最強 対 最強
宇宙より飛来した接続者を産み出す謎の物体、ゼロ・オリジンを奪取する為
ナンバー・「1」の確保を目論む多国籍軍
これに抵抗しつつ、オリジンの完全制御を目論むナンバー・「1」と
ナンバー・「1」が率いる接続者達
そして、政府からの要請によりオリジン奪取とオリジン制御のどちらも阻止すべく
ナンバー・「1」の暗殺を目論む東京特別治安維持課
オリジンを巡る三つ巴の戦いは、多くの犠牲を出しながら遂に最終局面を迎えつつあった
そして今・・・
「やはりお前が来たか・・「4」」
「・・・フン。ついに出てきたな・・・。その命貰うぞ、ナンバー・「1」!!!」
元暗殺課最強の暗殺者、ナンバー・「1」と
現暗殺課最高位、ナンバー・「4」
最強と最強・・・!
二人の暗殺者が邂逅する・・・!
街頭の灯りも消えた深夜のビル街
月の灯りすらもない暗闇に包まれた街中で、距離を置いて向かい合う二人の暗殺者
その時、「4」がいつも通りの不敵な笑みを浮かべながら「1」に向かって言った
「クック・・・玉座でふんぞり返っておるのはもう仕舞いか? まあ手駒の大半を失ったのでは仕方ないか」
「1」を挑発する様に、「4」はあざけ笑う
「「5」も「7」も「8」も死んだぞ。資格者の戦いとやらも後はお前が死ねば終わり。もはや貴様の計画もご破算となったのではないか?」
しかしそんな「4」の言葉に対し、「1」は腕を組んだまま至って冷静に答えた
「彼らが敗れたのは残念だ。しかし、計画は何一つ狂ってなどいない」
「何・・・?」
「この計画は私一人が残っていれば完遂出来る。そう・・・彼らの犠牲も含めて、最初から最後まで「計画通り」だ」
その「1」の言葉に、「4」は苛立った様に眉をしかめる
「フン・・・つまり自分以外の人間は、最初から全て捨て駒だったという訳か。報われんな、どいつもこいつも・・・」
「犠牲を嘆く必要はない。彼らが望んだ世界は間違いなく訪れる、私がオリジンと完全接続を果たす事によってな」
そう言うと「1」は大仰に両手を広げ、空を見据えながら言う
「まもなくこの世界は終わり、そして新生する。この私が、この世界を救う救世主となろう・・・!」
その「1」の宣言に対し、「4」の眼差しが感情を持たない冷たい物へと変わっていく
「そうか、なら儂がその妄想を打ち砕いて現実という物を見せてやろう」
瞬間・・・!
二人の間に漂っていた空気が一変する!
もはや言葉は必要ないとばかりに戦闘体勢へと入る「1」と「4」!
もはや両者共に目の前の存在に対する認識は一つ
殺し、壊し、物言わぬ肉塊へと変貌させる事だけ・・・!
「何も成せず・・・何も変えられず・・・。妄想を抱いたまま、ただただ無意味に死ね、ナンバー・「1」・・・!」
そして今、決戦の火蓋が切られたのだった・・・!
戦闘態勢に入った「4」は素早く両手に銃を構える!
左手にはハンドガン、右手には小型のサブマシンガンを持ち
狙いを「1」に向かって定める! そして・・・!
ダンッ!!! タタタタタッッッッッ!!!
両手の銃を一斉に斉射する「4」!
しかし、襲い掛かる弾丸の雨に対し「1」はその場から一歩も動かず・・・!
「外部電脳起動・・・!」
キンッ!!!
「なっ!?」
能力で目に見えないバリアの様な物を張り、弾丸を弾き返した!
「フン・・・ならば・・・!」
弾丸を防がれた「4」はボソリと呟くと、両手の銃を連射し弾幕を張りながら「1」に向かって突撃する!
「来るか・・・!」
突撃してくる「4」を迎撃すべく能力を発動させる「1」!
「「磁力制御」・・・!」
「1」が能力を発動させたと同時に!
周囲の看板やガードレール等、金属で出来た物体が宙に浮かぶと
次の瞬間! 「4」に向かって雨の様に降り注いだ!
ドガガガガガッ!!!!!
周囲一帯を押しつぶす圧倒的な質量攻撃! しかし・・・!
キィン・・・!
「4」の瞳が薄紫色に発光!
「4」の能力、「絶対回答」が発動する!
そして! 目の前に降り注ぐ金属の雨を一切意に介す事なく突撃!
