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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第九章:資格者達は玉座を目指し、その命は最後の輝きを見せる
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交わり接続する


「力を貸してくれミナ!!! 「根源接続リンクオリジン・運命再構築」!!!」


ドゴォッ!!!!!


「がはっ・・・!!!」


新たな能力に目覚めたカズヤの蹴りが「13」の腹部に突き刺さる!

直撃を受けた「13」は後方へと大きく吹っ飛ばされた!


キィンッ・・・!


しかしその時! 「13」の右目が僅かに輝きを放つ!

そして「13」は吹き飛ばされた勢いのまま身体を上下反転させると、地面に手を付きバク転!

そのまま3度回転を行い、すぐさま体勢を立て直した!


蹴りの直撃を受けながらも、ほぼ無傷と言った状態の「13」の姿にカズヤはニヤリと笑みを浮かべる


「そうだったな・・・お前にもその能力があるんだよな」


その時、毒に侵されながら二人の戦いを見守っていた冬香が呟く


「「根源接続リンクオリジン」・・・」


そして、以前に「13」が言っていた言葉を思い出していた






「「根源接続」はその名の通り、全ての能力の根源である「ゼロ・オリジン」へと接続する能力だ。そしてオリジンの持つ万能の力の一部を行使する事が出来る能力でもある」


その言葉を聞いた冬香は不思議そうに問いかける


「オリジンの力を行使・・・? それはもはや、「1」が言っていた万能の力その物を扱えるという意味なんじゃ・・・?」

「そうでもない。オリジンが広大な図書館の様な物だとすれば、能力は本だ。しかしその本の大半は俺には理解出来ない言語で書かれている為、読む事が出来ない。根源接続を果たしたとは言え、俺が扱える能力はオリジンの0.1%程度と言った所だ」


「根源接続」単体で出来る事はたかが知れていると

そう告げる「13」。だが・・・


「じゃああの・・・「4」を退けた時のあの能力は何なんだ? あれもオリジンの能力の一つなのか?」

「あれは・・・」


冬香の質問に口を濁す「13」

そしてほんの少し考え込んだ後、「13」は冬香に答えた


「正直言えば分からない・・・。「運命再構築」。時間や規模等に制限はあるが、起きた事象をもう一度「創り直す」能力。「4」の「絶対回答」と同格のとてつもない能力だ」

「本来起きたはずの事象を消し去り、過去を改ざんする能力という事か・・・?」

「ああ。だが・・・こんな規模の能力、「根源接続」を使っても俺に扱える能力ではない・・・はずだ」

「つまり・・・「読めない本」と言う事か?」


本来使う事の出来ない能力

「13」自身も、「運命再構築」に関しては完全に制御出来ている訳ではないと語った。そして・・・


「だが昔何処かで・・・俺はこの能力に触れた事がある気がする・・・。それが、俺がこの能力を扱える理由なのかもしれない。そう・・・もしかしたらこの能力は・・・」






ダンッ! ダダンッ!!! ギィンッ!!!


「13」とカズヤ、互いの銃剣がぶつかり合い火花を散らす!


凄まじい速さの格闘戦!

目まぐるしい速さで放たれる至近距離からの打撃、斬撃、そして銃撃!

その間も「13」の右目とカズヤの左目は、能力の発動を示す光を放ち続けていた!


「同じ・・・能力・・・」


互いに「根源接続・運命再構築」を発動させた「13」とカズヤ

だが、二人が偶然同じ能力に目覚めたとは考えにくい

そこにはなんらかの原因、理由・・・。もしくは、何者かの意思があるはずだ


「やはりあれは・・・「13」達が言っていた少女・・・ミナの能力・・・なのか・・・?」


同じ術を使い、同じ能力で戦う二人

もしも・・・これがミナの意思だと言うのなら・・・


「あの二人を殺し合わせる事が・・・ミナの意思だとでも言うのか・・・?」











「ッ!!!」


格闘戦の最中、素早く右手の銃剣を突き出す「13」!

狙いはカズヤの首! しかし・・・!


キィンッ・・・!


僅かな違和感と同時に目の前の光景が歪む!

そして次の瞬間には、ほんの僅かに攻撃の軌道を反らされた自分の右腕があった!


「クッ!」


そう、ほんの僅か

ほんの数センチ右に攻撃の軌道を反らせただけ

だがカズヤが攻撃を回避するにはそれで充分!


