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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第九章:資格者達は玉座を目指し、その命は最後の輝きを見せる
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終に煌めく双銃


「行くぜッ!!! カズミィ!!!」

「ああ!」


双子の暗殺者「7」と「8」に対し、共闘関係となり立ち向かう「13」とカズヤ!

二人は十字銃術の構えを取り、「7」と「8」に向かって突撃する!


「「下位ナンバート死ニゾコナイガ手ヲ組ンダ所デ!!! 2対2デ僕達ノ連携ニ勝テルワケガナイ!!!」


突撃してくる二人を前に、中華刀を構え迎え撃つ体勢の「7」と「8」!

その時、双銃を構えたまま突撃するカズヤが不敵な笑みを浮かべ叫ぶ!


「ハッ!!! 笑わせるな!!! テメエらに見せてやる!!! 本当の連携ってやつを!!!」


ダダンッ!!!


そして同時に発砲!

「7」と「8」のそれぞれに対し弾丸が迫る!


「「コンナモノッ!」」


迫ってきた弾丸をあっさりと回避する「7」と「8」、しかし・・・!


キィンッ!!!


その時! カズヤの瞳が輝き、能力が発動する!


方位転換ベクトル!!!」


瞬間! 回避された弾丸が軌道を変え、再度「7」と「8」に襲い掛かった!


「「チッ!!! 小細工ヲ!!!」」


ギィンッ!


だが「7」と「8」はこの攻撃にもすぐに対応!

刀で弾丸を弾き飛ばす! だが、その瞬間・・・!


「「何ッ!?」」


「7」と「8」が目の前の光景に思わず声を上げる

目の前には両手に銃を構えながら突撃してくるカズヤの姿のみ!

同時に突撃してきていた「13」の姿が消えていたのだ!


「「ナッ!? 何処ヘ消エタ!?」」


カズヤの弾丸を切り払う為に視線を外したほんの一瞬

その一瞬の間に「7」と「8」の視界から消えた「13」! だが次の瞬間!!!


「・・・ここだ!」


カズヤが身を翻したと同時に、その真後ろから「13」が現れた!

そしてカズヤはそのまま回転し「13」に向かって回し蹴りを放つ!


「行け! カズミ!!!」


それに合わせるように「13」は宙に飛ぶと、カズヤの放った蹴りを土台にして前方へと一気に加速!


「「ッ!?」」


ドガァッ!!!


「7」めがけてロケット弾の様な飛び蹴りを放った!!!


「「クッ! コノッ!!!」」


咄嗟にガードしたものの、攻撃の勢いで吹っ飛ぶ「7」!

吹っ飛んでいく「7」に対し、「13」は即座に間合いを詰め追撃を仕掛けに行く!


「「ヤラセナイッ!!!」」


その時! 「7」の追撃に向かう「13」に対し、「8」が攻撃を仕掛ける! だが!


ギィンッ!!!


「「ッ!?」」

「おっと! テメエの相手は俺だ!!!」


間に立ちふさがったカズヤがこれを阻止!

そのまま「8」に向かって攻撃を仕掛ける!


「「クッ! 分断サレタダト!!!」」


単独での戦闘を余儀なくされた「7」と「8」! しかし!


「「1対1デナラ勝テルト思ッタカ!? 僕達ヲ甘クミルナ!!!」」


元シングルナンバーの暗殺者!

その戦闘能力は単独でも「13」とカズヤに引けは取らない!

互角の戦いを見せる「7」と「8」! だが・・・!


「「・・・グッ! グウッッッッッ・・・!!!」」


戦闘の最中、「7」と「8」が同時に苦しみうめき声を上げる!

その双子の様子に、「13」は冷静に呟く


「やはりな・・・感覚の全共有、そんな物が長時間保つわけがない・・・」

「「ガッ・・・! 馬鹿ヲ言ウナ!!! コンナ程度デ僕達ガ限界ニ達スルワケ・・・!」」


そう、自分達の事は自分達が一番よく知っている

「二身同体」による感覚の全共有

激しい負担を伴うとは言え、限界に達するにはまだしばらくの猶予があるはずだ


「いいや、テメーラは気づいていない! 自分達の弱点を!!!」


その時! カズヤが右手の銃剣で攻撃を仕掛けようと構える!


「「ッ!」」


それに対し即座に回避の体勢に入る「8」! だが・・・!


ザシュッ!!!


