去って行った者達の為に
生きる物の気配が一切ないゴーストタウン
闇に包まれたビル街に一度、二度と閃光が走る・・・!
それは戦いの光
銃とナイフ、そして接続者が放つ能力の光だ!
「チッ! ちょこまかと!」
「・・・ッ!」
戦っているのは二人の男!
元最強の暗殺者ナンバー・「1」と、死神と呼ばれた暗殺者ナンバー・「13」!
ドォンッ! ドガガガガガッ!!!
惜しみなく能力を発動させ「13」を攻撃する「1」!
「1」が放つ能力は全て規格外!
ただの発火能力がナパーム弾程の威力になり、旋風を起こす能力が全てを飲み込むハリケーンと化す!
「フッ・・・!」
だが一撃でも貰えば致命傷の攻撃の嵐の中を、その天性の危機察知能力を最大限に発揮し潜り抜ける「13」!
そして「1」へと接近すると、右手の大型マチェットと左手のハンドガンで攻撃を加えていく! しかし・・・!
「無駄な攻撃を何度も何度も! そんな攻撃で私の「斥力場」を破れる物か!」
その「1」の言葉の通り
「13」の攻撃は全て、「1」が自身の周囲に張り巡らせたバリアの様な能力によって防がれてしまっていた!
「・・・」
ダンッ! ギィンッ!!!
だがそんな事などお構いなしと言った様子で、「13」は冷静に攻撃を加え続ける!
そう、「13」の行動は決して無駄な物ではない。その狙いは・・・!
(「1」の能力は確かに強力だ。おそらく能力適正値では全ての接続者の頂点に君臨するレベルだろう。しかし・・・)
その時、「13」はその感覚を研ぎ澄ませ「聴いていた」のだ
(奴自身の能力はあくまで「神令」のみ。それ以外の能力を使うには「外部電脳」を使う必要がある。そしてそれ故に、強力すぎる奴の力が仇となる・・・!)
小さく唸る様な駆動音を立てる「1」の「外部電脳」・・・!
ヴォォォン・・・・・・ジッ・・・
「ッ!!!」
その音に異音が混ざる瞬間を!!!
ヒュンッ!!!
瞬間! 「13」は右手のマチェットを「1」に向かって投げつけ、同時に突撃を仕掛ける!
「無駄な事を・・・!」
「13」の投擲に対し、「1」は回避する素振りすら見せず
その場に立ったまま、「斥力場」で飛来してきたマチェットをはじく! だが・・・!
「全弾持っていけ・・・!」
「何・・・?」
その間に至近距離まで間合いを詰めていた「13」は!
両手にハンドガンを構え、「1」の周囲の斥力場に対し弾丸を連射する!
ダンダンダンダンダンッ!!!!!
しかし、当然この程度の攻撃で「1」の斥力場が破れるはずもない
「13」が放った銃弾は全てはじかれてしまう! だがその時・・・!
ジッ・・・ジジッ・・・!
「ッ!? 何ッ!?」
「外部電脳」の駆動音!
それに混ざる異音が大きくなったと同時に「1」の斥力場が揺らぐ!
「ッ!!!」
その瞬間!
「13」は弾切れになっていた右腕の銃を捨てると、右手の手のひらを真っすぐ「1」に向かって突き出す! そして・・・!
ガシャンッ!
「何ッ!?」
「撃ち破れ・・・!」
「13」の義手の手の平が開き! そこからグレネード弾が発射された!!!
ドガァンッ!!!!!
至近距離からの榴弾による攻撃!
しかしその攻撃でも「1」の斥力場を破る事は出来ない! だが・・・!
ジジッ・・・! ボンッ・・・!
次の瞬間! 僅かな破裂音と共に、「1」の斥力場が消え失せた!
「くっ!!!」
想定外の事態にすかさず間合いを離す「1」!
それに対し「13」も左手の銃のリロードをすべく間合いを離す!
