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大阪を歩く犬3  作者: ぽちでわん
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リトル沖縄

そして再び大正に行った。

大正区には少し前にも行っていたのだけれど、リトル沖縄といわれているらしい平尾には行っていなかったし、やり残した感があったから。

前に歩いた西住吉街道で津守神社(西成区)へ。大正区に行くには電車のほか、船で渡るという方法もある。渡船は市が管轄していて、無料。前回は千本松渡船(大正区南恩加島~西成区南津守)を利用して帰った。

今回は、それより北側の落合下渡船(西成区津守~大正区平尾)で大正に渡ることにした


渡船の前に津守神社の北側を少し散策してみた。

古い田舎風の家が残っていて、少し驚いた。ほかの家に囲まれて狭そうに存在しているけれど、元々は田舎にぽつんとあったのじゃあないかなあと思われるおうち。

外でおばあさんが二人、「もううちらの家もがたがたやなあ」と話していた。


平成27年3月に閉鎖された(梅南小学校と統合したんだって)津守小学校と幼稚園は、森のように素敵に木々が茂っていた。

幼稚園の中には「津守新田会所跡」の碑があった。もともと小学校は1875年に会所の一室で始まったそうだ。

津守のこのあたりなんて、大きな車がゴウゴウと行き交う、殺風景な工場地帯ってイメージだった。でも本当は、緑の茂る素敵なところだったのだろうな。

小学校跡奥(西)にある津守神社では、一段高いところにいる狛犬たちが、「あれを見ろよ」(左)「おったまげたのお」(右)なんて、ビルや道路ばかりになった町のことを語っているみたいだった。

そしてその奥の産土社のいい顔をした狛犬は、それらを達観して、面白そうに眺めているみたいだった。


渡船場に進んでいった。

途中、コープの車がずらりと並んでいるところがあった。ここから出動して行くのかな。

渡船場に着くと、川幅は狭くて、橋なんて簡単にかけられそうなくらいのところだった。

他には自転車のおじいさんだけがいた。

それからあっという間に向こう岸に着き、渡船場を出ていくと小林公園だった。

ここから南下していくとリトル沖縄らしい。けれど他にも行きたいところがあったので、とりあえずは北上してぐるりと回ることにした。

小林公園の中を歩いていくと、銀杏がびっしり落ちていて、つぶれていて、汚いくらいだった。それから着いたのは千島公園。

この公園にある昭和山に登りたかったのだ。大阪市で2番目に高い山らしく、前回やって来たときも登るつもりでいたけれど、山がどこか分からなかった。園内で適当に高い方へ高い方へと歩いていくと、昭和山のてっぺんだった。

眺めがよかった。鳥や、秋の虫が鳴いていた。人も結構いた。健康志向の定年退職後の男女の集う場所って感じ。知り合い同士や、気ままな一人の人とかが、思い思いに過ごしていた。


それから元の道に戻って、再び北上していった。

この先にある千島ガーデンモールも行ってみたかった。大正って随分お店の少ないところに思えたのだけれど、以前に「ガーデンモールが大正区内の小売店舗面積の3割を超える」ってことが問題になったらしく、どんなに大規模なモールなんだろうと気になったのだ。

犬のわたしには全く関係のない話ではあったのだけれど。行ってみれば、ガーデンモールと言うにふさわしく素敵なところではあったけれど、そんなに驚く程の規模でもなく・・・ただ贅沢に土地を使っていて、あとは大正区内に小売店舗がかなり少ない、それが原因なだけではなかろうかと思われた。前回歩いていても、商店街とかほぼ消えかかっていたものな。

ついでにガーデンモールのパン屋さんでパンをゲット。

ガーデンモールの裏側の一帯は、前に歩いた化粧地蔵のいた通りだった。土地を贅沢に使っているものだから、裏側の一帯が表からも見えていた。


北上するのはこれにておしまい。東の大正通りに出て、今度は大正通りを南下していった。

左手に区役所と、千島公園の正面入口が現れた。公園の入口は、それは立派だった。区役所も立派だし、大正区の一番の中心地って感じなのかな。

前も歩いた臨港公園にも寄ってみた。

大正内港の桟橋のあたり。内港の北側の小林南公園にも行ってみた。2つの公園が内港を周遊してつながっているといいのだけれど、間には小さな工場の建物がいくつか並んでいて分断されていた。

船の関係の工場のようで、陸に上がった大きな船が構内に見えた。建物のドアの向こうに船の一部が見えているのって、なかなかの光景だった。ガンガンガンガンとにぎやかだった。


公園を少し散策してから、大正通りより少し東側を南下していった。

小林歩道橋で東に渡ったのだけれど、歩道橋からはハルカスが見えていた。しかもけっこう大きい。考えてみれば大正のとなりに難波があり、難波のとなりに天王寺があるのだものなあ。そのあともハルカスは見えていて、大正の人にとってハルカスは近い場所なのだろうなあと思った。