「「ナニィッ!?」」


その瞬間! 即座に左手の銃剣が放たれた!

しかし! それはカズヤによる「8」への攻撃ではない!

左の銃剣で攻撃を仕掛けたのは「13」! 斬り裂かれたのは「7」の右腕だ!


「この通り。感覚を共有しているせいで、8(こっち)へ仕掛けた攻撃にほんの一瞬だが、7(そっち)まで反応してしまう!」

「その隙を突けば、攻撃は容易い・・・。さらに・・・!」


「7」がダメージを負った瞬間! カズヤが「8」へ攻撃を仕掛ける!

だがその攻撃は「8」であれば十分対処できるタイミング!

「8」は右手の刀で攻撃を防御しようとする! だがしかし・・・!


ザンッ!!!


「「ウグァ!!!」」


防御が間に合わず攻撃を食らう「8」!


「痛覚まで共有しちまってるせいで、向こうが受けたダメージでこっちの動きも鈍るってわけだ!」

「「ガァァァァァッ!!! クソッ!!! フザケルナァ!!!」」


感覚の全共有を逆手に取り攻撃を仕掛ける「13」とカズヤ! しかし・・・


((奴らの言う通り、これは「二身同体」を最大深度まで高めた時のデメリット! けど、それによって生まれる隙はほんの一瞬! 何の合図もなしで、そのほんの一瞬を狙って互いが互いに隙を作る様に行動し、そのタイミングに合わせて攻撃しているとでも言うのか!? そんな事、僕達の様に感覚を共有でもしてないと不可能だ!))


だがその「7」と「8」の疑問に対し、カズヤはニヤリと笑みを浮かべて言う


「ハッ! まさかこっちも感覚を共有しているのか? ってツラだな? 答えはノーだ」

「「ナッ!? 何ダト!?」」


動揺し焦りを見せる「7」と「8」に対し、「13」は静かに告げる


「この程度の連携、俺達なら造作もない。こと戦闘に於いて、カズヤの考えている事は俺が一番理解している」


同じ施設で育ち、同じ術を叩き込まれ

何千回、何万回と模擬戦を繰り返した


「そしてカズミの考えている事もな! 感覚を共有するまでもねーんだよ!」


そして互いに高め合い、殺し合った

二人の銃術は正に一心同体!


「「ソンナワケガナイ!!! 僕達ハ完全ニ心ガ通ジ合ッテイル!!! 僕達ノ絆ハ絶対!!! 僕達ノ連携ハ完璧ナンダ!!!」」


その言葉に、「13」が言う


「確かに完璧だ。だが・・・完璧な「だけ」だ」

「「ッ!?」」

「ああ。完璧な連携ってのは、決してこちらの想像を超えてくる事はねえ! そして・・・もう勝敗は決まってんだよ!!!」


その時、激しい頭痛が「7」と「8」を襲う!


「「グッ!!! アアアアアッッッッッ!!! ソンナ! マダ限界ハ・・・!!!」」

「違うな・・・カズヤの言った通り、この形になった時点でお前達の敗北は決定していた」


そして「13」とカズヤは「二身同体」の最大の弱点を告げた


「感覚の全共有。それはつまり二人分の感覚を一人の脳で処理すると言う事だ。2対1、もしくは2対2であれば戦局は一つのまま、さほど負担も変わらないが。1対1と1対1に分断されれば話は別だ」

「共闘しているうちはいいが、分断された場合二つに分かれたそれぞれの戦局を同時に脳で処理しなくちゃならなくなる。負担は倍増、限界に達するのも速くなるってわけだ」

「「ガアアアアアッッッッッ!!!!!」」


更に激しく苦しみだす「7」と「8」!!!

もはや意識は混濁し、完全に限界を迎えようとしていた!!! しかし!!!


「「負ケル・・・モノカアァァァァァッッッッッ!!!!! 僕達ガ生キル世界ノ為ニ!!!!! 死ノ恐怖ニ怯エズ二過ゴセル!!! ソンナ当タリ前ノ日常ヲ手ニ入レル為ニ!!!!! 僕達ハ負ケル訳ニハイカナインダァァァァァッッッッッ!!!!!」」


最後の力を振り絞り攻撃を仕掛ける双子の兄妹!


ギィンッッッッッ!!!!!


「何ッ!?」

「ッ!!!」


その渾身の一撃を両手の銃剣で防ぐ「13」とカズヤ!