・・・・・・
互いに間合いを離した「13」と「1」
激しい嵐が治まり凪が訪れる。そして・・・
「チップが焼き切れたか・・・! なるほど・・・今までの無謀な攻撃はこれを狙っての事か・・・」
自らの「外部電脳」から「斥力場」のチップを取り外し、そう呟く「1」
そんな「1」に対し「13」が告げる
「お前の能力適正値は確かに規格外。それ故にお前が扱う能力はどれも強力だが、逆にそれが仇となった。能力が強いからこそ、「外部電脳」やチップにかかる負担も大きい。ましてや「4」と戦った後の連戦。一番酷使していたその能力が限界を迎えるのは当然だ」
そう、いくら「1」が規格外の能力を発揮できるとは言え「外部電脳」自体は通常の物
その耐久値には限界がある
「まんまとしてやられたと言う訳か・・・」
「13」の攻撃により能力を酷使しすぎた事により、「斥力場」のチップが熱暴走を起こし破壊されたのだった。しかし・・・
「だが・・・それが何だと言うのだ?」
そう言うと、「1」は「外部電脳」から取り外した「斥力場」のチップを地面に落とし
グシャリと、足で踏み潰した
「たかが能力の一つが使えなくなったからどうだと言うのだ? 私の優勢は何一つ変わっていない」
そして不敵な笑みを浮かべる「1」
「そうだ、やはり貴様に出来る事などその程度。オリジンが選ぶのは、最後の接続者となるのはやはり私だ! そして私はこの世界を救う! 救世主・・・! いや、新たな神となるのだ!!! フッハハハハハッ!!!!!」
そう宣言すると、「1」は大声で笑い声を上げる
そう、「1」の言葉は正しい
今更「斥力場」が消えた所で、「1」と「13」の如何ともしがたい戦力差が埋まる訳ではないのだ
だがその時・・・
「そうか・・・そういう事だったのか・・・。ようやく理解出来た・・・」
「何?」
突然、「13」が何かに納得した様に呟いた
その言葉に対し、「1」は怪訝そうな表情で問いかける
「理解出来ただと? 一体何を理解したと言うのだ?」
その「1」の問いに、「13」は冷たい眼差しのまま告げる
「俺がお前に抱いている感情の正体。そしてお前が俺に抱いている感情の正体だ」
「私がお前に抱いている感情だと・・・?」
「13」の言葉の意味が分からず、眉に皺を寄せる「1」
そんな「1」に対し、「13」は落ち着いた声で話し始める
「今まで・・・この東京で戦ってきた日々の中で、俺は色々な「接続者」、「暗殺者」、そして力を持たない人間に出会ってきた・・・」
「4」、安栖さん
「善人も居れば、悪人も居た。希望の為、欲望の為、その戦う理由もそれぞれだった・・・」
「6」、「9」、吹連課長、飛山副課長、鳥羽監査官
レン、ユウヤ、アイリ、ラオ・フーシェン
「そしてその誰もが、自分だけの戦う理由、生きる理由を持っていた」
「5」、「7」、「8」
今まで戦ってきた、名も知らぬ「接続者」達
「そう、誰もが・・・己だけの信念を持っていた」
カズヤ、ミナ
施設で命を落とした全ての兄弟達
そして・・・
(殺せ・・・! 全ての接続者を・・・!)
俺の心に生きる意味を与えてくれたパートナー・・・
「だが・・・」
そして「13」は、左手の銃口を突きつけながら「1」に告げた
「お前は違う」
「な・・・に・・・?」
「お前からは何も感じない。お前の言葉には情熱も執念も何もない、お前の語る言葉は全て空虚なだけだ。教えてやる、俺がお前に抱いている感情、そしてお前が俺に抱いている感情。それは・・・「同族嫌悪」・・・」
そう「13」が見た「1」の姿
最強の暗殺者と呼ばれた男の本当の姿とは・・・!
「お前は信念を持たない人間。俺と同じ・・・「生きる意味を持たない人間」だ」
「ッ!!!」
その言葉に、「1」は激しく動揺する
表情からは余裕が消え去り、冷や汗が流れていた。しかし・・・!
「馬鹿な・・・ッ!!! そんな事があってたまるか!!! 私は!!! この世界を救うのだ!!! オリジンの力でこの世界を!!! 「接続者」達による理想の世界へと変えるのだ!!! それが私の信念だ・・・!!!」
必死の形相を浮かべながらそう叫び声を上げる「1」
だがそんな「1」に対し、「13」は冷酷に告げた
「違う。それはお前の物ではない」
「なっ!?」
「同じ存在である俺だからこそ分かる。お前のそれは、誰かから奪ってきた物だ」
「ッ!!!」
その瞬間、「1」の脳裏にある男の言葉が浮かぶ
(九代。俺の夢は・・・この東京を・・・!)
だが! その言葉を振り払う様に「1」は叫ぶ!
「黙れ黙れ黙れエェッ!!! これは私の理想だ!!! 私の信念だ!!! 「コレ」は!!! 私の物だァァァッ!!!」
そう叫び、狂気と殺意に満ちた視線を向ける「1」!
だが「13」は冷たい眼差しのまま、静かにその言葉に答えた
「俺達は同じだ。持たない故に、誰かのそれに寄り添わなければ生きていけない。だが・・・俺とお前とで一つだけ違う事がある」
「何ッ!?」
「お前は持たないが故に奪う。誰かの願いを、想いを奪い歪め、自分の物にしてしまう」
「ッ!!!!!」
「だが・・・俺は・・・」
その時、「13」の右目が薄紫に輝きだす・・・!
生きる意味を持たない青年、死なない為だけに殺し続ける亡霊
白髪の暗殺者、死神の「13」
(そう・・・俺はずっと勘違いをしていた・・・)
今なら分かる
あの日本当は何があったのか、5年前の真実が・・・
「ミナァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!」
ダンッ!!!
