2.別荘を使えるようにしよう
第1章は、連続投稿する予定です。
お楽しみに
2.別荘を使えるようにしよう
到着したのはそれなりに大きな家。まあ、お城と比べちゃいけない。
日本換算だと、この人数でおつりがくるくらいの広さだ。
ちゃっかり2階建てになっており、1階はリビングと台所等水回り関係。2階は各人の部屋となっているようだ。
ちゃんとお風呂もあるよ。さすがだね、父上。
「なかなかいい家ね。でも、これ、どうしたの?」と母上。
父上は、
「ちょっと息抜き時にここにこようと思って用意してたのじゃ。なかなかこれなかったがのう。」
「よく私に隠れて用意したものね。」
「実はこれは結婚前のものなんじゃ。だから言いそびれていたのじゃ。」
「それじゃあ許してあげる。」
子供の前でいちゃいちゃするのはやめてください、2人とも。
コホンを咳払いする宰相。
「で、これからどうするのですか?」
「影を使って潜った各部署とやり取りをする。必要最低限のことをして、国が傾かないようにするのじゃ。
そのうえで偽王の不振をあおる。こちらが情報操作をするのじゃ。そして頃合いを見て玉座を奪還する。」
正確には玉座は隠してあるので、偽王を失脚させるといいんだね。
「それで大丈夫なんでしょうか?国が傾いたりしませんか?」と弟。
「大丈夫じゃと思う。試算では一年は持つことになっておる。」と父。
宰相がうなずいているところを見ると、大丈夫そうである。
ここまできて、皆力が抜けて椅子にすわる。
「ここから下ったところに町がある。買い物はそこでできる。
また、ここは平和な地域だから魔物はいない。残念じゃったな、リルよ。」
ぷーっとふくれる私。戦闘狂じゃないんだからね。
「まず今日は疲れたので、携帯食を食べて休みましょ。あとは明日になってから。」
母上の提案に皆賛成する。各自携帯食を食べ、2階の部屋の割り振りをする。
大きな部屋は父と母の部屋だ。このイチャイチャカップルめ。結婚何年目だよ。
残りを3人で割り振り、部屋に入る。それでも部屋は余っている。
部屋に入ると、結構大きく、きれいである。保存の魔法をかけているのだろう。父上かな?
アイテムボックスを開き、服の確認をする。外では冒険者の格好ばかりしているので、実は服の数がない。
パジャマならぬネグリジェはある。普段着がない。
ここは城ではないので、ドレスは不要だ。多分、皆も同じ状況ではないだろうか。
なお、アイテムボックスは誰でも使える呪文ではないので、間違えないでほしい。
この中ではわたしだけ?父上がどの程度魔法を使えるかだと思う。
荷物整理を行い、武器・防具の整理を行い、ベッドに潜る。
ただそれだけで夢の世界へといざなわれてしまった。
次の日、この家を使えるようにと皆が動き始めた。
役割分担としては、外出着(冒険者の服)を持っているのは私だけなので、買い出し係。
「父上、リアカーみたいなのってありますか?」
「裏の物置にあった気がするじゃ。確認してくれぬかのう。」
物置に行ってみると、確かにリアカーがある。私が扱える大きさだ。
「では、買い出しいってきま~す。」
買うものは古着(町に新品の服なんてあるわけがない)と野菜、果物類。
肉は依然狩った魔物の肉がある。たくさんあるので、問題ないだろう。時間停止を持っているアイテムボックス様々である。
町に到着してまず向かった先は古着屋。(やっぱり新品の服を売る店はなかったよ)
店に入り、サイズや数量、外着に部屋着に寝巻にとお願いしたら、すごい数になってしまった。定員のおっさん苦笑い。
お金は十分持っているので支払い、店の中でアイテムボックスの術を使いたい旨を伝え、交渉する。
本来、店の中のものを根こそぎ奪い去る可能性のあるアイテムボックスなんて許されないものだが、この量を見て認めてくれた。
「アイテムボックスなんて、若いのによく習得したね。」と店員のおっさん。
お礼を言い、チップをはずんでから次の店へ向かう。
次は八百屋だ。あれもこれもと根こそぎ取るかのように注文し、リアカーに入れてお金を払う。
量もだけど、若い娘が大金を持っていることにびっくりしている定員。
さっさと次の果物屋へと向かう。
こちらでもあれこれ注文し、リアカーに入れてお金を払う。
調味料を忘れていたので、お店を探し、これまたあれこれ購入した。
一気に購入したので、ある種悪目立ちしている。
次も来るので、記憶に残るのはいいことだと思っておこう。
家に帰ると、まだ荷物整理が続いていた。
「帰ったよ~」と大声を上げる。
皆が手を休め、集まってくれた。
「服はどうする?」
「隣の部屋に出してもらい、後からより分けよう。」
「そんなことしなくても、サイズ毎だからまとまった山でだすよ。」
「それは助かる。」
「野菜と果物は?」
「台所奥に野菜室があったはずじゃ。状態保存がかかっているから長持ちするぞい。」
「調味料は?」
「あら、いいところに気づいたわね。台所に頂戴。棚に収納していくわ。」
意外とあっさりと決まってしまった。
「ところでお肉はどうするのかしら?」
「それは私が提供するわ。魔物肉だけど。」
「それでいいわよ。」
昼は軽食を取り、作業は夕方まで続いたのだった。
夜は豪勢な食事になった。(お昼より)
野菜に果物にお肉。日本人が好む家庭料理だった。
でもパンがなかったのはごめん。全然気づかなかったよ。
調理したのは当然母上。
「お前、調理できたのか?」と宰相。びっくりしてついお前呼ばわりだよ。
「宮廷料理ほどではないけれど、この程度ならできますわ。おそらくリルもできると思うけど。」
お前呼ばわりにちょっとへそを曲げている。皆がこっちを向くので、うなずく。
「ただ肉を焼いただけのワイルドな料理ではあるまいな?」と宰相。失礼な。
「なら、明日の朝は私が担当するわ。びっくりしないことね。」
と強気の発言をする。転生者なめんな!