だが! その威力に後方へと大きく吹っ飛ばされる! そして!!!


((ッ!!! 今だ!!!))


それは「7」と「8」にとって起死回生のチャンス!

後方へと吹き飛んだ「13」とカズヤの軌道が重なる瞬間!!!


((奴らがお互いに背をぶつけ合った瞬間、一瞬だけ隙が生まれるはず!!! その一瞬で仕留める!!!))


そして同時に前方へ突撃する「7」と「8」!!!

その狙い通り、後方へ吹っ飛んだ「13」とカズヤがぶつかり隙が生まれる・・・その瞬間!!!


スッ・・・


「「エッ・・・?」」


「13」とカズヤが背中からぶつかる直前、二人は何の合図もなしにくるりと回転

突撃してくる「7」に対しカズヤが、「8」に対し「13」が迎え撃つ体勢にスイッチした!


「背中は任せるって言われたからな! 行くぜカズミ!!!」

「ああ・・・トドメを刺す!!!!!」


そして二人は全く同時に「7」と「8」に対して攻撃を仕掛ける!!!


「「おおおおおおっっっっっ!!!!!」」


同時に叩き込まれる打撃! 全く同じ軌道を描く斬撃! そしてゼロ距離から放たれる必殺の銃撃!!!

至近距離から放たれる超高速の連続技!!!


「アサルトパターン「99-2(ダブルナイン・ツー)」・・・!!!」

双銃乱舞そうじゅうらんぶッ!!!!!」


ダンッ!!!


2発の銃弾の銃声が重なる

全く同じタイミングで放たれた2発の銃弾

それらは「7」と「8」の心臓を全く同時に撃ち抜いていた


「「馬鹿ナ・・・」」


そして同時に、「7」と「8」の身体が崩れ落ちた


双子が倒れた事を確認しながら、「13」は軽く息を吐き・・・


「能力を発動させる暇もなかったはず・・・これで・・・」


そう呟く。だが・・・!


「うっ・・・ぐっ・・・」

「あ・・・「7」・・・「7」・・・」


なんと、双子の兄妹はまだ生きていた!


「チッ!!! トドメを!!!」


すかさず双子に銃を向けるカズヤ!

だがその時、それを「13」が片手で制する!