少年の放った弾丸が少女の胸を貫く
「ありがとう・・・カズミ兄さん・・・」
そして白髪の少女は笑顔を浮かべそう呟き、倒れた
「ミ・・・ナ・・・」
そして少年も力尽き、その目を閉じる
それが5年前、「13」が見た崩壊の日の光景。だが・・・
「あ・・・カズミ・・・兄さん・・・?」
数分後、少女はゆっくりと目を覚ます
そう、この時少女はまだ生きていたのだ
目を覚ました少女は這う様にしながら倒れた少年の元へ向かう。しかし・・・
「え・・・? あ・・・ああ・・・!!! カズミ・・・兄さん・・・!!!」
その少年は、既に息絶えていた
全ての力を使い最後の引き金を引き、その直後に息を引き取ったのだ
「う・・・! うあああああっっっっっ!!!!!」
助けたいと思った人が死に、逆に自分が生き残ってしまった
少女は張り裂けんばかりの嘆きの声を上げる。だがその時・・・!
キィィィィンッ・・・
「あ・・・」
繋がった、と感じた
誰かの心に、意思に触れたと感じた
それが何なのかを理解するよりも速く、少女は自分がやるべき事を理解する
「カズミ兄さん・・・」
息絶えた少年の右手を持ち上げ、その手を繋ぐ
「今・・・運命を・・・!」
次の瞬間! 少女の瞳が輝き能力が発動する!
「「根源接続」! 「運命再構築」!!!」
それは過去の運命を捻じ曲げる能力
いや、奇跡の術だった。しかし・・・
「う・・・っ!」
重傷を負った少女の身体はその奇跡の術に耐えきれず、崩れ去ろうとしていた
だがしかし、少女は能力を止める事なく発動し続ける! そして・・・!
「今から・・・全てをカズミ兄さんに・・・。私の能力「接続」で私とカズミ兄さんを接続し・・・この能力の全てをカズミ兄さんに移植する・・・!」
能力が発動し、二人の身体が光に包まれた!
オリジンから送られてきたミナに宿る接続者としての力
それらが全て、ただの人間であった少年の脳にインストールされる!
「私の全てを・・・カズミ兄さん・・・」
全ての能力の移植が完了する
光は収まり、少年の髪は真っ白へと変わっていた
そして少女は穏やかな笑みを浮かべ・・・
「生き・・・て・・・」
少年の手を握ったまま、息を引き取った
ずっと苛まれてきた
あの日、ミナを殺した俺に生きる意味はあるのかと
だが違った、そうじゃなかった。俺は・・・「託されていた」んだ
あの日死んだ俺は、ミナの命と想いを託されもう一度この世に産まれた
そうだ・・・この命に、意味はあった!
なら、俺は・・・!!!
その時! 「13」の右目が更に眩く光を放ち始める!!!
そして「13」がホルスターからカズヤの銃を取り出し・・・!
「カズヤ・・・そしてミナ・・・。力を貸してくれ・・・!」
そう呟いた、その瞬間・・・!
(残滓だ・・・俺の中にあったミナの残滓・・・。この先、お前に必要になるはずだ・・・)
「13」の「左目」も眩い程の光を放ち始めた!!!
「なっ!? この力は!?」
「13」の力の発動に、「1」が驚愕の声を上げる!
「どういう事だ!? この強力な力の奔流! ナンバー・「13」は「接続者」としては低ランクの能力者だったはず!!! い、いや・・・これは・・・!?」
その時、「1」は「13」を見ながら茫然とした顔で呟いた
「いや・・・お前は・・・誰だ・・・?」
違う、「13」ではない
「13」の背後・・・
いや、正確には「13」の中に居るソレは・・・!
「ッ!!!」
その時! 「1」の目には確かに見えた!
「13」を守護する様に背後に浮かぶ、白髪の少女の姿が・・・! そして・・・!
「・・・そうか、貴様か。「貴様」が!!! 「10人目の資格者」か!!!!!」
「1」は確信と怒りの声を上げた!!!
叫び声を上げる「1」に対し、「13」は告げる・・・!
「お前は奪う。だが・・・俺は背負う」
「ッ!?」
「敵であった者、味方であった者。俺が出会った全ての人の想いを背負い、次の世代へと繋いでいく。彼らから託された命を未来へと運ぶ、その為に戦う。全ての、去って行った者達の為に・・・。それが・・・俺の生きる意味!!! 俺だけの信念だ!!!!!」
そして! 両手の銃を十字に構える「13」!!!
「黙れッ!!! やはり貴様はイレギュラーだった!!! 「接続者」でも「資格者」でもない!!! 貴様だけは塵も残さず完全に消滅させる!!! この世界から消え去れ!!!!!」
同時に「1」もナイフを構え突撃の体勢に入る!!!
「ナンバー・「1」!!!!!」
「サーティィィィィンッ!!!!!」
そして今! オリジンを巡る全ての戦い!!!
最後の決着の時が来たのだった・・・!!!