ヒュンッ・・・!
「4」のほんの僅か数センチの場所を標識のパイプが、車のボンネットが掠めていく!
しかし! 無数の飛来物の一つたりとも「4」には命中していない!
「正解のルートは見えておる・・・!」
「1」の仕掛けた攻撃のほんの隙間・・・!
人一人が通れるギリギリの隙間を「4」は全力疾走で駆け抜ける!
「クッ!」
「4」の突撃を止める事が出来ず、間合いを離すべく後ろへ飛ぶ「1」!
だが後ろへ飛ぶ「1」より、全速で前へ突き進む「4」の方が速度は上!
10メートル、8メートル、5メートル・・・!
一気に両者の間合いが詰まっていく!
そして2メートル程の距離へと近づいたその時・・・!
「4」は弾切れになったサブマシンガンを捨て、背中からショットガンを取り出し構えた!
バァンッ!!!!!
至近距離から放たれるスラッグ弾!!!
そして「4」は左手のハンドガンも捨てると、ショットガンをリロード!
バァンッ!!!!! バァンッ!!!!!
そのまま連射!
ありったけの弾丸を「1」に向かって叩き込む! しかし・・・!
「チッ・・・硬いのう・・・!」
「1」が張ったバリアはこの至近距離からの全弾発射をも防ぎきる!
そして「4」の攻撃を防ぎ切った「1」はすかさず反撃を放つ!
「外部電脳起動・・・! 「雷撃」!!!」
「ッ!」
地面に突き刺さった金属を伝って「4」の足元に放たれる雷撃!
しかし「4」は寸前で大きく後方に飛びこれをかわす! だが・・・!
「空中なら回避出来まい・・・!」
その時! 「1」の外部電脳がブォォンッと駆動音を鳴らし、能力が発動!
ゴオッと空気を切り裂きながら! 無数のナットが弾丸の様に「4」に襲いかかる!
「フンッ・・・」
目の前に迫る弾幕に対し、「4」は手に持っていた弾切れのショットガンを投げる!
そしてショットガンがナットの一つを弾き飛ばし・・・!
キンッ! カンッ! キンッ!!!
その一つのナットが他のナットを弾き飛ばし、それがまた別のナットを弾き飛ばす!
そして全てのナットが「4」に命中する事なく背後へと消え去る!
「何だと!?」
ほんの僅かな行動だけで全ての攻撃を回避した「4」に「1」は驚愕の表情を見せる
そして無傷のまま着地した「4」は、「1」に向かってやれやれといった様子で言う
「この程度で儂の「絶対回答」を抜けると思ったか?」
「チッ・・・」
舌打ちをする「1」
そして両者は大きく間合いを離したまま睨み合う
その時、4はフンッと鼻息を鳴らしながら言った
「硬さだけは大したもんじゃな。斥力場を作り出す能力か、厄介な能力を手に入れよって」
「大した能力ではない。実際この能力を使っていた接続者は、弾丸一発を止めるのが精々だった。だが、同じ能力でも使い手が違えば威力も変わる」
そして「1」は余裕の笑みを浮かべながら言った
「お前の能力「絶対回答」は脅威ではあるが、攻撃に関してはお前自身のそれに依存する。回避する事は不可能だが、防御なら出来る。お前が使う銃火器の類では、私の周囲360度を覆うこの斥力場を抜く事は出来ん」
そう言うとニヤリと笑みを浮かべる「1」
「1」の言葉の通り、今「4」の手持ちの火器で「1」の斥力場を抜く事は不可能であった。しかし・・・
「ハァ・・・」
その言葉に対し、「4」は大仰にため息をついてみせた
そして呆れた様に「1」に答える
「攻撃力が足りんじゃと? 今更そんな分かり切ったご高説を上から目線でご苦労じゃったな。自分の能力の欠点など百も承知じゃたわけ・・・!!!」
次の瞬間!
「4」は両手で持てるだけのグレネードを取り出すと「1」に向かって放り投げた!
ドガァンッ!!!!!
凄まじい爆発が「1」の周囲に巻き起こる!
しかし! やはりこの攻撃も「1」の斥力場の前には無意味! だが・・・!
「フンッ・・・、この程度で・・・。何?」
爆風が晴れると同時に「1」が目にしたのは、背中を見せ逃走する「4」の姿!
