した。お貴族様は入口まで馬車通学が基本である。まあ、寮があるから、そちらに入る人も多い。私は入らないけど。お金かかるし。

だから、毎日登校するのは貧乏貴族だ。男爵なんかがそれにあたるだろう。それと庶民だ。


学園の門をくぐる。始めは入園式。会場で学園長のありがたいがつまらない言葉を聞くのだ。

会場に行こうとすると、「イモ女」の声。またか、断罪を見てなかったのか?見てなかったんだろうなあ。でなければ「イモ女」という言葉は出てこないはずである。

あれ、迷っている人がいるぞ?声を掛けよう。


迷い人はナターシャという、男爵令嬢だった。会場がどこかわからなくなったらしい。同じ新入生なので、一緒に会場に向かうことにした。

話をしながら向かう。入口で、受付の先輩令嬢にチェックをしてもらう。先輩令嬢は私のことに気づいたらしく、にっこり微笑んで会釈してくれた。私も会釈で返す。庶民に対する先輩令嬢の反応にびっくりするナターシャちゃん。かわいい。

席は決まっていないようで、適当な場所を決めて2人で座る。私に気づいたのか、数人の令嬢がやってきて私のそばの席に座り、私に話しかけてくる。

「リルさん。こんにちは。リルさんと学園で会うの、楽しみにしていたの。」

パーティーにて話をした令嬢だ。きちんとルールを守ってくれている。そう、私の今の身分は庶民なのだから。

貴族が庶民に話しかけているので、びっくりしているナターシャちゃん。男爵令嬢だから、私の次に身分が低い。でも、この子、パーティーで私のこと見てなかったのかな?私の正体に気づいていない様子。まあ、それが可愛いのだけど。それに、庶民の私に普通に話しかけてくるのも好印象だ。貴族の身分を鼻にかけることもしない。

そうこうしているうちに、式が始まった。お約束の、学園長のありがたい、そしてつまらない言葉が語られる。聞き流したけど。

でも、一部分、「紳士、淑女であれ」が頭にこびりついた。そんな令息、令嬢なら素晴らしいことだ。

父上と母様が来賓として来ている。第一王子が入園したんだ、来ないはずがない。そして、ちゃんと私のことも探し出してくれたようだ。こちらを向いたので、手を振ってみた。


その後、クラスの確認。私のクラスは1-Bだった。ナターシャちゃんも1-B。先ほどの令嬢たちは一部が1-B。私と一緒のクラスになれなくて、悔しがっている令嬢たちがいる。ごめんね、来年に期待してね。

自分のクラスに入る。私とナターシャちゃんとの席は隣りあわせだった。嬉しい。

ナターシャちゃんや私を知っている令嬢たちと話をしていると、とんでもない令嬢がやってきた。

「あら、庶民のイモ女じゃない。なんであなたがここにいるの?」

うわあ、バカ女だ。完全に断罪を見ていない。今話をしていた令嬢たちの顔が青ざめる。

「なぜここにいるかって?試験を受けて通ったからでしょ。まずいきなり私にイモ女と言ってくるのはおかしいでしょ。どういう神経しているの?」

反論する私。ほんと、こいつの神経がわからない。

「なっ、貴族に向かってなんて口の利き方をしているの?パーティー会場であなたのことをイモ女って呼んだ人がいたから、私も呼んだのよ、この庶民!」

「パーティー会場でどんなことがあったか知りませんか?知っていればイモ女呼ばわりはしないはずですが。」

言い返す私。うなずく私の取り巻きの貴族令嬢。断罪を見ていたら、絶対に言えないセリフだ。

「そんなの知らないわよ、イモ女。侯爵令嬢の私に立てつくなんて許せない!」

あ~。ほんとにバカだった。侯爵令嬢を鼻にかけて威張り散らすやからだ。とんでもない奴である。


そうこうしているところに、担任がやってきた。皆が席に着く。担任の話は今日についてのお祝いの挨拶と、今後についてだ。

さっきの侯爵令嬢が私のことをにらみつけている。あーむかつく。いっそのこと断罪したい。その前に、私、学園にあまりこない予定だけど。明日からしばらく来ないけど。

そんなことを考えていたので、担任の話にあった教科書配付の件をすっかり聞き逃したリルちゃんであった。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


あれから1週間。学園に通わず進級認定課題を自室でやっている。わざわざ学園に行く必要はない。

しかし、刺繍の課題のある所でつまづいた。王女教育で習っていないやり方だ。これは先生に聞かないとわからないぞ。

仕方がないので今日は学園に行こう。刺繍の先生に聞かないと。

制服に着替え、登園する。


教室に入ると違和感を感じた。あれ、ナターシャちゃんがいないぞ。どうして?

知り合いの令嬢数人が私の所にやってきた。

「ねえ、ナターシャちゃん知らない?」

「ナターシャさん、実は最近学校来ていないのよ。リルさん、あの侯爵令嬢覚えてる?あなた、あの令嬢に目を付けられたの。」

なんだって!しばらく来ていなかったから、私と仲の良かったナターシャちゃんに手を出したのか?

