21.第一王女、とうとう12歳になる。
やっと第3章もラストとなりました。
後半駆け足になったことは否めませんが、何とかここまでこぎつけたということで。
21.第一王女、とうとう12歳になる。
気づいたら12歳までなっていた。びっくりである。
しかも、まだデビュタントしていない。10歳の時は洪水、11歳の時はあっさりとはしていたがレッドドラゴン討伐。
あ、レッドドラゴンの素材は魔法局に持っていったよ。ここは主に魔法のアイテムの開発と研究。魔力のこもった魔物とかも扱っている。
そのため、国王の許可を受けて、魔法局にレッドドラゴンの死体を持ってきた。なお、王女であることも教えていいことになっている。個々の研究員は研究肌だ。外に漏らしはしない。まあ、王命で漏らさぬよう言明してあるが。
「で、王女様、本当にレッドドラゴンの死体なんですね。」と研究員。この人が偉い人らしい。
「そうよ。新鮮なレッドドラゴンの死体。出したら血がどばーッと出てくると思うわ。」
「どこにあるのですか?それだけ大きいものを…」
「私のアイテムボックスの中。どこに出せばいいかな?」
「そうでしたか。」
と偉い研究員。そうしたら、研究室に大きな声が飛んだ。
「おいみんな、レッドドラゴンの新鮮な死体がやってきたぞ。魔物搬入部屋を開けろ。滴る血を回収する道具を準備しろ。これは大きな仕事になるぞ!」
色めき立つ研究員たち。そりゃあ、まず手に入らない素材だもの、当然でしょう。
「姫様はこちらへ。」
と案内される。案内された部屋は魔物搬入部屋だ。どこかと繋がっている扉が見える。外から魔物を搬入するための扉だろう。そういえば、この部屋は城の端になるみたい。でも、レッドドラゴンの死体を出せるくらいのスペースだ。とても広い。
「みんな、準備はできたか?」「おお~!」ノリがいい。
「じゃあ、頭から出すけど、どこに出せばいい?」
「じゃあ、ここに。」とバットの上を指す研究員。アイテムボックスを駆使し、まずは首の部分を出して血を流す。」
「結構な量あるぞ。しっかり取れよ!」
血を瓶に採取する研究員たち。瓶の大きさは結構あるが、瓶の数も結構使っている。
あらかたちを採取したところで、バットから離れた所に頭を出して置いた。
「すげえ、この牙するどいな。」「それをいったら角もあるぞ。奇麗なままだ。」「本当に首を刎ねたんだな。身体も傷一つない奇麗なままなんだろうな。」
研究者たちがレッドドラゴンの頭を見て感動している。
私は、身体の方をどうするか聞いた。おそらく、こちらも血が出てくるだろう、どうする?と。
「なら、先ほどと同じようにできませんか?バットに血を粗方集めてから、また出してください。」
注文は単純だが、意外と大変なものである。身体を微妙にアイテムボックスから出すので、魔力の消費が結構ある。でも、まだできそうだ。魔力は十分残っている。
「では行くわよ。」といって身体の方をちょっと出す。やはり切り口から吹き出る血。
バットに集め、そこから瓶に採取する研究員。身体だけあって、量は多い。それでも一滴も惜しいと研究員。
何とか瓶は足りたらしい。それではと、離れた所にレッドドラゴンの身体を出す。結構大きく、でも傷一つない奇麗なままの身体に驚いている。
「姫様、本当にこの素材をもらえるのですか?」
気になってまた確認をする研究員。
「ええ、これを使いこなせるのはあなたたちだけだもの。ただし、私のお願いも聞いてほしいわ。」
「で、何のお願いで?」
不安げになっている研究員。そんなに心配しないでいいよ。私のわがままの件だもの。
「鱗の部分をある程度取っておいてほしいの。私の鎧を作ってほしいのよ。今11歳だから、15歳で成長がだいだい完了するから、3回くらいの交換かな。革ひもである程度調整できるから、2回かもしれないわね。その分の素材を取っておくのと、私の鎧を作ること。それさえしてくれれば素材は全て自由よ。」