「逃げるだと? いや・・・」
その時、「1」から間合いを離しながら、「4」は耳の通信機に向かって手を当てる
「聞こえておったじゃろう! 武器を寄越せ双葉!!!」
その言葉に対し、すぐさま応答する吹連
「コンテナの準備は出来ているわ。装備は?」
「最高火力を寄越せ! それと例のブレードも!」
「了解よ」
すぐさま目の前のコンソールを操作し支援準備を終える吹連。そして・・・
「ポイント確認。武装コンテナ射出!」
ドォンッ!!!!!
暗殺課前線基地から武器を搭載したコンテナが射出された!
「よし!」
宙に打ち上げられた光!
その光の着弾地点に向かって走る「4」!
「暗殺課の支援か・・・! させるか!」
コンテナに向かって手をかざし撃墜しようとする「1」! だが次の瞬間!
「ッ!? 何っ!?」
ドォンッ!!! ドォンッ!!!
「1」の周辺に砲撃が着弾する!!!
「チッ! 「2」か!? やってくれるな!!!」
砲撃の命中率は高くはないが、直撃を受ければ厄介だ・・・!
砲撃を嫌いその場から離れる「1」
「足止めは成功したわ、「4」!」
「分かっておる!」
そしてその間に、「4」がコンテナに到着する・・・!
「さて・・・!」
コンテナの中の武器を取り出すと、ニヤリと笑みを浮かべながらそう呟く「4」
そして近くのビルの壁を蹴り上がり、あっという間に屋上へと駆け上がる
ジャキッ!!!
「4」が手に持つのは長大な砲身を持つアンチマテリアルライフル・・・!
屋上へと到着した「4」は流れる様な動作でそのライフルを構え射撃体勢に入る!
「50口径じゃ・・・。防げるものなら防いでみろ・・・!」
そしてスコープを覗き「1」に狙いを定めた!
ズガァンッッッ!!!!!
激しい衝撃音と風圧!!!
それとほぼ同時に弾丸が「1」の張った斥力場に着弾する!!!
「ぬっ!!! ぐうっ!!!」
能力を全開にしてこれを止める「1」!
しかし弾丸の勢いを止める事は出来ず、弾丸は「1」の張った斥力場を貫通する! しかし・・・!
ヒュンッ!!!!!
「1」の横を掠め地面に着弾する弾丸!
斥力場に弾丸が着弾し勢いが衰えたほんの一瞬!
その一瞬の間に「1」は回避行動を取り、ギリギリでこの弾丸を避けてみせた!
「チッ!!! 仕留められなかったじゃと!?」
すぐさま2発目の射撃体勢に入る「4」!
「クッ! させん!!!」
だがそれに対し! 「1」はその場に座りこむと、地面に手を当て能力を発動させた!
「外部電脳起動・・・! 「地震」!!!」
ドガァンッ!!!
周囲1キロ程のみを覆う巨大地震!
「狙いが・・・!!!」
あまりの揺れに狙いが定まらず射撃する事が出来ない「4」!
「この揺れ・・・! マズイ!!!」
震度7・・・!
いや、もはや通常の地震で定義する事の出来ない大きさの揺れだ!
周囲のビルが一斉に倒壊を始め、「4」の居たビルも崩れ落ちる!
「出鱈目やりおって!!!」
ライフルを抱え、倒壊するビルを飛び移り瓦礫の下敷きになるのを回避する「4」!
そして周囲のビル街は全て瓦礫の山へと変わり果てるのだった・・・!