「私たちはあちらより立場が低いけど、貴族じゃない?だからまだよかったんだけど、ナターシャさん、男爵令嬢だから、『男爵は貴族であって貴族でない』って言ってちょっかい掛けてたのよ。」

うわ、とんでもない考えだ。貴族は貴族。確かに男爵は功績をたたえて陞爵された人もいる。その場合は一代限りだ。領地がなくても貴族は貴族なのである。

「でね、最初は暴言だったのが、机の中にゴミを入れる、教科書を破るといったようにエスカレートしてきたの。しまいには魔術で水を掛けられたわ。『あの庶民のイモ女の仲良しさんだったことを恨むのよ』ですって。ひどいでしょ。」

あのアマ~。かわいいかわいいナターシャちゃんに手を出しやがって!もう怒った。王女権限発動してやる!

「さらにはね、このことを担任に行っても『そうか』とだけ言って流されるの。イジメではないかと訴えたら、『うちのクラスにはイジメなどない』っていうのよ。もうどうしたらいいかわからなくて困ってたのよ。」

うなずくほかの令嬢たち。はぁ~、これがイジメでない?よし、学園長に直談判しよう。

あれ、気になることが話の中にあったな。教科書って配られたの?

「ねえ、教科書って配られたの?」

「入園の次の日には配られたわよ。リルちゃん、いなかったでしょ。あの侯爵令嬢が『私があの庶民に渡しますわ』といって、担任から預かったのよ。リルちゃん、もらってない?」

「今日まで学園にも来ていないし、接点だってないのにもらうわけないでしょ。あいつ、絶対教科書を破ったりして捨ててるわ。」

これは完全に有罪。王女のものになんてことするんだい!ギルティ~!!

なんか廊下から鼻歌が聞こえてくる。あの侯爵令嬢だ。行くぞ、断罪の時間だ。


侯爵令嬢がやってきたところだ。廊下にはほかに誰もいない。どれ、断罪の時間だ!

侯爵令嬢に近づいていく私。

「やっと会えたわね、庶民のイモ女。」

その言葉を聞いた瞬間、私はダッシュ。相手の胸ぐらをつかみ壁にドン!これがいわゆる壁ドンである。全然ときめかないが。

「一つ、聞いていい?私の教科書はどうしたの?」

相手をにらみつけながら問う私。背が低いのが悔しい。下から見上げてる~。

「そんなの、破いて捨てたに決まってるでしょ!このイモ女」

まだイモ女呼びだよ。でもこれで本人の自白があり有罪が確定した。王女の道具に手を出したのだ。罪が何もないはずがない。

何だ何だとクラスメイトが廊下に出てきた。私は相手にしか聞こえない声で話をする。

「ねえ、あのパーティーはね、庶民はいなかったのよ。しかも私をイモ女呼びした家族は断罪されたわ。その後も断罪シーンを見ていなかった者が私をイモ女呼びしたけど、全て断罪されたわ。さて問題です。私は誰でしょうか?」

一生懸命考える相手。庶民ではない。イモ女呼びしたら断罪される。まさか、高位の貴族?相手に冷や汗が垂れる。

「答えはね、私王女なの。国王の娘、第一王女のリルリアーナよ。あのパーティーの時、私のデビュタントだったのよね。おかげで散々なデビュタントだったわ。そして今でもイモ女呼ばわりされるなんてね。」

真っ青になってガタガタ震えだす相手。王女に手を出したのだ。ただでは済まないことにやっと気づいたのだろう。

「まず今日は今すぐ帰りなさい。帰ったら親にこの事を報告しなさい。そしてそのまま謹慎。国王から沙汰があるまで待ってなさい。ほら、さっさと行きなさい。」

と言って胸ぐらをつかんでいた手を放す。あわてて出ていくあいつ。このことは学園長にも話をするから、あいつは退園決定。国王の沙汰は領地幽閉か最悪修道院行き。どうなることやら。

廊下に出ていたクラスメイトには大丈夫だよと手を振る。

気づかれないように王家の影を呼ぶ。私に王家の影を付けるなんて全く父上は心配性なんだから。でも、今回はスピード重視で行こう。今回のことを父上に伝え、処分してもらうようお願いする。これでいいだろう。