「ハァッ!!!」


「13」の右腕による刺突を回避したカズヤはそのまま「13」の左側へと回り込む! そして!


ガッ!!!


「13」の左脇腹に向かってカズヤが回し蹴りを放った!

その一撃が当たる寸前に左腕を差し込みガードした「13」だったが、その威力に耐える事が出来ずそのまま身体ごと吹っ飛ばされる!


「もらった!!!」


ダダンッ!!!


すかさず! カズヤは吹っ飛んだ「13」に向かって右腕の銃で二連射! 追撃を放つ!


「フッ・・・!」


しかし! 吹っ飛ばされた「13」はくるりと身体を一回転させ地面に着地すると、即座に前へ突撃! その時!


キィンッ・・・!


僅かに輝きを増す「13」の右目!

そして次の瞬間には、「13」はカズヤの放った弾丸の間をすり抜けた後だった!


「チッ!!! 弾丸の軌道をズラされたか!!!」


そう叫ぶと! 再び接近してくる「13」に向かってカズヤが銃剣を振り下ろす!


ギィンッ!!!


そして再び至近距離での攻防が始まった!


互いに幾度となく必殺の一撃を繰り出す「13」とカズヤ!

しかしそのどれもが、相手の命には一歩届かない!


その攻防戦の最中、「13」は冷静に状況を分析していた・・・!


(お互いに「運命再構築」が使える以上、決定的な一撃を与える事は難しいか・・・)


過去を改ざんする能力、それは「4」の「絶対回答」と同じく無敵の能力と言っていいだろう

しかし互いに「無敵」であるのならば、勝敗を分ける要因は別の場所にある・・・


(確かに「運命再構築」は強力な能力だが、大きく過去を改ざんすればする程、力の消耗は激しくなる・・・。使えるのは精々「放たれた攻撃の軌道を僅かにズラす」程度だ。それ以上の事象を改ざんすれば、すぐに力が底を尽きる・・・)


現に「4」を退けた時、「13」は一度の能力使用で力を使い果たしていた

そしておそらく、カズヤもそれを理解しているからこそ能力の使用を最小限に抑えている


(互いに決定打がない以上、このままでは持久戦になる・・・だが・・・)


その時、「13」の視界の端に毒で倒れた冬香の姿が映る


(時間はない・・・! なんとかしてあの防御を抜け、カズヤを倒さなければ・・・!)


そう決断すると同時に、一気に突撃を仕掛ける「13」!

それに対し、カズヤも正面から受けて立つ!


「時間はかけられない! 終わらせる!!!」

「上等だ!!! 来い! カズミ!!!」


そして、互いの攻撃が激しくぶつかり合った瞬間・・・!!!


ギィンッ!!!






どうして・・・!? どうしてだ・・・!?






「13」の脳裏に不思議な光景が流れてきた


(ッ!!! 何だこれは・・・!)


戦いの最中、「13」の脳に直接響いた憎悪と悲しみに満ちた叫び声。それは・・・


「ミナを守るって・・・!!! それが俺達の誓いだったはずだろ・・・!? なのに何で・・・!!! 何で・・・!!! よりによってお前がミナを殺すんだ・・・!!!???」


(これは・・・!?)


カズヤの目の前で放たれた一発の銃弾

「13」がミナを殺したあの日の記憶、憎悪に満ちた崩壊の日の記憶だった。だが・・・






ああ・・・そうだ、どうして・・・

どうして・・・「俺」は何も出来なかったんだ・・・






(何・・・? 今の声は・・・?)


その時、脳裏に流れていた映像が突然切り替わる

そこに映っていたのは・・・


「なあ? 何か言えよカズミ、言い訳ぐらいなら聞いてやるぜ? どうしてミナを殺した? 俺達のたった一人の妹を、守ると誓った相手をどうして殺した? なあ、答えろよ」


それは池袋で再会した日、カズヤが言った言葉だ。そして・・・






そうだ、何か言ってくれカズミ

お前が何の理由もなくミナを殺すはずがない






先程と同じ様に脳裏に声が響いた


(これはやはり・・・カズヤの記憶・・・? 俺とカズヤの精神が「接続リンク」しているのか・・・?)


