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【連載版】儂、国王なのに国を追い出されたのじゃが ~第一王女の奮闘記~  作者: Konji
第1章 クーデター発生から玉座奪還まで
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1.国王が逃げた

Konjiです。短編を読んでくださった方、ありがとうございます。

読んでくださった方がおられたので、モチベーションが上がっております。

いけるところまで書いていこうと思いますので、応援お願いいたします。


何度も言うようですが、誹謗中傷はおやめください。

1.国王が逃げた


「なあ、儂、国王なのに国を追い出されたのじゃが」

「違うだろ、面倒でさっさと逃げ出しただけだろが」

「そうなのじゃが。あの頃の忙しさから解放されるとこんなに穏やかなのか」

「そうだな。できれば戻りたくはないものだな」

「とはいっても、あの偽王のせいで国は荒れる一方じゃ」

「ちゃっかり情報を各部局にまわしてくいとめてるのは誰じゃ」

「儂じゃ」

「俺もかかわってるぞ」

「そうじゃな。あとどのぐらいもつかの」

「まだまだいけそうな気がする」

「じゃあしばらくまったりライフを楽しもうかの」

「そうだな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


春のやわらかい風が心地よく吹いている。

夕方なので早く帰らなきゃ。

ふもとの町で買い物してきた荷物を持ち、私リルリアーナはふと、ここに来た頃を思い出していた。


一年前、父上が忙しくして、国内の情勢が把握できないでいるところをつけこまれ、クーデターを起こされたのだ。

王城に寄せてくる兵士たち。

寄せ付けずに何とか玉座の間に来ると、玉座に集まる家族3人+宰相がいた。

その前にいたのがヤツである。

立場は伯父らしい。

スキルは「暴虐」。

とにかく乱暴に乱暴を重ねたため、利き腕を切り落とし、廃嫡のうえ、放逐したらしい。

以来、音沙汰なかったが、クーデターの片棒としてここに現れたのだ。

「よう、弟よ。本来なら兄の俺が王になるはずだった。返してもらおう。」

「なにをいってるのじゃ。次代の王を決めるのはその時の現王と決まっておる。それに、王になるのは血筋じゃない。能力じゃ。お前では荷が重すぎる。儂はお前を王と認めない。」


ところで、この世ににはスキルが存在している。

心のありようともいわれている。

父である国王ランバート・モーリス陛下のスキルは「見通す力」だそうだ。

父が決めたエリアに加護を与え、その範囲内であれば漠然と変化がわかるそうである。

その変化をもとにその地域を調査するのだそうだ。

宰相であるダレス・オスカー侯爵のスキルは「先見の明」。様々な情報をもとに今後どうなるかを予測。

一番良い状況になるように指示を出すことができるらしい。

母であるルーレシア王妃のスキルは「情報整理能力」。集まった情報を整理し、きれいにまとめた資料を作ることが可能。

場合によってはプレゼンテーションまでできる。

この3人がいれ最強じゃね?といわんばかりの布陣である。


なお、私と双子の弟である第一王子レイモンドのスキルは「博愛」。自分の力を他人に与える能力である。

小さいころ、寝たきりだったので、何故かなと思ったら、6歳の時に分かったスキルである。

分かった瞬間、関係者皆が涙した。

このスキルは、自分の力を相手に与える力である。

6歳まで病弱でベッドから出られなかった原因であり、さらに弱っていく一方だとしたら…

でも私はあきらめなかった。

「ひ弱な原因がわかってよかったじゃない。あとは力をコントロールするだけよ。誰にでも愛を与える必要はない。本当に必要な時、必要な人にだけ与えればいい。まずは力の放出を止める練習をしましょ!」