ある種大盤振る舞いである。私は鎧が手に入りウハウハ。研究員たちは研究素材が手に入り、ウハウハ。WIN-WINの関係である。
「本当にいいんですか、姫様?」最終確認をしてくるお偉い研究員。
「本当にいいのよ。私もあなたたちも損をしないじゃない。むしろ得ばかり。だからいいの。」
「わかりました、この素材を受け取ります。」
「では、早速だけど、私の鎧の注文をしたいの。いいかしら?」
「では場所を移しましょう。」
場所を移し、私の鎧の話になった。私の鎧は、胸と腹だけ守ればいい。身体全体は動きが制限される。肩や背中もいらない。基本真正面勝負で一撃なのだから。
研究員からは、どうしても鎧が下にずり下がらないよう、肩に革バンドを使う必要があるそうだ。背中にも鎧をぶらぶらさせないよう革ひもなどが必要という。
まずはそれで作ってもらい、少しずつ修正することとした。冒険者の格好になり、寸法を確認してもらう。
「近日中に作りますから、待っていてください。」と研究者。頼もしい。
「じゃあ、お願いね。」と言って立ち去る。さてどんな鎧ができるのだろうか。楽しみだ。
しばらくして、私の鎧が完成したと連絡があった。すぐに魔法局へ向かう。
「王女様、こちらです。」と研究員。
冒険者の服に着替え、鎧を装着してもらう。バンドは肩を通し、背中で鎧を固定する。違和感はないしバンドはマントで隠れるから問題ない。
鎧は胸とお腹。セパレートなので、動きに支障はない。今のところは。
では実際に動いて確かめてみよう。私は、研究員に動くことができる部屋がないか聞いてみる。あるとのことなのでその部屋に案内してもらう。
部屋に到着。どれ、実際に動いてみよう。
まずは剣。刀を出して腰に差し、抜刀術の構え。刀を抜いて抜刀!びゅんっと音を立ててきらめく白刃。まずは違和感なし。
そのまま連続攻撃、びゅん、びゅん、びゅん。これまた問題なし。
次は体術。両手を握り、てい、や、ほ!連続攻撃を放つ。時には足技も放つ。これまた問題ない。
私にとって最高の鎧だ。気に入った。これからの冒険はこれを着用するのだ。
もっと嬉しいことは鎧の色だ。本来なら、レッドドラゴンはもっと鮮やかな色である。でも、私の冒険者の服に合わせて色合いを抑えている。聞くと魔法局の技術の一つなのだそうだ。
「すごい、色も合わせてくれてる~。動きも阻害しないし、デザインも最高!気に入ったよ~。」
「気に入ってもらえて嬉しいです、姫様。」
先ほどの剣の舞に酔いしれていた研究員が復活して私に話しかける。
「後は、今後のために残りの素材分は取っておいてね。ところで…」
と話しかける私。もう一つお願いができたのだ。
「ドラゴンには逆鱗ってあるじゃない。私、それが欲しいんだけど。」
「それなら問題ありません。逆鱗ぐらいあげましょう。鎧の裏にポケットを作りますか?」
と研究員からの提案。それに乗る私。鎧の中にポケットを作ることになった。
鎧を脱ぐ私。脱いだ鎧を加工する研究員。いつの間にか、逆鱗を持ってきていたらしい。
逆鱗の入ったポケットは、飛び出さないように封をしている。鎧を新調した際は、ポケットごと逆鱗を移動するらしい。
「これでおっけ~。最高の鎧よ。ありがとう!」
「姫様に喜んでもらえて光栄です。」と研究員。
次回、身体が大きくなったらまた来ることを約束し、研究室を出る。
今日は最高の鎧ができた。これで冒険者リルとしての格好がつくものだ。
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ある日、冒険を終えて、家路に着く。森の中に入ったところで違和感に気づく。なぜ人がついてくる?
後ろを向き、声を張り上げる。
「そこの人、隠れてないで出てきなさい!」
コソコソしていた男たちが出てきた。数は3人。探知魔術を使ったけど、これ以上はいないようだ。
「おまえ、魔物退治でお金いっぱいもってるんだろ。」「それにレッドドラゴンの鎧まで手に入れている。」「その恩恵にあずかりたくてな。」
なんともゲスな男たちだ。冒険者が何を言う!