そうこうしているうちに、担任がやってきた。担任が私を見て声を掛ける。

「よう、庶民。1週間も来なかったんで、辞めたと思ってたぞ。」

とんでもない担任だ。ほんとに先生か?普通生徒に「庶民」なんて呼びかけないぞ。普通は名前呼びだ。

周囲では、私のことを知らない令息・令嬢が笑っている。なお、知っている令息・令嬢は顔を青ざめている。

どれ、気になることを担任に聞いてみよう。

「先生、私の教科書ってどうなっているんですか?私の手元に届いてないんですけど。」

「ん。侯爵令嬢が渡すからって預けたぞ。その後のことは知らないな。ないならないままだ。教科書は1回しか配付しない。後は何とかしろ。」

「汚されたり破かれたりしてもですか?」

「そうだ。紳士淑女たるもの、己の荷物は己で守るもの。それができなければ失格だ。」

まず問題一つ。再配付をしないなんてありえない。問題があったら対処するべきである。

「ところで、このクラスでイジメがあったようですが?」

「そんなことはない。イジメはなかった。」

あら~。宣言しちゃったよ。問題二つ目。

担任の言葉に反論する私の知り合いの令嬢たち。それに対して、

「オレがなかったと言ったらなかったんだ。オレに反抗するな!」

と担任。もっと問題発言。問題三つ目

「先生、聞き捨てならない発言ですね。この件は学園長に直談判してきます。」

学園長があってくれるわけないじゃないかと担任。私は会えるんですよ、と答え、教室を出る。

どれ、学園長に会いに行ってくるか。


学園長の部屋に着いた。ノックをする。扉を開けずに声を掛ける。

「学園長、失礼します。学園長に用があって来ました。」

「おかしいのう、今日は来客予定などないが。」

「王女が来ましたので、どうか会っていただけませんか?」

「なに、王女じゃと!?」

慌てて扉を開ける学園長。私は淑女の挨拶。

「こちらにお掛けください。」

と学園長。執務机の前に応接セットがあり、そのソファを進められる。私は「失礼します。」と言って座る。目の前に学園長が座る。

「改めまして、私は国王の娘、第一王女のリルリアーナと申します。今回は、庶民として入園させていただき、ありがとうございます。」

「わざわざ丁寧な挨拶、痛み入る。ワシは学園長じゃ。ところでどんな用事かの?」

「2点あります。1点目はクラスメートの侯爵令嬢がイジメを行っていたこと。ナターシャ男爵令嬢が被害にあい、現在学園を休んでいます。」

「何と、そんなことがあったのかい。」と学園長。

「2点目は、クラス担任がそのイジメをもみ消したこと。『オレがなかったと言ったらなかったんだ。オレに反抗するな!』ですって。」

「何を言っているんだ、そいつは。クラスのことを見えていないじゃないか。まだ入園1週間だぞ。しかもオレの言うことを聞けだと。教師の風上にも置けんな。」

「侯爵令嬢ですけど、退園ですよね?」

「それはそうじゃ。イジメをするようであれば淑女ではない。威張り散らしていたんだからなおさらじゃ。」

「担任はどうしますか?」

「まずは呼び出して話を聞こう。それまでいてくれるかの?」

「構いませんよ。」

学園長は人を呼んで、すぐに担任がここに来るように命令した。担任が来るまでの間、学園長はお茶を出してくれた。

「王女様は緑茶はどうですかの?」

「好きですよ。しかも湯飲茶碗なんて、最高ですね。」

「喜んでもらえて結構じゃ。」

「ところで、私が王女だってことは、先生方には内緒ですか?」

「ああ、内緒にしてるぞい。あくまで庶民扱いとなっておる。」

「そうでしたか。担任が不穏なことを言いましたので、気になっていたのですよ。」

「なんじゃい。」

「私のことを『おい、庶民』って呼んだんですよ。普通は名前呼びでしょ?しかも『1週間いなかったから辞めたと思った』ですってよ。開いて口がふさがらない状態でしたわよ。選民志向ですか?」

「それはあってはならないことじゃのう。」

それから、担任が来るまで状況の確認を行い、後は世間話をしていた。


「失礼します。と担任。顔を上げると私がいたのでびっくり。「なぜ庶民がここにいる。」

「なぜって、理事長に直訴に来たのですよ。」と私。

「まずは座りなさい。」

理事長に言われて椅子に座る担任。まだ混乱している。

「ところで、今の『庶民』ってのは何じゃ?普通は名前で呼ぶもんではないか?」

指摘を受けて戸惑う担任。理事長に下手に反論できないからだ。

「さらに、イジメを見逃していたようじゃな。見ていた令嬢たちがいたようじゃが。」

「私は見ていません。私が確認取れないものは存在しないのです。しかもあの侯爵令嬢は自分から進んで色々なことをしてくれるいい子でしたが。」

「クラスの中では侯爵令嬢の肩書でぶいぶいいわせていたそうじゃないか。そんなのは淑女とは言わぬ。イジメを行った以上、退園じゃ。」

「そんな…」

どうもこの担任、侯爵令嬢のことを信用していたらしい。目が曇ってるよ。

「しかも『オレがなかったと言ったらなかったんだ。オレに反抗するな!』だと?自分の傘下に置いて命令通りに動かそうとするなんて、先生としてあり得ないぞ!反省しろ!でないとお前はクビだぞ!」

あらら~。クビ直前宣言。しょんぼりとする担任。お前のせいだ、と思ってるんでしょうけど自業自得ですよ。

知らんぷりして茶をすする。あ~おいしい。

しょんぼりとして担任は退出。これを機にいい先生になってください。

「悪かったのう。」と学園長。

「そんなことないですよ。しっかり話を聞いてくださったから。」と私。

やるべきことができたので満足だ。

「では、私も失礼しますわ。お茶、ありがとうございました。」

と学園長に挨拶し、退出。

さてと。もう一つやるべきことがある。ナターシャちゃんのことだ。今すぐ会いに行かなければ。


そう決心して私は学園を後にしたのだった。


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