アイテムボックスにたんまり食料が入っているので、それを使ってもいいかと思っている。
城下町の果物屋のおばちゃんはともかく、八百屋のおっさんがただでくれるんだよ。どこで使えばいいんだよ。
肉屋のおっさんから買ったベーコンがある。魔物コッコの卵がたんまりあるからベーコンエッグにしようか。
パン屋のお姉さんからもたくさん買わせてもらっている。ここのパンはおいしいんだ。
小腹がすいたときよくつまんでいた。
あとはサラダでいいか。
スープも欲しいよね。
前に時間があった時コンソメスープを作っておいたのがある。それを使って作ろう。
あれ、すごく贅沢な朝ごはんの完成?
「リル、どうしたの?」と母上。
百面相をしていたのを気にしたらしい。
「大丈夫、明日の朝を楽しみにしててね。」
寝る前、台所をチェック。どんな道具があるか、どう使えるのか、効率的に作るにはどうしたらいいか。
チェックが終わったら部屋に戻って寝巻に着替える。明日が早いので、おやすみなさい。
三日目。急いで起きて部屋着に着替える。
さあ、朝食作成の時間だ。
昨日考えた通り、魔物コッコの卵とベーコンのベーコンエッグ。
コンソメスープを取り出し、野菜を入れて加熱する。
昨日購入した野菜でサラダを作ったところでいたずら心が芽生えた。
アイテムボックスからドレッシングを取り出す。リルちゃん特製のドレッシングだ。
配合は秘密。どこにもない、オリジナルの味に悶えなさい。(辛くはない)
そして丸パンを温めてからテーブルに盛り合わせれば、リルちゃん特製朝食の完成だ!
いい香りに誘われて、皆が起きてきた。
「え、これリルが作ったのかのう?」と父上。
「まさかリル嬢まで料理ができるとは。」と宰相。
「できるだろうとは思ってたけど、これほどまでとは。」と母上。
「さすがです、姉上。」と弟。
まあ、だいぶ裏技使ってるんだけどね。
「母上、昨日はパンを用意するのを忘れてました。申し訳ございません。」
「いいのよ。あるもので作る、それが主婦だもの。」
「私の手持ちを少し置いていきます。今日も買い出しに行ってきます。」
「あら、いいのに。でもやはりパンは欲しいわよね。じゃあお願いするわ。」
「そろそろ食事にしないか。儂腹ペコじゃ。」
父の鶴の一声で朝食タイムに入る。
さっそく様々な声が飛び交う。
「卵がおいしいのじゃが。」
「魔物コッコの卵です。濃厚ですよ。」
「このスープはコンソメスープ?なんで?」
「時間があった時作り置きをしてアイテムボックスに入れておいたんですよ。」
「サラダのドレッシングは何だ?おいしいけど今まで食べたことがない。」
「リルちゃん特製ドレッシングです。世界でただ一つです。配合は秘密ですよ。」
「姉上、パンもおいしいのだけど。」
「これは城下町一のベーカリーショップのパンです。さすがでしょ。」
とても好評であったが、これはハイになっていたからできたもので、いつも作れるとは限らない。
主婦はやっぱりえらいな、と感じた次第であった。
食事が終わり、後片付けが済んだところで今後についての会議が行われる。
まずは父上からスタート。
「春から初夏にかけて数度貴族会が行われる。通常は儂から提案し、意見をすり合わせてから実行に移すのじゃが。
偽王が開くのであれば、参加貴族からしっかりたたいてもらう。
偽王がいなくなった、もしくは貴族会が開かれなった場合、裏貴族会を開く。
各部局長から儂の案を伝え、実行に移す。
貴族の意見は聞けないけれと、しょうがないじゃろ。」
「そうだな、それが最善だろう。」と宰相。
「ならいつも以上に丁寧に資料を作らなきゃ」と母上。
「ところで、偽王をたきつけたのは誰?バックがいないとこんなことができないでしょ?」と私。
「それは西側の貴族連中じゃ。先代の頃、西の国内でもめてこちらに助けを求めてきたのじゃ。だから西の国と話し合いを持ち、我が国に併合した。そしたら待遇が悪いだのなんだの、ちょっとしたことでいちゃもんを付けてかれこれ今日まで至るのじゃ。併合しなければよかった、というのが実態じゃよ。」
ただの逆恨みかい!
それでクーデターまで起こすのだから大したものだ。
でもその先のビジョンが全くない。何をやっても文句だけだろう。
王都に戻ったらぎったんぎったんにしてやるんだから!
「そこでじゃ。」と父上
「今までのような仕事量ではなく、国が傾かない程度でまったりとしようと思うんじゃ。宰相、それは可能じゃろ?」
「そうですな、仕事量を減らしても問題ないでしょう。私もまったりしたいですし。」
「決まりじゃな。」
今後の方針が決まった。
次回はいよいよリルちゃんとヤツとの対決です。
これで短編に追いつくぞ。