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トーキョー・アサシン 隔離都市東京特別治安維持課  作者: 三上 渉
第九章:資格者達は玉座を目指し、その命は最後の輝きを見せる
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ゼロへと還る


かつて「13」とカズヤが身を置いた実験施設

廃墟と化したその場所に現れたのは

冬香の目の前で重傷を負い、ビルの上から落下し姿を消した「13」だった!


「「13」・・・!」


地獄より生還を果たした「13」

しかし、その全身には先日の戦闘のダメージの跡が無数に刻まれていた


ボロボロとなった防弾コートと、「7」と「8」によって斬り裂かれた戦闘用スーツ

その下には応急処置の後と思われる汚れた包帯が見えている

その顔を覆っていた仮面は破壊され真っ二つになり、顔の左半分を覆うのみだ


死んでいてもおかしくはない

いや、死んでいなくてはおかしい程の重傷を負いながら

「13」は再び、冬香の前に姿を現したのだ。その時・・・


「ああ・・・待ってたぜカズミ。この女と一緒に居れば、お前は必ず来ると思っていた」


カズヤは笑みを浮かべながらそう言った

その時、冬香がハッとした様に声を上げる


「ッ! そうだ! 「13」どうしてここに・・・!?」


その冬香の声に対し、「13」はどこかぼんやりとした表情のまま呟く


「・・・どうして、だったんだろうな? 分からないが・・・何かを感じた・・・。何故だか分からないが、冬香がここに居ると感じたんだ・・・」


その時、「13」の瞳に以前とは違う光が宿っている事に冬香は気付く


(あれは・・・暴走、とは違う。だが何かが・・・「13」の中で何かが目覚めようとしている・・・?)


変化を遂げようとしている「13」の様子に疑念の意を抱く冬香。だがその時・・・


「おいおい、俺を無視するなよ? カズミ」


二人の会話を遮る様にしてカズヤが言う

自分の前に立ちはだかるカズヤに対し、「13」は静かに告げる


「・・・カズヤ。冬香を返してもらうぞ」

「もちろんいいとも。ただし、その前に決着をつけてからだ。俺達の戦いの決着をな」


そう言いながら「13」に向かって殺気を放つカズヤ

しかし「13」はその殺気に対し戦闘体勢を取るでもなく、静かに答える


「俺にはお前と戦う理由はない」

「だろうな。だが俺にはある」


そう言うと、カズヤは「13」に対し辺りを見渡す様に促す


「・・・懐かしいだろ? 俺達3人が過ごした場所。そして・・・お前がミナを殺した場所」


そう答えるカズヤに対し、「13」はやや俯きながら言った


「カズヤ、お前が俺に復讐を願うのは当然だ。ミナを殺した俺に復讐したいという想い、その想いは何一つ間違ってなんかいない。だが、今はまだ死ねない・・・。冬香の復讐を遂げるまで、俺は死ぬわけにはいかない。だからカズヤ・・・もう少しだけ待ってくれ。この戦いが終わった後・・・その時こそ、俺は・・・」


戦いが終わったその時

その時こそ、「13」はカズヤの復讐を受け入れるつもりでいたのだ。しかし・・・


「クッ・・・、復讐・・・復讐か・・・。ああいいぜ・・・それを「お前」が望むのならな」

「カズヤ・・・?」


そう呟くカズヤの様子に違和感を覚える「13」

以前カズヤと戦った時に感じた激しい憎悪

そう言った物を、今目の前に立っているカズヤからは感じられなかったからだ


「一体どういう事だ? 俺が望むとはどういう事なんだ? カズヤ」

「答えるつもりはねぇ。全ては決着の後・・・俺かお前のどちらかが倒れた後だ」


だがその時・・・!


「駄目だ! 「13」!!!」


突然、二人の間に冬香が立ちふさがる!

そして二人に向かって叫んだ!


「駄目だ! お前達は戦ってはいけない! お前達に戦う理由なんてないんだ!」


二人の戦いを阻止すべく叫び声を上げる冬香


「どけ・・・邪魔だ」


立ちはだかる冬香に対しカズヤが告げる

しかし、冬香は両手を広げ立ちはだかったまま答えた


「お前だって分かっているんだろう!? この戦いの先には何もない事が!」

「かもな、だがそれでも・・・。いや、だからこそ決着を付ける必要がある。あんな間違いだらけの結末を俺は認めない。俺は俺達の物語を正しい形で終わらせたいだけだ」


その時、「13」がカズヤの真意を図る様に言う


「どういう事だ? カズヤ、お前はミナの復讐の為に俺を狙っていたんじゃないのか?」

「・・・」


カズヤはその言葉に答えない

しかし、代わりに冬香が「13」に向かって言った


「そうだ! お前達はただすれ違ってしまっただけなんだ!」

「冬香? それは一体・・・?」

「何故なら、お前達は・・・!」


そして冬香が続けようとしたその時・・・!