本来なら6歳の言うセリフではないが、これにより、皆の顔に希望が湧いた。

そして今では皆と変わらぬ生活を行っている。


そして、私こと第一王女リルリアーナのスキルは「自由」である。

なんてことはない。私は何にも縛られず自由でいたいのだ。

しかしながら、自由には責任がある。

相手の自由を奪ってまで自分の自由を求めてはならない。

だから、自由は何かに束縛されている。

私の場合は「家族」。だから勝手に家を飛び出さない。急に旅に出たりもしない。必ず帰る。

まあ、私はそれを求めないし、束縛と感じていないのだが。


そして、私たち家族には、秘密がある。家族の間だけの秘密だ。

それは、「家族4人とも異世界転生している」ことだ。

それを知った時、え~っ、となった。

だって、同じところに転生者が集まってるんだよ。

自分がいるからには他にもいるとは思ってたけど、近くにこれだけいるとは。

聞くと、父の前世は商社マン。世界を股にかけたやり手だったらしい。だから全体が見渡せるのかも。

母の前世は美人OL(自称)。課長職で、書類整理や企画運営。企画を通すためプレゼンテーションをもしていたらしい。

弟については父と母は聞いているようだが、私に教えてくれなかった。おそらく壮絶な不幸話だったのだろう。


私の前世はオタク。ゲームオタクにアニメオタク。

様々なゲームをやりこみ、ラノベを読み漁り、アニメを欠かさず見、気に入ったフィギュアやグッズを買う。

コミケにも参加した。時にはコスプレもしたよ。

でも、ニートじゃないよ。お金がないと趣味が続けられないじゃない。

ちゃんと昼間はOLとして働いたんだよ。

だから、憧れの剣と魔法の世界に来て、剣と魔法を練習した。知識だけでは身体は動かないからね。


よく、転生人はチートだといわれるが、そりゃあ地球の知識を上手に使えたらチートになるわ。

だから、家族4人はある種チート持ちである。


話を戻そう。


父たちが忙しい中、手伝えない私は久しぶりに城下町に出ることにした。いつもの「冒険者リル」の格好で。

自分へのご褒美を買おうかなと散策してるが、いつもと様子が違う。

なんか暗い。コソコソ噂話している人もいる。なんか感じ悪い。

歩いていると、いつもの果物屋のおばちゃんから声を掛けられた。

「あら~、リルちゃん。だいぶ久しぶりじゃない?」

「そうですね。」

思い出してみれば本当に城下町に出てきていない。

隣の八百屋のおっちゃんも声を掛けてきた。

「ところで、リルちゃん。冒険者として意見が聞きたいんだが。」

「なんでしょう?」

「昨年の小麦等の出来高はどうだったのかな、と。」

「例年通りだったと聞きましたよ。」

それは、家族の中で話になってるから知ってる。

「でもな、出来が悪いと作物全体が値上がりしているんだよ」

「それはおかしいですね。」

今が春だとしても。

そうしたらおばちゃんが、

「国王は戦争がしたいのかい?」

え?そんはなずはない。

「3代にわたって平和だったんですよ。いまさら戦争する理由がないですよ。作物もとれる。貿易もできている。安定しているのに土地なんか欲しくはないでしょうよ。」

そう私は力説する。まずい、もしかして…

「そうだよね。でも様々なうわさが広まって皆が不安になってるんだよ。」

とおばちゃん。

やられた。これは情報操作だ。

不安の種を植え付け、国王不振につなげる。そして国王をすげかえるのだ。

誰だ、こんなことを思いつき、実行に移したのは。

「おばちゃん、おじちゃん。急用を思いついた。ごめんね。」

といい、急いで城に戻る。



まっすぐ執務室に向かいドアを開ける。そこには目を丸くした4人がいた。

ノックもしないでの入室である。当たり前である。ここだけは王女特権を使おう。

「父上、大変です。城下では、作物の出来が悪くて値上がりしてるだの、戦争を仕掛けようとしてるだの、国王を貶める噂が流れています。おそらく、調べればもっとたくさんのことがささやかれていることでしょう。国王不振になっています。父上のスキルでご確認を!」

そういうと、事態を把握した父は急いでスキルを発動する。あくまで雰囲気がいいか悪いかしかわからないが、それでも状況がつかめるだろう。

スキルをした父上は、顔を青ざめる。

「しばらく忙しさにかまけてチェックを忘れていたよ。とても悪い状態じゃ。」

そう父は言う。

すぐに何か手当を打たなきゃ、と思った直後、伝令がやってきた。

「緊急です。クーデターが発生しました。門前に殺到しています。」

やられた。決行は今日だったか。

「わかった。皆には訓練していたように戦わずに地下に潜伏するように伝えて。我々も脱出する。」

つい勢いで私が答える。ハッとして父を見ると、緊急事態だからとうなずいて認めてくれた。

伝令が去っていき、私は4人に伝える。

「皆は玉座の間へ。私は少しでも廊下で敵兵を倒して表から玉座の間へ向かう。」

玉座は守らなければならない。それが王家の務めらしい。

「わかった。気をつけてな、リルリアーナ。」

と、父上。

「はい。玉座の間で会いましょう。」

と私。

すぐさま4人は執務室の奥から王用の通路を使って玉座の間へ移動を始める。

それを見てから私は深呼吸をして気持ちを整える。

これから敵兵の中を突っ切るのだ。失敗すると串刺しリルちゃんのできあがりだ。

「攻撃力増大、身体能力増加、防御結界、破壊防止…」

様々な呪文を重ね合わせる。これで、スピードとパワーが上がり武器が強くなり折れにくくなる。

そして、防御結界は自分の周りに張り巡らされる。剣豪であれば破壊できるだろうが、雑魚には無敵だろう。

またこの結界は任意のものを透すことが可能。当然自分の武器は透している。

すなわち、私には攻撃が当てられず、私の攻撃は当たるのである。

さあ、準備はできた。いくぞ!