目の前の光景と声に戸惑う「13」

そして続けて、「13」の脳裏にカズヤの独白が響く






一言でもいい。お前が事情を話してくれたなら、俺もお前に真実を話すから・・・

だから答えてくれ・・・カズミ・・・






だがその言葉に、過去の「13」が返した言葉は・・・


「・・・すまない」


瞬間、目の前の光景が真っ黒に染まった











暗闇に包まれた意識の中、「13」は呟く


「そうだ・・・。あの時、俺は何も言い訳出来なかった。ミナは俺が殺した・・・だから・・・」


そう、どんな事情があろうとも

あの時、自分がミナを殺した事実は変わらない。だが・・・


「それでも・・・俺は何か言って欲しかったんだ」


その時、闇に包まれた意識の中にカズヤの姿が現れる


「5年前・・・俺は失敗した。ミナとお前を助けられなかったばかりか、お前に罪を背負わせてしまった・・・」

「・・・カズヤ」

「本当に罪を背負うべきだったのは俺の方だったんだ・・・だから・・・」


そのカズヤの言葉に「13」は首を横に振る


「違う。これは俺の罪だ・・・。俺にも見えたよ、お前があの日何をしていたのか。確かにお前は失敗したのかもしれない、けれどお前はミナを救おうと最善を尽くした。何も悪くなんてない」


そう言ってカズヤの言葉を否定する「13」

そんな「13」に対し、カズヤは笑みを浮かべると・・・


「ああそうだな・・・。お前ならそう言うと分かっていたはずなのにな・・・。きっとあの女には分かっていたんだ・・・」


それは二人を止める為に冬香が言った言葉


(駄目だ! お前達は戦ってはいけない! お前達に戦う理由なんてないんだ! 何故なら、お前達は・・・!)


その時、二人だけの空間に割り込む様に一人の女性の声が響き渡った

それは冬香の声・・・あの時の続きを告げる冬香の声だった


(ああ、そうだ。何故なら、お前達は・・・お互いに罪を背負わせたくなくて、すれ違ってしまっただけだったんだから・・・)


冬香の言葉の後、辺りがシンと静まり返る

しばらくして、カズヤは静かに呟いた


「あの時・・・お前が何か一言でも言ってくれたなら、俺はお前を許すつもりでいた」

「・・・」

「ああ、でもきっと・・・。お前もそれを分かっていたんだ。だからこそ・・・お前は俺に何も言わなかった・・・。家族だったミナを殺した罪を、同じく家族だった俺が許す事になってしまうから」


許す事により、共に罪を背負おうとしたカズヤ

そしてそれを拒絶する事により、罪を自分一人で背負おうとした「13」

互いを想うばかりに、二人はどうしようもない程にすれ違い、殺し合う事となった


「お前が俺を殺そうとするのなら、俺はそれを受け入れる。そして逆にお前が殺される事を・・・「復讐」される事を望むのなら、俺もそれを受け入れる。ミナを殺したお前の様に、俺の手で家族であるお前を殺す。それが俺に与えられる「罰」なんだろうってな。だが、お前はどちらも否定した。殺すでもなく、殺されるでもなく。何の決着もつけないまま、俺達三人の物語を捨て去ろうとした。俺にはそれがどうしても許せなかった・・・」

「違う! それは・・・!」


大きく声を上げる「13」に対し、カズヤはフッと笑みを浮かべる


「そうだな・・・違うよな。お前がミナの事を忘れるなんてあり得ない。そんな事にも気づかなかったなんて・・・」

「カズヤ・・・俺は・・・」


そう言いながら手を伸ばす「13」。そして・・・次の瞬間・・・!











バチィッ!!!


「くっ!!!」


二人の間に閃光が走ったかと思うと、現実へと意識を戻した「13」とカズヤは互いに間合いを離す!


「カズヤ・・・! 今のが見えたんだろう!? ミナが力を貸してくれたのは俺達を殺し合わせる為じゃない! 俺達の心を繋げる為だったんだ! 俺達は・・・!」


間合いを離した「13」は、カズヤに対し何かを伝えようとし叫ぼうとする。しかし・・・


「黙れよ、カズミ・・・」


その言葉を断ち切ると

カズヤは両腕を再度交差させ十字銃術の構えに入る!


「そうだ、俺達は間違えた。この戦いには何の意味もない・・・。それでも・・・それでも決着は付ける!!!」

「・・・ッ!!! まだ戦いを望むのか!? カズヤ!!!」


カズヤから放たれるこれまでにない程の気迫!