「ッ!!! 冬香!!!」


カズヤがスッと銃を構えると、その銃口を冬香に向ける!

すぐさま冬香に向かって駆け出そうとする「13」だったが! それよりも速く・・・!


バスッ・・・!


「あっ・・・」


カズヤが引き金を弾くと、冬香はその場に倒れた











「冬香!!!」


倒れた冬香に向かって駆け寄る「13」。しかし・・・


「・・・ッ!? これは・・・!?」


冬香の身体、銃弾が撃ち込まれた場所に傷はない

冬香に向かって撃ち込まれたのは鉛の弾丸ではなく、針の付いた注射器の様な形状の物だったのだ


「麻酔弾・・・? いや・・・!?」


だがその時・・・!


「うっ・・・! ううっ・・・!」

「ッ!? 冬香!!!」


冬香の顔色がみるみる青ざめていく!

動揺する「13」に対し、カズヤが静かに告げる


「致死性の毒を撃ち込んだ。あと15分以内に解毒剤を打たなければ命はない」

「なっ!?」


そしてカズヤは懐から金属製のケースを取り出すと、それを見せながら言った


「そして、これが解毒剤だ。俺を殺して奪い取れ、カズミ」

「カズヤ・・・!」


そう告げるカズヤに対し、「13」は立ち上がろうとする

その全身から闘志、そして殺意が溢れ出す様にして放たれる! だがその時・・・!


「待て・・・! 「13」・・・!」


倒れていた冬香が立ち上がろうとする「13」の手をガシッと掴み止める


「冬香!」

「駄目だ・・・。戦うな・・・「13」。お前達は戦っては駄目なんだ・・・」


顔面蒼白になりながらもそう告げる冬香


「冬香・・・」


「13」はそんな彼女を抱きかかえ、近くの建物の入り口まで運びそっと横たえる

そして、その弱弱しい手を静かに振りほどくと


「・・・すぐに終わらせる」

「「13」・・・」


その場から離れ、改めてカズヤに向かい合う


「さて・・・じゃあやるか」


そう呟くと、カズヤはゆっくりと懐から二挺のハンドガンを抜く


「ああ・・・」


それに呼応する様に、「13」もホルスターからハンドガンを抜いた。そして・・・


「この場所で全てが始まり、全てが終わった。だが・・・そんな最後、俺は認めない。終わってしまったというのなら、もう一度ここから全てを始める。ゼロへと還り、ゼロから再生する。もう一度・・・俺達3人の物語を・・・!」


二人はかつて幾度となく競い合ったその場所で

かつての様に十字架を掲げ、祈る






我々は死をもたらす弾丸である


我々は善悪の区別なく死を与える罪深き者達である


されど我らの罪は、この十字への祈りの元


その全てが赦されるであろう


故に・・・


祈れ、殺せ、祈れ、殺せ、祈れ、殺せ、祈れ、殺せ、祈れ、殺せ、祈れ、殺せ!!!






「目の前の全てを殺しつくす!!!!!」

「弾丸の嵐となれ!!!!!」


そして同時に前へ向かって足を踏み出し!!!


「カズミィィィィィッ!!!!!」

「カズヤァァァァァッ!!!!!」


200人の孤児達

その生き残りである最後の二人の戦いが始まった!!!











両手の銃を目の前で交差!

十字銃術の基本的な構えの状態で突撃する二人! しかし・・・!


「ッ!?」


先に相手に向かって銃口を向けたのはカズヤ!

突撃してくる「13」に対し、先手を打つ!


ダンッ!!!


放たれる弾丸! そしてそれを盾にしながら突撃を行うカズヤ!

これに対し「13」は、同じく突撃したまま弾丸を回避する!だが・・・!


(いや、カズヤにはこの次がある! 能力「方位転換ベクトル」! 発射した弾丸の軌道を変え・・・!)


回避した弾丸の方向転換に備える「13」! しかし・・・!


(弾丸が・・・曲がらない!?)


「13」の読みに反し、カズヤは「方位転換」を発動させず・・・!


「入ったぜ! 十字銃術の間合いだ!!!」

「クッ!!!」


能力の発動を警戒し「13」の意識がそれた隙に、カズヤは「13」の懐まで飛び込むと攻撃を仕掛けた!


ギィンッ!!!


放たれる銃剣による斬撃を、同じく銃剣で捌く!

だがすかさず! カズヤは次の攻撃を繰り出していた!


「スピードを上げていくぜ!!!」


「13」に息を付く間も与えない、カズヤの十字銃術!

打撃、斬撃、銃撃のコンビネーション!


かつてない程の速さの連続攻撃をなんとか捌ききる「13」! しかし・・・!


(何だ!? どういう事だ!? 何故能力を使わない!?)