「1」の放ったとてつもない威力の能力により瓦礫と化したビル街
その中心に立つ「1」は「4」の方に視線を向けながら言った
「これで狙撃はなくなったな・・・」
もはや周囲には狙撃が出来る様なポイントはない、全ての建物ごと綺麗さっぱり消え去った
「チッ・・・」
舌打ちしながら無用の長物と化したライフルを捨てる「4」
(周囲一帯を更地にしてしまいおった・・・。相変わらずとんでもない能力の強さじゃ・・・)
凄まじい威力を誇るナンバー・「1」の能力
しかし、「4」は現状に違和感を覚えていた
(おかしい・・・。奴の使う能力は全てが規格外の威力・・・、しかし「それだけ」・・・。奴の使う能力は「強力なだけ」じゃ・・・)
並の接続者相手ならばそれだけで十分な脅威となるだろう
しかし、シングルナンバー同士の戦いともなれば「1」の能力は圧倒的に決定打に欠けている
実際、「1」の繰り出した攻撃はいずれも強力だったが「4」は無傷
「1」も無傷ではあるが、先程の「4」の狙撃でほんの少し回避が遅れていればそれで終わっていた
一見、無敵対無敵に見えるが
「絶対回答」による回避能力を持つ「4」が敗北する確率は限りなく低い
(これなら殺しても蘇る「5」の方がよっぽど厄介じゃ・・・。ハッキリ言って「1」は儂の脅威ではない)
人間を殺すのに強力な能力など必要ない、弾丸を頭か心臓に叩き込めば人は死ぬ
暗殺者の戦いに必要なのは強力な能力などではなく、「確実」に人を殺せる能力なのだ
その点、「1」の力は「最強」と言われた暗殺者としては肩透かしと言う他ない。しかし・・・
(だが、気になるのは・・・。奴はまだ「自分自身の能力」を一度も使っておらんという事じゃ・・・)
そう、威力こそ規格外ではあるものの
「1」が使っているのは全て「外部電脳」に搭載された他人の能力ばかり
接続者である「1」本来の能力は一度も見せていない
(元暗殺課最高位ナンバー・「1」、奴の能力を知る者は誰もおらん。奴は暗殺課に所属しておった頃から自身の能力を完全に秘匿しておった・・・)
能力を使わずとも、「1」という暗殺者の戦闘力は並み外れた物だった
ありとあらゆる任務を、その卓越した身体能力と頭脳だけでこなしてきたのだ
当時から「1」が暗殺課を裏切る事を考えていたとは思えないが、万が一の可能性を想定し能力を隠していた事は否定出来ない
(奴の能力が何かは分からん・・・。だが接続者の能力が何でもありな以上、未知であると言う事はそれだけで脅威・・・)
使う程もない程大した事のない能力? もしくは大きなデメリットや特殊な発動条件が必要なのか?
疑念はさらに疑念を生み、凄まじい脅威となって「4」の心を占めていく
(今、表に出ておる手札では儂が圧倒的に勝っておる・・・。だが奴の持つあの一枚の伏せ札、それがジョーカーであった場合・・・)
「絶対回答」がある限り、どれだけ硬い斥力場があろうとどれだけ強力な能力があろうと「4」の優位は動かない
にもかかわらず、「1」の持つ一枚の「未知」のせいで勝利を確信しきる事が出来ない
(嫌な感じじゃ・・・、今まで感じた事のない嫌な感じ・・・。死神に鎌を突きつけられているのは奴か? それとも儂か・・・?)
暗殺者としての勘がささやいている、この先には「死」が待ち受けていると
次の攻防の後、どちらかが死ぬと・・・
その時、慎重に出方を伺う「4」に対し「1」が言った
「どうした? まさか臆したわけではあるまい。それとも・・・私の「能力」が気になっているのか?」
「・・・」
「1」の言葉に「4」は無言で答える
だが、「1」はその沈黙を肯定と受け取るとニヤリと笑みを浮かべ言う
「一つだけ教えてやる。私の能力は絶対無敵、敗北する事は100%あり得ない。私の能力を見る時、それはお前が死ぬ時だ」
その言葉に「4」は怪訝そうな表情で答える
「随分と自信がある様じゃな。それにしても絶対無敵などと、よくもそんな大言壮語をほざける」
「ただの事実だ。私の前に立つ者は、絶対に私に勝利する事はない。「4」、自らの命を惜しむのならこの場から立ち去れ。元は同じ暗殺者として戦った仲だ、「見逃してやる」」
その言葉に対し「4」は戦闘中である事も忘れたかの様なキョトンとした表情を見せ、そのまま俯き地面を見つめる。そしてしばらくして・・・
「クッ・・・クックックッ・・・!!!!! クッハッハッハッハッハッ!!!!! 「見逃す」じゃと!? この儂を!? ああ・・・もう笑うしかないのう!!!!!」
顔を上げ大声で笑い声を上げる「4」
そしてひとしきり笑い終わった後、腰の後ろに取り付けた鞘から大型のブレードを抜くと凶悪な笑みを浮かべ笑う!!!
「貴様の能力が何であろうが知った事か! 暗殺課の最高位このナンバー・「4」と! 儂の「絶対回答」を抜ける物なら抜いてみろ!!!!!」
その言葉と共に「4」の瞳が輝きを放つ!
「いいだろう。自ら死地へ向かうと言うのなら、この私がお前に引導を渡してやる。ナンバー・「4」」
「クックッ! なら試してやろう! 生き残るのは儂かお前か!!!」
そして! 「4」は「1」に向かって最後の攻撃を仕掛けに行くのだった・・・!