それはもう憎悪でも悲しみでもない


「ああそうだ!!! このままじゃ終われないんだよ!!! 何の為にミナは死んだ!? 何の為に俺とお前だけが生き残った!? こうなるのが俺達の運命だったとでも言うのか!? いいや違う!!! どんなに間違った道のりだったとしても、ここまでたどり着いたのは間違いなく俺達の意思だ! それらは決して無駄なんかじゃない! 俺達の物語の決着が!!! 俺達の意思が行き着く先の答えが!!! この先にあるはずだ!!!」


ただただ決着を、答えを望む純粋な意思だ・・・!


「答えを見せてくれ・・・カズミ・・・! 生き残るのは俺かお前か・・・! これで、今度こそ最後だ・・・!!!」


そう告げるカズヤに対し、「13」も再度十字銃術の構えを取る!


「分かった・・・。決着を付けよう・・・カズヤ・・・」

「・・・ああ」


そして同時に! 前に向かって走り出した!!!











決着が付くまでの攻防、時間にして僅か10秒

初手で互いに放った弾丸は5発づつ

そのうち致命傷となるはずだった3発の弾丸を能力で回避し、残り2発は身体で受ける!


「くっ!!!」

「あああああっっっっっ!!!!!」


だが、痛みを意に介している暇はない! 急所は外れている!

格闘の距離まで近づいた二人は互いに渾身の打撃を放つ!


ガッ! ギィンッ!!! ガンッ!!!


右上段回し蹴り、逆回転してからの右のバックハンドブロー、連続での左上段回し蹴り!

最後の最後で二人が選んだのは同じアサルトパターン! 故に、攻撃のタイミングも速さも同じ!


3度の攻撃が交差した後、二人は右腕を大きく後ろに引く!


「これでぇぇぇぇっ!!!!!」


そして放たれる4度目、渾身の右! 最後の刺突攻撃! だが・・・!


「ッ!!! 何っ!?」


銃剣を構え刺突を狙ってきたカズヤに対し、「13」は無手!

右腕の銃を捨て、手のひらをそのまま銃剣に向かって突き出してきた! そして!!!


グシャッ!!!


「13」の右手のひらをカズヤの銃剣が貫通する!

しかし「13」にダメージはない! 何故なら・・・!


「しまっ・・・! 義手で受け止め・・・!!!」


そう、「13」の右腕は鋼鉄製の義手!

その義手で銃剣を受け止め貫通させる事により、「13」はカズヤの動きを封じたのだ!

そして! すぐさま左手で攻撃態勢に入る「13」!


(マズイ! 次が来る!!!)


カズヤも右腕の銃を手放し、左手での攻撃体勢に入る!


「オオオオオッッッッッ!!!!!」

「ハァァァァァッッッッッ!!!!!」


だが、迷いなく左手を振り抜こうとする「13」に対し

義手の手のひらを貫通した右腕の銃を手放すべきか否かで生じた迷いの分、カズヤは一瞬だけ遅れを取っていた。そして・・・


ギィンッッッッッ!!!!!


互いの左の銃剣がぶつかり合い、甲高い金属音を立てると・・・!

カズヤの持っていたハンドガンが宙へと舞った!


「くっ!!! カズミ!!!!!」


僅かな遅れ

それが決定的な差となった!


「これで決着だ・・・!」


そして両腕の武器を失ったカズヤに対し、「13」がトドメの一撃を放つ!!!


(・・・カズヤ!!!)


もはや回避も迎撃も不可能、これで全てが終わるかに思われた・・・だが!!!


「ッ!!!!!」


その時!!! カズヤの目がカッと見開かれると、左目が激しく輝いた!!!


「なっ!? 「根源接続」・・・! 「運命再構築」か!?」


それはカズヤに残っていた最後の力!

そしてカズヤは無手となった右腕を「13」に向かって真っすぐ突き出す!


(しまっ!!! 回避が・・・!!!)


最後の最後で気を抜き、致命的な隙を晒してしまっていた「13」!

咄嗟に能力で回避しようとするが・・・!


(能力が・・・間に合わない!!!)


能力を発動させるよりも速く! カズヤの右腕が「13」の肩を捕え掴んだ! そして・・・!!!


「どけぇっ!!!!! カズミィィィィィッ!!!!!」

「何っ!?」


カズヤは強引に「13」の身体を横に押しのけた!!! そして次の瞬間!!!!!


ドスッ!!!!!


「がっ・・・!!!」

「なっ!? カズヤァァァァァッ!!!!!」


「13」の後方から迫って来ていた刃が、カズヤの身体を貫いた・・・!!!

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