「カズミ?」

「もういい・・・決着はついた」


二人の負った傷は致命傷、あと数秒もしない内に息絶えるだろう。だが・・・


「お兄・・・ちゃん・・・」

「待ってろ・・・今、行く・・・。側に・・・行くから・・・」


その最後の瞬間、「7」と「8」はずるりずるりと地面を這いながらお互いの元へ向かって行く






僕達が恐れていたのは、病による死なんかじゃない


僕達が本当に恐れていたのは、二人で一緒に居られなくなる事だけだった


僕達が求めたのは・・・






そして互いに手を伸ばし、手を握り合いながら・・・


「これで・・・最後まで一緒だ・・・」

「うん・・・一緒に居てくれてありがとう・・・お兄ちゃん・・・」


満足そうに微笑みながら、息を引き取った











「7」と「8」が動かなくなった事を確認すると、「13」はカズヤに向かって言った


「カズヤ・・・お前のお陰でなんとか勝てた・・・。助かったよ」

「・・・」


だが、そんな「13」の言葉にカズヤは背を向けたまま答えない


「カズヤ・・・?」


不思議そうに「13」がそう呟いた瞬間、ぽたりと血が一滴地面に落ちた

そして次の瞬間、カズヤの身体が地面へと崩れ落ちた


「なっ!? カズヤ!!!」


崩れ落ちたカズヤを抱き起す「13」

そしてその名を何度も呼びかける。その時・・・


「カズヤ!!! カズヤ!!!!!」

「・・・うるせぇ。聞こえてる・・・」


そう不機嫌そうに呟くカズヤ。しかし・・・


「ハッ・・・まあ、無理しすぎたな・・・。どうやら俺もここまで・・・。でもまあ、施設の皆に比べりゃ十分長生きした方か・・・」


既にその身体は限界を迎えていた


「7」と「8」との闘いの最中、カズヤを動かしていたのは最後の気力のみだったのだ

そして今それすらも切れ、カズヤはゆっくりと息を引き取ろうとしていた


「でもこれで・・・もう俺に後悔はない・・・」


その時、カズヤはフッと笑みを浮かべ、静かに「13」に向かって言った


「5年前、俺はミナを助けようとして失敗した。その時重傷を負っていた俺は、そのまま命を落とすはずだったんだ。だが・・・ミナのお陰で、俺は生き延びた・・・」

「ミナの・・・?」

「ああ・・・そして生き残った俺は、その意味をお前に求めた」


お前が俺を恨むのなら、その手で俺を殺してくれ

お前が自分自身を恨むのなら、この手でお前を殺してやる

それが・・・俺の贖罪だ


「だが・・・お前はどちらの道も選ばなかった・・・。あの女の為に生きる事を選んだ・・・」

「・・・」


カズヤの言葉に、「13」は何も言えず口ごもる

だが、そんな「13」に向かってカズヤは笑みを浮かべて言う


「ハッ・・・そんな辛気臭い顔すんなよ・・・、お前の選んだ道は間違いなんかじゃない・・・。俺にも分かったんだよ・・・ミナの意思が・・・。ミナは断罪も贖罪も望んでいなかった・・・。ミナはただ、俺達に生きて欲しいと願っただけだったんだ・・・」


そしてカズヤは右手を「13」に向かって差し出す


「手を取れ・・・カズミ・・・」

「ああ・・・」


「13」がカズヤの手を取った瞬間、何かが「13」の中に流れ込む!


「ッ!? 今のは・・・!?」

残滓ざんしだ・・・俺の中にあったミナの残滓・・・。この先、お前に必要になるはず・・・」


そしてカズヤは全ての仕事を終えた様にふうっと大きく息を吐き、目を閉じる


「ああ・・・もうこれで心残りはない・・・。この場所で死んでいった皆の元へ逝ける・・・」


ゆっくりと、カズヤの心音が弱くなっていく


「おっと・・・そうだその前に、最後に聞きたい事があったんだ・・・」


そう言ってカズヤは目を開けると、「13」に向かって問いかけた


「なあ。お前にとって俺達は・・・俺とミナはどんな存在だったんだ・・・?」


そう問いかけるカズヤに、「13」はハッキリと告げる


「家族だ。お前もミナも・・・俺の大事な家族だ。だから・・・これからもずっと、俺が死ぬその時まで、お前達の事は忘れたりしない」


その答えにカズヤはニッと笑みを浮かべ・・・


「ならいいさ・・・。じゃあなカズミ・・・またな・・・」


笑みを浮かべたまま、最後の息を吐き出し


「ああ・・・俺もすぐそっちに行く。またな・・・カズヤ・・・」


そして二度と、動く事はなかった











「・・・んっ・・・んんっ・・・」


全身を覆う倦怠感の中、冬香は目を覚ます

そしてすぐにハッとした様に辺りを見回し始めた


「そうだ! 戦闘は・・・!?」


その時、すぐ側に座っていた「13」と視線が合う


「目が覚めたか」

「「13」!? 戦闘はどうなった!? 「7」と「8」は!?」

「奴らなら倒した」


「13」の視線の先に目を向けると、そこには手を取り合ったまま倒れている「7」と「8」の姿があった。だが・・・


「ならカズヤは!? カズヤはどうした!?」


そう問いかける冬香に、「13」は静かに答えた


「カズヤは死んだ。俺と共に「7」と「8」と戦って死んだ」

「・・・」


そう答える「13」に、冬香は唖然とした表情でその言葉を聞いていた。だが突然・・・!


「ッ!!!」


「13」に抱きつき顔をその胸に埋める、そして静かに嗚咽を漏らし始めた

そんな冬香に、「13」は不思議そうに問いかける


「・・・どうして冬香が泣く?」


その問いに対し、冬香は・・・


「お前が・・・! お前が泣かないから泣いている・・・!!!」


その言葉に「13」は思わず左手を自分の顔に当て、その乾いた頬をなぞった


「・・・そうか。いつの間にか俺は、たった一人残った家族を失っても涙すら流せなくなっていたのか・・・」


そしてゆっくりと、自分の胸で嗚咽を漏らす冬香を抱きしめると


「冬香・・・。俺の心になってくれてありがとう・・・」


そう言って、冬香が泣き止むまでその身体を抱きしめ続けたのだった・・・

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― 新着の感想 ―
[良い点] ふたつの連携による決着。 「7」「8」、そしてカズヤの最期。 ただ離れたくなかった双子、ただ生きてほしかったというミナの意志。 ここまでで一番泣けたかもしれません……!
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