廊下に出ると、さっそく敵兵がいた。抵抗していないからって早いな。

「な、きさま」

といった直後に私に通過され、さっそく切られている。

そのままスピードに乗り、最速で玉座の間へと向かう。

この様子だと、敵の動きも早そうである。

何人もの敵兵を切り、玉座の間の入口へ到着した時、やはり敵が入り込んでいた。

「どけぇ~!」

声を張り上げ、まっすぐ玉座へと突っ込む。

一番前に巨漢の男がいたが、攻撃を避けられてしまった。残念。


敵に向きを変えながら、背中であいさつ。

「父上、ただいま戻りました。リルリアーナです。」

「よく戻った、リルリアーナよ。」

と父。

敵がいるので簡潔に交わすと、父上が巨漢の男に話しかける。

「お前には玉座は似合わない。王は儂のままじゃ。」

いよいよだ。私の12年にわたる隠し部屋、隠し通路、隠し仕掛け探しの集大成。

過去の王が玉座だけは守れといったのは、玉座に座るのは王ただ一人だけだからだ。

偽の王になど座らせるものか。

雰囲気を察して、宰相、母上、弟が玉座に手を掛ける。それくらい近づけばいい。

私も、急いで玉座に手をかけ、足元を確認する。

よし、全員乗ったな。

「では、さらばじゃ。」

と父上が言い放ち、玉座にある隠しボタンをぽちっと押す。

するとあら不思議、玉座周辺の床に丸く筋が入ったかと思うと、そのまま玉座ごとすとんと落ちていくではないか。

すぐに穴がふさがったため、私たちは真っ暗の中、でも悲鳴を上げずに我慢して落ちていく。

この仕掛けはある隠し部屋にマニュアルがあり、使い方が記載されていた。

その時、すぐに父上に伝え、中身を確認してもらっている。

その後、元の場所にマニュアルは戻しているが。

これ、絶対もと日本人が考えたんじゃないか?ロマンあるし。

それを言ったら城にはクーデターマニュアルが存在する。

敵と戦うよりすべて地下に潜り、相手に何もさせないというものである。いつからあるのかわからないが、今回はそれが役に立った。

でも被害0ではないんだろうな。くやしい。亡くなった人がいれば、冥福を祈ろう。当然味方にだよ。


終着点に近づいたのだろう、下に向かってエアーが吹きかけられており、スピードが落ちてきた。

床に着地したところで、私は明かりの術を使った。周りが明るくなる。

「はやくこっちへ。」

皆を誘導するのは私の役目。隠し通路は全て頭に入っている。

出口付近に、馬車が置いてある。この仕掛けを作った方、いたれりつくせりです。

馬車は普通の馬車で、6人ほど乗れる。今回は問題ないだろう。

すごいのは馬の部分。魔導馬で、魔力で操作できる。

しかも2頭(?)あるんだよ。やったね。

え、何年も朽ち果てずになんで残ってるのかって。そんなこと言わせるな。保存の魔法だよ。

みんなが乗り込んだのを確認してから、私は御者のところに座る。

何もかも私がしているようだが、実際操作できるのが私しかいないのだから仕方がない。

「では、出発進行~!」

そういって私は魔導馬に魔力を注入し、操作する。

始めは恐る恐る、慣れてきたら魔力量を操作して。

隠し出口は敵には知られていなかったようである。よかった。

なるべく見つからないルートを宰相に聞きながら馬車を走らせる。後ろからの追手はない。

郊外に出たところで、父上が馬車を止めるように言った。

「なんで?」

と私が聞く。父上は、

「ここで馬車を壊しておいて儂たちが盗賊か何かにやられた風をよそおう。」

「それはいいけど、その後の移動方法は?」

と母上。そりゃそうだ、ここから何で移動すればよいのか。

「大丈夫じゃ、行先は決めてある。私のテレポートで移動可能じゃ。このために用意した場所じゃないけどね、問題ないと思うよ。」

それを聞いて馬車を止め、皆が下りる。

私は急いで魔導馬をアイテムボックスにしまう。このアイテムボックスは物理的なものではなく、空間を広げてものを出し入れするのである。

魔導馬は他では見ないからね。

でもできれば元のところに返してあげよう。玉座を奪還したらね。

皆は魔法をドッカンドッカンと馬車に打ち込んでいる。もう見る影もない。

「これでいいじゃろ。皆、儂のところに集まっておくれ。」

皆が父上のところに集合する。そして父上はテレポートを唱え、目的地へと移動した。いったいどんなところだろう。


いかがだったでしょうか。

短編では語られなかった、具体的な脱走方法でした。

王女リルちゃんとヤツとの対峙は第1章ー3となります。

もう少しお待ちください。

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