カズヤによって放たれた銃弾

それに対し、カズヤは一度も能力「方位転換」を発動させていない

不可解なカズヤの行動に「13」は動揺する。だがその時・・・!


「ハッ! 必要ないんだよ!」

「何っ!?」


「13」の動揺を見抜いたカズヤは、それに答える様に言った


「お前との決着に余計な物はもう必要ねえ! この二艇の銃と銃術以外は必要ない!!!」


そう叫びながら怒涛の連続攻撃を仕掛けるカズヤ!

能力を使わないのなら、当然その技の殺傷力も落ちて当然のはずだ。しかし・・・!


「つ・・・! 強い!!! 以前戦った時よりも・・・!!!」


カズヤの攻撃は精度も速さも、明らかに以前より増している!


「不可解か!? 何故能力を使ってないのに前より強いのかって!?」


その時! カズヤが攻撃を繰り出しながら叫ぶ!


「接続者になった事により手に入れた能力、確かにあれは俺にこれまでにない力を与えてくれた! だがその力に驕り慢心した結果、俺はお前に敗北した! 能力に頼るあまり、俺の銃術は気付かない内に錆びついていたって訳だ!」


カズヤが自身の能力と組み合わせ編み出した「十字銃術・改」

しかし能力使用を前提としたその技は、オリジナルの「十字銃術」に対し近接戦での基本動作で僅かに遅れを取る


(再会した時のカズミなら「十字銃術・改」でも圧倒出来た。だが、今のカズミ相手には通用しない!)


同じ銃術使いである「13」との闘いに於いて、近接での僅かな遅れは致命的となる!

だからこそカズヤはあえて能力を捨て、基本的な銃術の精度を磨き上げてきたのだ!


「今の俺には驕りも慢心も存在しねぇ!!!」


そう叫びながら攻撃を仕掛けるカズヤ!

新たな力を手に入れたカズヤの攻撃に「13」は苦戦を強いられるかと思われた。だが・・・!


ギィンッ!!!


二人の銃剣がぶつかり合い火花を散らす!

一見互角のぶつかり合いに見える攻防! しかし・・・!


「何っ!?」


僅かにカズヤの足が後ろに下がる!

精度や速さの問題ではない、これはもっと単純な原因・・・!


「お前が純粋に銃術のみで戦うというのなら、俺は正面から叩き潰すだけだ・・・!」


ガッ!!!


そう告げると同時に「13」が放った右の回し蹴り!

カズヤはそれをガード! だが!


「うおおおおおっっっっっ!!!」


「13」はそのまま足を振り抜くと・・・!


「なっ!? 何だと!?」


ガードしたカズヤの身体を強引に吹っ飛ばした!


「くっ! このパワー!!!」


吹き飛ばされつつも体勢を立て直し、そう叫ぶカズヤ!

それに対し「13」はすかさず追撃を行う!


ギィン!!!


放たれた斬撃を銃剣で捌くカズヤ!

だがやはりその衝撃を殺しきる事が出来ず僅かに後ずさる!


(パワー負けしている!?)


そう、純粋な力で負けている

だがそれはカズヤにとって不可解な事だった


(以前カズミと再会した時、疑問に思っていた事があった。同じ接続者にしては身体能力が低すぎる、と・・・)


銃術の冴えこそ以前のままだったが、逆に言えばそれだけ

接続者が持つ人知を超えた圧倒的な力を、以前のカズミからは感じなかった。だが・・・!


ドゴォッ!!!


放たれる強烈な打撃! それは間違いなく接続者の物だ!


(どういう事だ!? 何故突然身体能力が上がる!?)


姿だけを見れば明らかに満身創痍!

だが今のカズミは以前とは比較にならない程強い!


「一体何が・・・!?」

「・・・時間がない! トドメを刺させてもらうぞ! カズヤ!」


そう告げると! 「13」が必殺の一撃を放つ!

容赦も躊躇もない

確実にカズヤの命を奪いにかかった一撃!

この一撃に対し、カズヤは打つ手なしに思われた。だが・・・!


ギィンッ!!!


「何ッ!?」


その必殺の一撃を、カズヤは強引に弾き返した!


「今の力は・・・!?」


力で勝り圧倒していたはずが、必殺の一撃を防がれ「13」が動揺を見せる! そして・・・!


「まだだ・・・こんな所で終われはしねぇ・・・! 俺は・・・俺は・・・!!!」


その時! カズヤの左目が眩い光を放った!!!


「能力!? だがこれは!?」


「方位転換」ではない! これはカズヤの新しい能力!!!


「俺にも見える!!! お前の意思が!!! 運命が!!!」

「ッ!?」

「力を貸してくれミナ!!! 「根源接続リンクオリジン・運命再構築」!!!」


そして放たれたカズヤの渾身の一撃が!!!


ドゴォッ!!!!!


「がはっ・・・!!!」


「13」の身体を撃ち貫いたのだった!!!

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