マスク
俺は昼休みは勉強しないと決めてる。
だから、おにぎりだけの昼飯の俺は。
すぐに食べ終わって、ゲームの攻略本を読んでるから、暇そうに見えるんだと思う。
帰宅部だし、運動不足だから。
女子に命令されたら、まぁ、
たまに、おつりもらえるし、行ってやるか、と妥協してた。
勉強のほうは、放課後だけ、
ちょっとの隙間時間にしていた。
翌日。
俺はキャンセルしたかったが、
そんな事はできない。
なにせ、バイトとはいえ、大事な仕事だから。
バレるのを恐れて、
俺なりの足掻きをしてみた。
マスク着用。
これなら、声がくぐもって
陰キャ俺=レンタル彼氏
なんて等式、なかなかどうして成り立たないだろ?
花時計公園の噴水前。
俺はヒナタを待ってた。
「ごめん、ごめん!用意してたら
遅くなっちゃった...」
「あ、いや、、」
「どの位、待っててくれたの?」
「15分位...」
あまり声を出したくないので、
素っ気ない返答を決め込む。
にしても。
思ってもみない女がきた。
ほんっとーに、橘ヒナタ???
「私の顔になんかついてる??」
「あ、いや、、」
「そんなに見つめられたら、恥ずかしいよ...」
プロフ写真とは全く違う印象の女が来たんだが、、、
でも、声は橘ヒナタだし...
「今日、暑いね、、
喉渇いたなぁ...喫茶店はいろ?」
「あ、うん...」
何が起きているのか、分からんが。
俺のタイプドストライクの清楚系黒髪美少女がやって来た件。
金髪ギャル、橘ヒナタはどこへやら、、
喫茶店は嫌だった。
マスクを取らなきゃいけないから。
ま、でも、変装してるし。
「ここのアイスコーヒー美味しいんだって」
「飲まないの?」
「の、のむ...」
くそ。
マスク越しに飲めたらいいのに。