小林斎場なども過ぎて、今度は平尾公園が現れた。とたんになんだか静かになったような気がした。正面に見える食堂に入っていく人たちが見えた。

もう少しだけ進むと商店街「サンクス平尾」だった。この一帯がリトル沖縄らしい。けれど、こんな小規模なの!?とびっくりした。しかも半分くらいのお店が閉まっていた。半分より多いかも。定休日なのかな・・・。これは「リトル沖縄」という町というよりも、「リトル沖縄」を掲げた小さな商店街といったふう。買い食いを楽しみにしていたのだけれど、特に目を引くものもなかった。

大正通りに戻って、大運橋交差点を目指し、南下していった。

ここまでに屋根にシーサーが載っているおうちが2軒だけあった。


大運橋交差点近くには、前回は気付かなかった商店街があった。大運商店会と大運西商店会で、歩いてみると商店街らしく道路は舗装されていた。けれど、それだけ。ほとんど商店は残っていなくて、普通のおうちが並んでいた。

かつては、木津川沿いの大正区とあって、工員がいっぱい住んでいて、賑わっていたのだと思う。少し周囲を探索してみると、その時代のものだろう古いアパートなどがところどころにあった。

屋根の上に小さな物干し場所的なベランダが組んだ木でとりつけられているような古い建物。2階建てのアパートはドアとドアの間がかなり狭いのだけれど、2階の部屋にテラスをつけるより安上がりだったのかな、2階のそれぞれのドアに外付けの階段があって、1階のドア近くから上っていくようになっている。その階段の急勾配ぶりったら。横から見ると、45度どころじゃあなかった。

とある畳屋の中は、全く昭和のままだった。建物が古いだけじゃなく、昭和の頃のままに暮らしている人たちがいる、散歩をしていて、この頃気づいてきた。

人間の世界は、そこまで世代交代が早くない。それで町の中には、前の時代を残したままの人々が存在していて、面白いんだな。


大運橋交差点から、大運橋の方面に向かってみた。ブラックレインのロケ地にもなったっていう船町に渡る橋に向かって。

大型トラックしか通らないと言っても過言ではない。徒歩の人や、ましてや犬なんて場違いもいいところ。なんていうトラックの数。

トラックが列になって進んでいっていた。中古車センターがあったけれど、そこに置かれた車もみんなトラック。

そして「美人砕石積み込み24時間OK」って、何だろう・・・。


通り沿いには商店もあったようだったけれど、もう軒並み潰れていた。

ドアが小さすぎる建物なんかもあった。たいていの人はかなりかがまないと通れないだろうな。これは大正内港を掘った土で大正区内を底上げしたという名残なのだろう。水害対策として。ドアの途中までの高さが道路になって、ドアを小さくすることで対処したんだな。他に、階段で少し下ったところに1階のドアがある建物もあった。これはまあよくある。

そして意外なことには、地蔵が多かった。故郷から出てきた工員さんたちが、仕事に行く途中に手を合わせていたんだろうかな。

橋のたもとにたどり着くと、向こうに中山製鋼所、ブラックレインの撮影に使われたという工場が見えていた。

橋を渡らなくても、もうお腹いっぱいだ。

時間は12時45分頃。あちこちでウーウーとサイレンの音がなりだした。昼休憩の終わりを告げるサイレンだろうか? 別世界のようだった。


大運橋交差点に戻り、東に向かった。千本松大橋方面へ。

前は千本松大橋から西成区に渡船で渡った。今回は橋で渡ることにした。

高い位置にある千本松大橋は上るにも時間がかかって不便なので、橋があるにも関わらず渡船があるのだ。

おかあさんは、この時、もう大正に散歩には来ないと思っていたそうだ。一部で空気が悪すぎて、わたしをその空気に晒すのに罪悪感を感じたのだって。だから最後に、橋も渡っておこうと思ったんだって。


千本松大橋は車が渡るためにできている。

下を船が通ることを想定して、相当に高い位置に橋があり、そこまで車が上っていくために、螺旋になった坂が両岸にある。その形状から通称「めがね橋」。

その車用のかなり大きい螺旋の横に付随した歩道を上っていった。

けれど、そんなにのぼったわりには・・・だったかな。前回渡った千歳橋のインパクトには、まるで及ばなかった。

橋がアーチになっていて、前方があまり見えないせいか普通に道を歩いているのとあまり変わらなかったし、橋自体はそんなに長くなかったし、安定感もあった。横をトラックが走ると揺れたけれど、そんなでもない。

よかったのは、いろんなビルが遠くまで見渡せたことくらいかな。


そして前回と同じように帰っていった。

途中、コーナンPROの前に墓場があるって、今回、初めて気がついた。工場やらに囲まれたところ。

いつからあるのやら。墓の中の人たちも、周りの変遷ぶりに驚いているだろうなあと思った。

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