「ふざけないで。冒険者は冒険をして自分でお金を稼ぐ者。あなたたちも自分で稼げばいいじゃない。」
「モグリ冒険者だ、週末冒険者だとうるさいんだよ。ギルドマスターが許しても、俺たちは許さないんだよ。」
あ、そう。これで冒険者たちのケンカで済まなくなった。ただの強盗だ。
「そんなゲスな考え方、私は嫌いだわ。あなたたちを警備隊に送ってやるから。」
そういって、私は木刀をアイテムボックスから出した。こんなやつに「桜」を使いたくはない。
木刀を持ったと同時に最高速。肉体強化の魔術も使っている。
まず一人目に接近。気の乗った木刀で腹を殴る。遠慮はない。
二人目に接近。腹に入れないので背中に回り、首筋をバチン。相手は気絶する。
そこまで来て三人目が気付いた。
「なんなんだよ、お前。」
驚いて言い放つ男。バカだなあ、人の力を測れないからこうなる。
「私は『赤の冒険者リル』よ。それ以上でもそれ以下でもないわ。」
「だからってこの力は…」
「むしろ相手の力を探れないって致命的よ。ギルドマスターだって最初から気づいていたもの。だからモグリどころかギルドの加入を認めたの。」
「なんだって…」
「では、終わりにしましょ。」
そう言い残し、全速力で相手の懐に入る私、先ほどまで動きが止まっていたので楽に入れる。鎧を着ているが問題ない。木刀に気を十分に乗せ、木刀一閃。鎧に当て気を中に通す。「透気斬」という、私のオリジナル技だ。鎧を無視しお腹に直接ダメージを与える。いくら硬い鎧でも意味がない。
「なんで…」
不思議がりながら気絶する男。はい、戦闘終了!
アイテムボックスに木刀をしまい、代わりにロープを出す。男たちを縛ったら、肉体強化の魔術をそのままに、男たちを引きずっていく。
警備隊に事情を話し、男たちを引き渡す。強盗なので、それなりの処罰を、とお願いした。
次に冒険者ギルドに行く。ギルドマスターに事情を話す。
「そんなことがあったのか。大体リル嬢に手を出すのが悪い。3人は冒険者ギルドの会員はく奪だ。他の冒険者ギルドへも通達。復帰できなくする。」
「ありがとうございます。そこまでしてくれるなんて、感激だわ。」
「何を言うかリル嬢、感激なんて。でもこれがギルドとしての示しだ。何も問題はない。」
「では、報告が終わったので失礼します。」
私は冒険者ギルドを出る。帰りが遅くなってしまった。怒られるかな?やだな~。疲れたから自室でしっかり寝よう。
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そうこうしているうちに、私は12歳になっていた。夏生まれだから、そろそろ13歳だ。
12歳にもなったので、そろそろデビュタントをするという。レイモンドもきっかり身体ができ、十分人前に出られるようになった。
春になったらデビュタントだ。王国では、春に貴族が王城に集まり、貴族会議を行う。一年分の話し合いをするのだ。夏まで何回か行い、夏には領地に帰る。貴族がそろったときに、盛大なパーティーをする。昨年を労い、今年の仕事をすための英気を養うパーティーだ。そこでデビュタントする予定だ。
春の風が気持ちいい。今執務室は嵐だ。貴族会議の準備等、様々な準備で大忙しだ。洪水の件などでひいひい言っていたのに、さらに輪をかけて忙しいらしい。レイモンドは賢いので、すでに執務室に入り資料整理をしている。一方、私は能力がないのでやることがない。
久しぶりに城下町に出よう。春の陽気に誘われて、散歩に出かけるのだ。
いつもの「赤の冒険者リル」の格好をしよう。町に出る時の格好だ。町はどんな感じかな?春だからウキウキしてるかな?せっかく城下町に出るんだから、自分へのご褒美を買うのもいいな~。
そんなことを考えながら、私は城下町に出たのだった…
そして第1章につながる…
これで第3章は終了です。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
現在一時退院中で、やることが多く、執筆ができない状況です。
また、再入院後すぐ薬物による治療が入るため、PCを使うことが困難になると予想されます。
第4章の書き溜めもそんなに多くはなく、見直しを何度もかけている所です。
従いまして、今後の第4章の投稿については、毎日投稿ではなく、2日に1回の投稿とさせていただきます。
毎日見に来てる方、ありがとうございます。また、時々来てまとめ読みしている方もいらっしゃるようで、そちらもありがとうございます。
なお、第4章は学園の話で、これで最終章となります。よろしくお願いいたします。
第4章はそれぞれ文章の長さが異なります。今まではある程度調整していましてが、この章はタイトルに合わせて執筆しておりましたので、長さがかなりまちまちとなりました。ご了承ください。